『わんすけ先生、消防団員になる。』の組見本が出来上がってきた。

 8月末出版予定の私小説の「組見本」が、午前中に小学館スクウェア(自費出版部門)から届いた。1章分の原稿を、おおうちさんから送られてきた基本フォーマットに流し込んだものだ。組見本には、各節のタイトル(文字)と章タイトル(「柱」と呼ぶ:場所と文字)を、どのようなタイプの活字で、どの大きさの文字で、どのように配置するかが指定されている。

 

 これまでの51冊は、すべて商業出版だった。「組見本」なるものを、事前に見せられることはなかった。細かな意思決定は、すべて出版社に任せてきた。今回は、装丁とレイアウトを「なのなのグラフィクス」(おおうちおさむさん)に別途に依頼してある。

 基本フォーマットから文字の指定にいたるまで、わたしが最終的に決めることになっている。コスト負担者であり、投資家であり、出資者でもあるからだ。

 組見本が添付されていた午前中のメールには、担当の石塚ゆみさんから、つぎのようなコメントがついていた。

 「個人的には、タイトルや柱などにおおうちさんらしい遊びがあり、とてもよいと思いました。

  なお、巻頭からオープニング、章扉などは装丁デザインと合わせて考えたいとのことで、後送となります(7月初旬)」

 

 石塚さんが言っている「おおうちさんらしい遊び」とは、節タイトルの連番(数字)が、かならずしも同じ方向を向いていないことである。節によっては、上を向いたり、すこし横に傾いたり、しかも数字の角度がランダムに傾くように指定していることを指している。

 明日のインスタグラムには、節タイトルの部分を切り取った、組見本の写真を掲載してみようと思っている。言葉ではわからないだろうが、遊びの要素を取り入れてあることは、画像を通してならばよくわかるだろう。近い未来の読者へのサービスである。

 商業出版の場合、そのようなティージング(興味を煽る事前露出)は、基本的に出版社の権限の範囲にある。自費出版の良さは、そうしたプロモーション的な活動も、著者自身の手の内にあることだろう。自由な出版を経験をしてしまうと、この先に予定されている何冊かの物語的な出版の際にも、フォーマットや文字、紙質にもこだわってしまいそうだ。

 

 いずれにしても、なのなのさんから、これから地図のイラストや表紙の装丁があがってくる。組見本を見てから、今回の出版のことでつくづく思ったのは、中途半端に佳作など文学賞で入選しなくてよかったことだ。著作権が葛飾区に移ってしまったら、今回のような冒険はできなかったはずだったからだ。

 小口(本の裁断面3方向)を薄紫色(名刺のロゴカラー)に染めることを選べたのも、大内さんに装丁とレイアウトを依頼できたのも、文学賞を落選したからだった。もちろん文学賞に応募しなければ、今回のように私小説の形式で作品を書き下ろすこともなかっただろう。

 わたしは運良い執筆者だと思う。弟子たちやインスタのフォロワー仲間たちも、作品の出版を楽しみにしている。8月の末に刊行が間に合えば、受賞の際に用意していた「屋形船ご招待」を実現できるかもしれない。登場人物、関係会社、親戚一同、読者代表などを招待しようと思っている。

 

 本日は雨。消防団の訓練は、「夜間の部は中止」と連絡が来ている。2日ぶりで、宅飲みになりそうだ。汗をかいてはいないが、シャワーを浴びたあと、組見本を読みながらの一人酒になりそうだ。