昨日のことになります。小川・林の共訳『True North リーダーたちの羅針盤:フィールドブック』の原稿が完成しました。今回は、デジタル媒体で、本文(テキスト)以外に、「演習問題(回答例)」を入手できるようにします。本日、共訳者ふたりによる「訳者まえがき」をブログにアップします。
翻訳書の出版前に、かなり前倒しで、「訳者まえがき」を公開するのには二重の意味があります。
1 本編『True North リーダーたちの羅針盤』(生産性出版、2017年)の発売時に、テキストを購入していただいた読者に向けてのサービスです。再度、自分事としてご自身のリーダーとしての軌跡を振り返ってみたい方に向けては、自習用の「演習問題」を含んだ「フィールドブック」の回答例を情報として提供するためです。
2 新たに読者となりそうなビジネスパースンに向けては、本編と並行して利用していただくためです。本編の理解をより効果的にするため、わたしの元ゼミ生(法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科の卒業生)と共著者ふたりによる回答例を提供します。
どちらの読者層に向けても、デジタル媒体でのダウンロードを可能にしたいと思います。サイトの構築は少し先になりますが、書籍出版の直後に、サービスを開始したいと思っています。
なお、もう一つの利用方法は、大学院の教員とセミナー講師の方たちのために準備したサービスです。
3 本編をお読みになり、実際に大学院の授業やセミナーで、授業マテリアルとして本編『True North リーダーたちの羅針盤』を活用して下さっている方たちに向けてのサービスです。大学教員やセミナー講師の方は、演習問題の具体的な回答がほしいかと思います。そのために、4人の元院生に協力を仰いで、具体的な回答例を準備しました。
以下は、フィールドブックの利用ガイドと、その説明を事前にお知らせするものです。本編とフィールドブックを併用することで、本編の理解がより深まると思います。大学教員とセミナー講師向けには、場合によっては、事前に演習用のマテリアルを提供する用意もあります。
訳者まえがき
本書(『True North リーダーたちの羅針盤:フィールドブック』)は、ニック・クレイグ、ビル・ジョージ、スコット・スヌークら3人の共著で、2015年に刊行されています。本書のオリジナルの著作(まえがきでは「本編」と呼ぶことにします)は、共著者のひとりであるビル・ジョージ(ハーバード・ビジネススクール教授)が著した『True North リーダーたちの羅針盤』(生産性出版、2017年)になります。
フィールドブックの方には、「オーセンティック・リーダーを目指す皆さんへのガイド」という副題がついています。サブタイトルが示す通り、本編の『True North リーダーたちの羅針盤』を読んだ読者が、自身の「リーダーシップの旅」を省察し、リーダーシップ開発プラン(Personal Leadership Development Plan=PLDP)を作成するために用意された「自学自習用のワーブック」になっています。
フィールドブックは発売から8年が経過していますが、本編と併用されて好評を博しているようです。著者たちが「はしがき」で触れているように、ハーバード・ビジネスクールなど、欧米の経営大学院の授業(リーダーシップ論)やゼミの演習でテキストに採用されています。また、企業の社内セミナーやコーチングの研修用テキストとしても利用されているようです。
わたしたちが翻訳を担当した『True North リーダーたちの羅針盤』(本編)は、2023年現在で4刷りを重ねています。日本国内でも多くの読者を獲得できているのは、欧米の企業社会と同様な使い方をされているからだと思われます。というわけで、大学院の授業や社内外でのセミナー、コーチングのテキストとしての利用を考えて、翻訳に取り組むことにしました。
日本語への翻訳に当たっては、オリジナルの文章(テキスト)と内容(コンテンツ)に次のような変更を加えてあります。
まず、編集部と相談の上、日本の実情に合わせて、直訳ではなく部分的に文章を変更しています。とくに、宗教的な記述や文化的に理解困難な表現は、削除したり改変したりしています。また、オリジナルのテキストで丸ごと省いてしまった章もあります(第12章「グローバル・リーダーシップ」)。
翻訳者としては、文化的なコンテキストが理解できない場合は、削除や改変は致し方がないと考えました。そのように扱った方が、文章がシンプルで読みやすくなると考えたからです。また、本編を読むことでより一層理解が深まる場合は、本編のテキストの記述で置き換えた部分もあります。フィールドブックの方は、3人の著者が共同で執筆したため、文体や概念の説明が微妙に不統一になっている部分もあります。
つぎに、演習問題については、つぎのような扱いにしてあります。
オリジナルテキストでは、演習問題の解答欄に、3~5か所の空欄が用意されています。標準的な日本人の学生やビジネスパースンにとって、自身の個人的な人生経験を答えるため、必要以上に多くの回答欄(3~5)を埋めることを要求しても、拒否反応を示されると考えました。
そこで、演習問題に対する回答欄は、オリジナルと比べて少なめ(2~3か所)に設定してあります。回答しやすいように、空欄の数を3か所以内に抑えました。これは、日米欧の教育文化と心的な心地よさの常識の違いから来ているのだと思います。
演習問題については、ほぼ全編にわたって(第2章、第12章除く)回答例を準備しました。翻訳者ふたり以外に、法政大学大学院の小川研究室の元大学院生4人、松尾啓子さん(中小企業診断士・キャリアコンサルタント)、安井祐子さん(人材開発・組織開発コンサルタント)、大下誠さん(経営コンサルタント・研修講師)、浦上昌子さん(中小企業診断士・キャリアコンサルタント)の協力を得て、具体的な回答例を提出してもらいました。
なお、回答例は、別途用意したサイトからダウンロードしていただくか、閲覧可能な形でマテリアルを用意してもらうことにしています。ただし、使い方としては、最初から回答例を参考にするのではなく、先ずは自分で回答してみることが大切だと思います。
また、本編中に用意されている回答欄ではスペースが不足する質問も多くあります。用意されたスペースに収まるように回答するのではなく、別紙やノートを用意するなどして、スペースに拘らずに回答されることをお勧めします。
翻訳に当たっては、厳密に訳すというよりは、以下の用語に代表されるように文脈によって訳し分けるようにしました。
true north=トゥルーノース(めまぐるしく変化する環境でも変わることなく、正しい方向に導く人生の基軸)の意。
authentic=「自分らしい・ならでは」、「本物」、「オーセンティック」を文中で使い分けている。
purpose=あえて、一語のパーパスを使わずに目的・目標、使命・ミッション、存在理由など、文脈により使い分けている。
このフィールドブックの章立ては、併用しやすいように下記のとおり本編に沿って構成されています。また、実際に活用する際のアドバイスが、<付録>として用意されています。
(左側)本編 『Ture North リーダーたちの羅針盤』
(右側)本書『True Northフィールブック』(仮)
第1部 リーダーシップへの旅
第1章 人生経験 人生経験
第2章 道を見失う 道を見失う
第3章 試練 試練
第2部 本物のリーダーになる
第4章 自己認識 自己認識
第5章 価値観 価値観
第6章 スィート・スポット スィート・スポット
第7章 サポート・チーム サポート・チーム
第8章 公私を統合する人生 公私を統合する人生
第3部 成果を上げるリーダーへ
第9章 「私」から「私たち」へ 「私」から「私たち」へ
第10章 目標 目的・目標
第11章 エンパワーメント エンパワーメント
第12章 グローバル・リーダーシップ あなたのリーダーシップ開発プラン
付録
A.このガイドの使い方
B.リーダーシップ・ディスカッション・グループの作り方
著者たちは、リーダーたちが切り拓いていく人生の航路を、3つのステージ(第1部~第3部に対応)に区分しています。自身がいまどの段階にいるにせよ、これまでの人生経験を真摯に省察し、未来に向けて確かな目標を設定することで、本物のリーダーとしての役割を果たす準備が整うことになります。
波乱万丈の航海を無事に乗り切るために、本書が皆さんに適切な学習機会と有益な行動指針を提供できることを切に願います。
Bon Voyage!(良い旅を)
2024年Z月
小川孔輔、林麻矢