偶然の検索結果:「中国木材(株)」の能代工場建設

 ネット検索は、ふだんは不確かな物事を確かめたり、事実の正確さを期すために使っている。しかし、先日の検索操作では、それまで知らなかった新しい事実を発見することになった。発端は、ベッドに横になっていて、締め切りが迫っている原稿のことを考えていたからだった。JFMAニュース(巻頭言)の締め切りが毎月の20日である。

 

 今月号(2023年10月号)では、「サステナブルな木材」をテーマにしようと思っていた。国産の間伐材で保冷倉庫を作っている、滋賀県の「HOZON」(HIJ.株式会社、多賀町)を取り上げようと思っていた。翌週の同じ時期に、秋田の地元新聞『北羽新報』のコラムの締め切りもやってくる。

 そこで思い出したのが、生まれ故郷の能代市が、かつては東洋一の製材都市で有名だったことである。戦後すぐの時期に、米代川から筏(いかだ)で運ばれてきた杉の丸太を、市内の至る所にあった製材工場で杉板に加工していた。大きな製材マシーンが町中でうなりを上げていて、雨で湿ったおがくずの酸っぱい臭いが、町中に流れていたものだった。

 外材に押されて、80年代から国産の杉材を使った製材や合板の事業が衰退していった。同時に、能代の町では倒産と廃業が続いた。21世紀に入って、高級な杉合板で成功していた親戚の材木会社も、2000年に入るころには倒産の危機に瀕していた。

 

 そんなことを思い出しながら、あることを連想していた。昨年の春、元院生の卒業プロジェクトを支援するため、宮崎県日向市まで「へべすの産地調査」で日向市役所まで出向いたことがあった。調査とは直接関係なかったが、日向市の産業のことをインタビューで話したときに、日向市に大きな製材工場があることを知った。

 市役所の担当者(院生の浦上女史の同級生?)が、「木材工場を運営している会社が、秋田県能代市に新しい製材工場を建設すること」を教えてくれた。能代市は、わたしの出身地である。偶然の出来事に気持ちが反応した。

 「日向市に工場を持っている会社が、いまや過疎の能代市に工場を建設するのだろう?」とは思った。しかし、へべすの調査で宮崎にきたいたので、そのことはすっかり忘れていた。

 

 ところが、ふと思い立った。「木材とSDGsとの連想」から、日向市にある木材工場の名前と能代の新しい工場進出の件は、コラムのネタに役に立つかしれない。そう思いついて、グーグルでネット検索してみた。

 検索ワードは、「能代市、製材所、宮崎県日向市」である。最初に検索結果で戻ってきたのが、「中国木材(株)日向事務所」だった。そして、最初の記事は、なんと元大学院の院生たちがたくさんいる広島の情報誌で、「ひろしま企業図鑑」だった。

 その図鑑の記事には、「製材メーカーで国内トップ 秋田県能代市で新工場着工 中国木材株式会社」(2023.09.20)。記事の見出しは、「国産材の適切な活用で脱炭素化社会に貢献」だった。

 キーワードが、「1000億円超の企業」「 ひろしま業界地図(2024年度版)」「 ナンバーワン技術・製品」「呉市」「国内トップクラス」「 建設」「老舗企業」となっていた。詳しくは、https://zukan.biz/building/chugoku-mokuzai/

 

 サステナブルな広島の木材会社「中国木材(株)」は、売上高1000億円超である。何度も呉市にはいっていたが、まったく知らない会社だった。住宅用木材の3分の一は、この会社が供給している。もともとは外材を仕入れていたが、近年は、国産の間伐材などを用いている。

 宮崎県の日向市に工場を作ったのが最初で、来年を目途に、わが秋田県能代市に最新鋭工場を建設することになった。東京にいると気が付かないが、地元能代では大きな話題になっている。中郷木材は、国産の杉材を住宅に利用したり、間伐材や端材などをバイオマス発電に利用している。

 住宅建設だけでなく、バイオマス発電事業にも進出している。きわめて持続可能な事業を開拓する新興の木材メーカーが、広島県呉市と宮崎県日向市、そして秋田県能代市にあることを知って驚いたわけである。

 

 この話題は、近々、地元新聞の「北羽新報」や「JFMAニュース」で取り上げてみたいと思っている。