新型コロナウイルスの感染が広がり、東京都など7都府県に緊急事態宣言が発令された。翌日(4 月 8日)から、百貨店や駅ビルなどに出店している専門花店は、一部を除いて都心の店を 5 月6日まで閉店することを決めた。
その日、わたしは大手ホームセンターの経営者とメールでやり取りしていた。専門店が閉まって、消費者は困っている。量販店にとって花 をアピールする絶好の機会だと思ったからだ。
「青山フラワーマーケットや日比谷花壇が一ヵ月、店を閉じると発表しました。でも、閉塞感が漂っているいまだから、花と緑に対するニーズはあります。ホームセンターと食品スーパーにはチャンスかもしれません。在宅(勤務)の人は植物と土に飢えてます。品揃えの強化を」とメールを送ってみた。
「えっ?これは自主的な閉店なのでしょうかね?」(T さん)と驚いた様子の返事が戻っ てきた。同僚の女性教授からも、同じころの LINE メールで、「仙川などの路面店も閉まっ ていましたよ。館内やJR駅中はわかるのですが」とあった。近所の花屋さんで自宅用の花を購入したらしい。
10 日の小池知事の発表では、規制対象業種から百貨店が外れた。営業可能になったが、三越伊勢丹などは全館閉店を継続している。食品売り場などで営業を続けている高島屋とは微妙に判断が分かれている。
次の日の返信は、“懇願メール”になってしまった。
「どうなのでしょう。高島屋と三越。コンビニはものすごい重装備で店を開けていますね。ホームセンターは閉めないでくださいね。うちの花業界が本当に干上がってしまいます」。
しかし、懇願メールにはうれしい返事が戻ってきた。「百貨店の判断についてはわかりませんが、不要不急の解釈だと思います。ここだけの話社内でも、切り花は?という議論はありました。こんな時だからこそ気持ちを癒す花は必需 品!で押し切りましたが」(T さん)。ありがたい説得に感謝である。
世間ではホームセンターと百貨店が自粛業態から外れたことに疑問を呈する向きもある。しかし、ホームセンターまで閉まってしまえば、わたしのようにオンライン授業で在宅勤務をしている人間から、植物や花に触れる癒しの時間まで 奪ってしまう。ストレス軽減のために植物は必要なはずである。
一方で、パーティーや宴会、葬儀、ホテルやレストラン向けの業務用の花は、完全に行先を失ってしまっている。その影響は、花市場での取引に如実に現れている。都内の荷受会社 の方と電話で連絡を取ってみた。
「業務向けの大きな花は、値崩れを起こしてますね。一方で、短い花の方が売れていて、 いい値段がついています」(H さん)。 H さんとも議論したが、自宅用が伸びているからだろうという結論に落ち着いた。
在宅の時間が増えたことで、ホームユースが伸びている。日本の社会ではじめて、自宅用に花を購入する文化が根づくかもしれない。購入場所としては、スーパーやホームセンターが選ばれる。さらに、EC が急速に売り上げを伸ばしている。花の流通で主要チャネルが変わりはじめている。メインの販売経路の切り替えと消費者が求める花のサイズに、花産業が向かう変化の方向が反映されている。
*今回の巻頭言で、わたしからのお願いです。コロナ感染などが広がっているいま、皆さ んが JFMA のメンバーとして、
①いまの業界の変化をどのように感じ、
②この激しい変化に対応して取り組んでいることをお知らせください。また、
③わたしたち正副会長(小川、 三好、松村)に対して質問があれば、メールをください。
送り先は、(info@jfma.net:野口)です。
ニュースの紙面で紹介していきたいと思います。なお、一例として、参考にしていた だきたいのは、北海道の薄木さんのブログ記事( https://ameblo.jp/hanabito/entry12588366121.html)です。