3週間前に書いた原稿である。JFMAニュース(2月号)の巻頭言なのだが、しばらくニュースが配信されていなかったので、ブログアップは差し控えていた。同時配信すると、編集長の松島専務から叱られるからだ。もうよろしいでしょうね。松島さん!内容としては、かなり深刻なテーマを取り上げている。
「流通チャネルの統合と花業界の再編成」 JFMA会長 小川孔輔
来月の下旬(2013年3月)に、『流通チャネルの転換戦略』(仮)という翻訳書をダイヤモンド社から出版する。著者はハーバード・ビジネススクールのランガン教授で、「小売りの輪」(小売業の栄枯盛衰を説明する理論)で有名なマルコム・マクネア講座(ハーバード大学)を担当しているマーケティング教授である。今回の翻訳は、総ページ数が480頁で厚さが3センチを超えるソフトカバー本である。
この本が取り上げているテーマ(チャネル転換戦略)は、花業界にとっても示唆に富むものである。本書を読めば、市場統合や輸入への対応、小売業との取組みの変化などがよくわかる。ぜひ、本書をご購入の上、ご一読をおすすめしたい。簡単に内容を解説してみる。
ランガン教授の主張は、「生産者(グループ)がその販売先(チャネル)を変えることは、通常の発想では困難である。しかし、長期的に企業が存続できるだけでなく、将来的に高い成果を達成しようとするならば、流通チャネル(販売先)を見直すことは必須である」となる。また、それとは逆に、「小売業者が長期的にパフォーマンスを向上させようと考えるならば、信頼ができる取引相手をさがして、その取引先と継続的な取引関係を維持するよう事業構造を変えていかなければならない」。生産者と小売業者の視点からで、その立場は異なるが、これはどこかの業界でもよく聞く話ではないだろうか?
情報技術の進化と経営のグローバリゼーションは、商品開発のやり方や調達の方法、物流の組み方を変えていく。経営を取り巻く環境が大きく変化しているのだから、ビジネスの戦略を変えるのは自然な方向である。しかし、事が取引相手との組み方となると、途端に行動やアプローチが消極的になる。とりわけ、販売相手についてはその傾向が顕著である。簡単には、既存の取引先に依存する販売方法からは脱却ができないのである。来るべき10年においては、花業界でも取引のやり方が従来とはまったく異なる形態に変わっていくだろう。いまの取引先は、5年後には存在していないかもしれない。
従来からの販売先や仕入れ先が消えてなくなってしまう現実をあなたはシミュレーションしてみたことはあるだろうか。そして、たとえその取引先が存在していたとしても、いまのビジネスのやり方(コスト構造や商品群)でその納入業者から有利な条件を引き出せるだろうか。あるいは、取引相手に対して有利な条件を提示できるだろうか。
そのように考えると、現状のビジネスをそのまま維持することはできないとわかるだろう。自らがM&A(企業の買収と合併)を仕掛けなければ、再編の流れに取り残されてしまう可能性が高くなる。あなたが新しい事業を始めなければ、誰かがいまのあなたの商売を奪い取ってしまうかもしれない。
わたしからの質問に答えてみるとよいだろう。
(1)あなたが所属する組織のメンバーは危機感を共有していますか?
(2)どこかでリスクを取ることを恐れていてはいませんか?
業界再編の波に飲み込まれてしまわないための唯一の方策は、自らがイニシアティブをとることである。花業界においても、あなたが主役になれなければ、劇中では脇役の役回りも与えられなくなるのである。