わたしは、生来がせっかちな性格である。思いついたら、その場で即時にコンタクトを取ろうとする傾向がある。タイミングなどあまり深く考えない。突然電話を入れたり、相手によっては迷惑なメールを受け取ることも頻繁にある(らしい)。
今回のお願いの相手方は、大⽥花き花の生活研究所の内藤育子さんだった。案件は、「クルクマの生産者を紹介してほしい」である。目的は、千葉県白子町出身の⻫藤正⼆さん(正和園芸)が、タイのチェンマイで育種・増殖して、オランダなど世界中に輸出していた「クルクマ(球根)の今」を知りたいと思ったからである。
なお、⻫藤さんは、小森谷慧さん、三宅勇さんと並んで「千葉の三羽烏」(球根切り花の匠たち)の⼀⼈である。園芸業界に多大な貢献をした⻫藤さんは、2017年に亡くなっている。その後を知る由もなかったが、調べてみると、白子町の正和園芸は、元社員の方が承継していることがわかった。
ところで、こんなことを思い立ったのは、9月の上旬に地元の京成高砂駅前にある花屋さん「hana-to-midori」で、素敵な白色のクルクマを見つけたからである。持ち帰ってキッチンに飾っておいたところ、3週間も立派に咲き続けてくれた。
もちろん、これまで見たクルクマの中で、姿形がもっとも可愛いと感じた品種だった。これだけ日持ちがしたのだから、品質もまちがいないだろう。とても嬉しく感じて、⻫藤さんのクルクマがその後、日本でも栽培されているにちがいないと思い、内藤さんに連絡してみたのだった。
クルクマの産地は、九州の糸島や沖永良部島、愛知や静岡である。切り花は、10年ほど前から花の専門店や量販店で普通に見かけるようになっている。「独特の花姿と色合いが美しいので、卸店や花専門店だけでなく、量販店、葬儀婚礼会場、EC販売などでも、オールカテゴリーで⼈気です」(内藤さん)。ただし、タイ産の球根がどのように流通しているのかについては知識がなかった。
結局、内藤さんが紹介してくれたのは、国内最大の産地「JAとびあ浜松」の花き営農センターだった。最終的には、花き営農センターの仲⽥係⻑さんにつないでくださった。仲⽥さんは親切な方で、わたしが送った事前の質問に対して、翌日には回答を返してくださった。
10月9日の午後、仲⽥さんとバス停で待ち合わせた。2⼈の生産者の圃場を視察して、インタビューをさせていただいた。ちなみに、とぴあ浜松の生産者は現在47名。クルクマ部会全体では、試作品種も入れると45品種を栽培している。
クルクマの総出荷額は約1.7億円、栽培面積は約1万7千坪である(2025年)。10年前に糸島を追い抜いて、とぴあ浜松がクルクマの生産額で国内最大の産地になった。主たる出荷先は、大⽥花き、東日本板橋花き、オークネット、鶴見花き、なにわ花市場など全国30市場以上。
とぴあ浜松が最大のクルクマ産地に躍進した要因は、①他の産地に比べて、名古屋・大阪・東京などの大消費地に近いこと、②開花させてから出荷するので、他の産地より日持ちがよいこと(8〜9分咲きで出荷すると日持ちが最大になる)、③品種の特性に合わせて圃場を選定・管理を徹底していること。この3つの特徴を、仲⽥さんから教えていただいた。 *後編へ続く
【巻頭言】「夏の花、クルクマのその後(前編)」『JFMAニュース』2026年10月20日号
連載(JFMAニュース)
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