値下げか廃棄か?(議論)

(承前:3月29日HP)
 残品の処分方法を一般論として考えてみる。弁当に限らず、コンビニで値引き販売をしないのは、店舗運営と商品管理上の理由からである。


コンビニの商品は、必要最低限のモノはなんでも揃っているが、メーカーの商品がすべて置いてあるわけではない。陳列スペースが限られるから、コンビニでは代表的なブランドしか扱わない。比較購買できない消費者に、そもそも値引きをしてあげる必然性がないのである。
 値引き販売は、コンビニの店舗オペレーションを壊してしまう。コンビニの生命線は、POSデータによる確実な需要予測と迅速な仕入れである。業務の中心は、品切れ防止と的確な商品発注にある。店頭の価格を頻繁に変えると、逆に正確な売上予測ができなくなる。また、値引きをすると、シール貼りなどで追加作業が増えてしまう。そうでなくとも忙しいコンビニの仕事は、完全にパンクしてしまう。
 したがって、コンビニの経営者(店長)と従業員は、過去の売上実績を見ながら、商品の発注数を決めることに注力する。品揃えと価格は与件である。結果として、売れずに残って廃棄されてしまう弁当は、自分たち自身に対するペナルティである。値下げ処分で売り切ってしまうと、発注ミスを犯した責任が曖昧になる。
 コンビニとは対照的に、食品スーパーでは、同じ売場に複数メーカーの商品を陳列する。商品の選択幅を広げて、消費者に比較購買させる機会を提供するのがスーパーの特徴である。生鮮品の売場では、複数の産地の野菜や魚を扱っている。総菜のコーナーでは、さまざまなレシピの商材を提供する。多様な品揃えと異なる価格帯で、「市場のにぎわい」を演出するのである。
 品出しの仕方も、コンビニとは好対照である。たとえば、お刺身や総菜では、店頭の在庫を見ながら、バックルームで調理加工の速度を調整する。海苔巻きの売れ行きが悪いと、お寿司を作る作業をやめて、お刺身をカットする作業に振り向ける。スーパーの食品売場では、店頭在庫の調整作業をインストア加工方式を採用することで解決しているのである。もうひとつ大切なポイントは、スーパーでは粗利の管理責任が売場担当者にあるということである。だからこそ、担当者の判断で値下げが行えるのである。
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 切り花の販売は、どちらのケースに該当するだろうか? 廃棄処分か値下げかのひとつの分かれ目は、花束を店内で加工しているかどうかである。現状では、スーパーの花束はセルフで販売されている。予想以上に売れすぎて商品が不足しても、すぐには追加納品ができない。逆に、値下げするにせよ廃棄処分するにせよ、売れ残った商品はロスになる。この点では、スーパーの花販売は、正確な需要予測を求められるコンビニの状態に近いと言える。
 結論である。セルフの花売場で担当者に利益管理責任がないとき、残品は思い切って廃棄処分すべきである。そうしないと、商品の正確な発注が不可能になる。
 売上を伸ばしたい売場担当者は、多めに発注して早めに値下げを行うだろう。そうなると、消費者は通常の売価を信用しなくなる。値引きを期待する消費者が増えてくると、いずれ値下げが常態化する。結果として、花では利益がでないということになる。同時に、粗利が取れないとなると品質が劣化していく。
 それとは反対に、売れ残りのロスを怖れる担当者は、発注量を押さえ気味にする。品揃えとボリューム不足の売場は、はなはだ魅力のないものになる。顧客が売場からしだいに離れていき、長期的には縮小均衡に陥る。
 要点は3つである。第1に、花の販売をはじめた当初は、廃棄ロスを恐れずに大量に商品を投入すること。2番目に、売上を正確に予測するシステムを構築すること。そのために、過去のデータを積極的に活用すること。3番目には、売場担当者に最終的な利益管理責任を与えることである。
 なお、もっとも理想的なのは、花の売場を「セミセルフ」で運営することである。基本的な商品はプリパックで供給しつつ、追加的な需要には店頭品出しで対応するという方法である。この方式が適用できる食品スーパーが登場することを期待したい。