2日前のバレンタインデー(2月14日)に、都内の花店チェーンを巡回訪問したことを報告した。JFMA事務局長の松島さんとふたりで、有楽町の青山フラワーマーケットとユニクロ・マロニエ店(ユニクロフラワー売り場)を視察したところまで報告した。やや時間が空いてしまったが、本日はその続きである。
夕方にかけて、有楽町から有楽町線で池袋に向かった。ふたりで、池袋駅構内にある2つの店舗を巡ってみた。日比谷花壇の西武百貨店内の店舗と、池袋駅のコンコースにある青山フラワーマーケットである。その他、松島さんは一人で、ボンマルシェ(高橋社長)の東武百貨店寄りの店舗も視察していた。
日比谷花壇は、午後4時という時間帯もあって、店内のお客さんは数が少なめに見えた。わたしは、フラワーバレンタイン向けの商品がディスプレイされている店内の様子を撮影した。さすがに日比谷さんである。店頭の花束の陳列は美しかった。
ところが、有楽町の青フラさんと同様である。店内にディスプレイされている花束は、それなりに値段が高い。赤バラ1本の単価が8百円である。日比谷さんの方が、青フラさんより値段が安いのだ。両店のポジションを考えて、これにはとても驚いた。
店長さんと思われる女性の方の説明によると、「今年のバレンタインデーは、花の売上はそこそこでした」とのこと。花恋人の野田社長からも電話で連絡があったが、「前日の売上はいまいち」のようだった。壁際に、花の国協議会(宮島さんが副会長)が配布している、バレンタインのポスターが貼ってある。「花は自由なラブレター」。それにしても、花の値段が高いなあ(わたしのつぶやき)。
地下の駅コンコースを歩いて、池袋ルミネの方に向かった。ちょっと驚く場面に遭遇した。これまで池袋の駅通路で営業していた「トワローズ」(ディスカウント花店)が、いつの間にか消えてしまっていたことだ。そういえば、昨年度の「花店のフィールドワーク」のときにも、3店舗のうち一つが営業を停止していた。
今年は、3店舗すべてがクローズになっていた。家賃が高そうな場所で、低価格の店は商売が苦しくなっているのだろう。現状の仕入れ価格(2年前の5割高)では、売れる花が買えないはずだ。トワローズの後は、バレンタインチョコを販売している「KitKat」のブースに代わっていた。
画像でわかるように、女子高生たちがチョコレートに群がっていた。撤退したもう一つの店舗は、ギフト雑貨を売る店になっていた。こちらも、プレゼント用なのか?色とりどりの手袋で商売は繁盛しているように見えた。必需品ではない花の将来が心配になる。
最後に、やや暗い気持ちで、ルミネ池袋のコンコースにある青山フラワーマーケットに向かった。この店だけは、いつものように繁盛していた。男女が半々くらいだろう。バレンタイン仕様の花束を買うために、若者が10人ほど列に並んでいる。
よく見ると、有楽町のユニクロのように、半分は外国人である。インバウンド客であることは明らかだった。池袋の青フラの店舗は、ディスプレイが完全に「バレンタイン対応」になっている。
ちなみに、帰り際に立ち寄った青フラの日暮里店では、ディスプレイされている商品のすべてが、バレンタイン仕様にはなっていなかった。通常の商品に加えて、少しだけピンク系のブーケを「バレンタイン商品」としてディスプレイしていた。しかも、昨年とは異なり、レジ前に長い列ができていなかった(訪問時間が5時前だったので、夕方からは列ができていたのもしれない)。
話は池袋の青フラに戻る。わたしたちが、店頭で商品をスマホで撮影していたとき、33本のバラを抱えて、レジに向かっている若者がいることに気が付いた。20代の半ば?あるいは、ぎりぎり30歳くらいだろうか。彼が抱えている大きな赤いバラのブーケは、価格が22000円である。
てっきり日本人と思ったが、わたしから「どなたにプレゼントするのですか?」と尋ねたところ、「彼女にプレゼントします」と答えてくれた。同時に、自分がミャンマー人あることを教えてくれた。松島さんが、「わー、そうなんだ。先生、聞いてみるものですね」と驚愕した顔が忘れられない。
日本人の若者が、「成人式や卒業式に、見栄えがする大きな花束を両親や彼女にプレゼントするようになった」と野田さん(花恋人社長)に聞いたことがあった。ミャンマー人の若者が、バレンタインに、2万円超するブーケを彼女にプラゼントする様子を見てしまった。
そうなのだ。物日にSNSで映える高価な花を購入するのは、それはそれでよろしい。花業界にとって、それは素晴らしいことなのだ。しかし、そうだとすると、普段使いの花はどうなっているのだろうか? 量販店などの販売動向を見ると、日常使いの花は高くなりすぎて、売れていないのではないか?
大田花きの内藤育子さんによると、総務庁の家計調査では、切り花の消費が大きく落ち込んでいる。一世帯当たりの切り花消費は、21世紀に入ってから最低水準に落ちているらしい。1990年の大阪花博の少し前の時点に、もしかすると花の市場は向かっているのではないだろうか。
帰り道、そんなことを考えながら、地元の高砂駅で降りた。いつも利用している「hana-to-midori」さんに寄って、店主さんにバレンタインの様子を尋ねてみるためだった。
自宅に返れば、「ランドフローラさん」(日比谷花壇)から、バレンタイン用のブーケが届いているはずだった。大きなブーケはいらない。かみさんの好きなユリを一本(400円)だけ頼んで、店主さんに、本日のお客さんの動向をヒアリングしてみた。
花専門店の「花広」(下北沢駅)さんに勤めていた店主さん曰く、「今年のバレンタインは、そこそこでしたよ。『フラワーバレンタインで花をプレゼントしたい』と言って来店されるお客さんがいらっしゃいました」(店主さん)。それに付け加えて、「女性のお客様が多かったですね」と。
女性が女性に花を贈るのだろうか。花贈りの文化を、「男性から女性に」と決めつけない方がよいように思う。そうした日常使いに近い贈り方は悪くはない。葛飾区で下町ゆえに、池袋や有楽町とは値段の感覚が違っている。「ブーケで客単価は、2千円から3千円までですかね」(花と緑の店主さん)。
なぜだろう? そのコメントを聞いて、33本で22000円のバラの花束を購入していたミャンマー人の若者を見てきたわたしには、下町の花屋の店主のその言葉で、大いに救われた気がした。
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