住みたい場所は、水辺か?森の中か? そして、旧宅のリノベーションを妄想する。

 ずいぶんと前に、誰かとこの話題で盛り上がったことがあった。家を建てるときに、海や川が見える水辺を選ぶか、木々に囲まれた家に住まうかの選択についてである。広い草原が目の前に広がる、平坦な場所を選ぶ人もいるかもしれない。小高い丘や山の頂から、平原や大海原を臨む雄大な風景を見て暮らしたいと考える人もいるだろう。

 

 それでも、大きく2つに分類すれば、森の中を選ぶか、水辺を選ぶかになるだろう。

 わたしは、開放的な広い海原や、川の流れを見るのは嫌いではない。しかし、あまり泳ぎが得意ではないこともあって、海や川、広い草原ではなく、やや閉じた空間の森林の緑を選ぶ組に属していると思う。ただし、あまりに鬱蒼と木々が茂っているドイツの森よりは、光が差し込んでくる明るい田舎の林の中が好みである。

 いま住んでいる自宅の外回りにも、だから、低木ながら10種類ほどの庭木を植えている。庭師の山田雄太郎さん(山田造園設計施工事務所)に、5年前に6坪ほどの庭をデザインしてもらった。専門家にとっては、ごく基本的な作庭の考え方なのかもしれない。小さな庭ながら、常緑樹と落葉樹が半々に植わっている。

 わが家の庭が鬱蒼としていないのは、落葉樹が晩秋になると葉っぱを落とすからだ。よく考えた樹木の選び方だと思う。冬場の日光の不足分を、落葉樹を植えることで日が差し込んでくる空間を確保するのである。

 5年前のいまごろ、10月末に東京下町の葛飾区高砂に引っ越してきた。その年の秋口から冬にかけて、真っ暗な庭の空間を見続けることがなかった。庭師の雄太郎さんの知恵で、これは生活してみてはじめてわかったことだった。

 

 さすが一流の庭師はちがうものだと思った。それと、花の咲くタイミングを微妙に違えてくれているのも、感激だった。

 春先に花が咲く樹木が多くを占めてはいるが、早春に咲く花から晩春に花をつける樹木まで、相当の種類を揃えてくれていた。また、花の色も同じ品種でありながら、白とピンクに分けてくれたり、その使い分けが見事だった。これは、常緑樹の侘助を紅白を対に植えてくれたことを指している。

 本日の話は、住まいからの風景として、水辺か森林かの選択の話題から逸れてしまった。

 水辺を選んでしまうと、この楽しみは奪われてしまう。遮るものがない空間を作らないと、水辺の風景が楽しめないからだ。わたしは、やや閉塞して空間を好むほうの人間なのかもしれない。

 40年前に最初の家を建てたときは、樹木のことは全く考えなかったからだ。だから、ロケーションの移動(千葉の郊外から都内へ)を含めて、戸建てを2回つくる恩恵に浴したことには感謝しなければならない。

 

 さて、今後のことになるが、千葉の旧宅を改造しようと計画している。何年後になるかはわからない。いま旧宅を残してきた場所は、郊外の閑静な住宅街の中にある。新居からは、急行列車で15分から20分。西白井駅からは歩いて約10分。

 建物のイメージとしては、私的な図書館である。もともとがミサワホームの「O型」で、総二階建てである。一階フロアの一部をぶち抜いて、壁面は本の収納棚にする。安藤忠雄が神戸や大阪に建設した「こども図書館」のイメージである。

 一階の奥で北側から東側にかけてのフロアは、吹き抜けのオープンキッチンにする。そこは、かみさんが料理をする場所である。米国カリフォルニア州で過ごしたとき、オークランドの一軒家にはベイウインドウが付いていた。そのときの空間を復元してみたい。

 一階の空間は、大きな一枚板のテーブルのみで構成する。壁面は本棚だから、本に囲まれて食事を楽しむことになる。らせん階段で2階に昇れるように設計する。寝室は二階になるが、布団を持ち込めば、一階でも雑魚寝ができるようにする。神戸の孫や京都の娘が下町に遊びに来ても、現状では大きな寝る場所が確保できないからだ。

 

 いま旧宅の庭は、荒れ放題になっている。次回も、庭師の山田雄太郎さんに頼んで庭木を選んでもらおうと思っている。

 素人のわたしが、中途半端なコンセプトを考えるより、今度も植栽は雄太郎さんにお任せしよう。母屋のコンセプトをきちんとお伝えすれば、きっと素敵な庭をデザインしてくださるだろう。

 「すずきハウス」の物置は撤去して、北東の庭には、滋賀県多賀町からHOZON(持続可能な小さな木の空間)を運んできて、浴室とサウナをセットにしたい。その方が母屋のスペースを大きくとれるからだ。

 夢は膨らんでくるが、5年前に新居を建てたので、旧宅をリビルトするにはそれ相応の資金が必要になる。ミサワホームの躯体は丈夫である。あとは、わたしが本やコンサルでいくら稼げるかによって、リモデルのクオリティが決まるだろう。まだ頑張って働かねば。