「名古屋しゃちほこマラソン」で、服部さん(75歳)のラストランに伴走する。

 連休初日(4月29日)、名古屋まで遠征して豊橋経由で先ほど帰宅しました。『月刊ランナーズ』の6月号に、「お城を走るマラソンを楽しもう」という記事を寄稿したことがきっかけで、「名古屋しゃちほこマラソン」にエントリーしていたからです。編集部の山本慎一郎さんに確認したところ、このレースは、お城マラソンには認定されていないようでした。

 

 とはいえ、「しゃちほこマラソン」と銘打っているのだから、名古屋城を対象にした「お城マラソン」だと勝手に思いこんで、衝動的にRUNNETからエントリーしたのでした。

 大会の開催場所は、名古屋市郊外の庄内緑地公園。ここで走るのは、2年前と今回の2度目になります。たまたまエントリーしてしまった「しゃちほこマラソン」でしたが、思わぬことを経験しました。わたしのマラソン人生の中で、生涯記憶に残るだろう感動的な「途中棄権レース」になりました。

 以下は、走り終わったあとで、山本さん(『月刊ランナーズ』編集部)に送ったメールです。

 

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 こんにちは。山本さん。現地からです。長くなります。

 本日、名古屋しゃちほこトライアル、ハーフを走りに来ました。
 (このレースが)「お城マラソン」に登録されているかどうかは?でしたが、二ヶ月ほど前に、レース名だけでエントリーしてしまいました!(笑) で、思いもかけず、こんなことが起こりました。

 途中で、ハーフを10kmに切り替えて、1時間2分48分でゴール(記録上は途中でリタイア)。リタイアしたあとの2kmを、伴走して走りました。今日が最後のランになるという服部さん(75歳)という方と、最後の一周をご一緒しました。ご本人は、1時間26分28秒でラストランを完走できました。

 

 なんと!奇跡的に、添付の動画を本村ちなみ(元秘書)が撮影していました。ラストランの服部さんは、「1085」の人です。わたしが右側を並走、ゼッケンは「H192」です。

 岡崎市在住のちなみは、わたしに内緒で応援にきていたようです。今は職場に戻ったようで、夕方からローソンの阿部くんと3人で飲むことになってます。

 実はスタート前に、この方がものすごく興奮しているので、話しかけたら、奥さんと一緒に集合場所に立っていて、「今日がラストランなのです。最後に10kmを走るのですよ」と。わたしはハーフにエントリーしているので、スタート地点が逆方向になります。でも、「周回で抜いてしまいますよ」と言って、その場では別れました。

 ちなみに、しゃちほこトライアルマラソンは、公園内の1周2.3kmのコースを、10km、ハーフ、30kmのランナーが一緒に走ります。誰がどの距離にエントリーしているかは、ゼッケンの色で区別ができます。

 

 わたしが4周目に入ったところで、服部さんはまだ3周目。周回コースの中間地点で、声かけをして抜きました。で、ふと考えてみたら、4周でわたしは10km(中間点)だから、一旦リタイアして、服部さんのラストランの最後の一周をご一緒しようと決めました。
 というわけで、ゴール近くで5分ほど服部さんを待って、最後をご一緒しました。しかも、その周回のランを、元秘書の本村ちなみが、動画に撮ってくれていたわけです。全くの偶然でした。

 以下は、先ほどLINEに送られてきた、ちなみからのコメントです。入り口近くの土手の上から、わたしたちの走路が見えたようです。これまた偶然ですね。

 公園から入ってすぐぐらいの場所です。以下は、ちなみからのLINEのメッセージです。そこに、動画が添付されていました。

 (*)わたしのインスタグラムの最後(10枚目)に、そのときの11秒の動画がアップされています。

 https://www.instagram.com/p/Crm0VLJJqWY/?utm_source=ig_web_copy_link

   

 「この動画(を送って)以来ずっと、(周回してくる先生が)見かけないからおかしいなあ、と思っていました。
 職場に向かい、一度帰宅します
 (待ち合わせは)17:00ですね🤗
 20年ぶり(荒川以来)でしたが、わかるものですね😊」(本村ちなみ)

 

 すごいと言えば、すごいことです。
 元秘書の本村ちなみは、20年前は板橋に住んでました。その頃、短い期間ですが、(法政大学の小川研究室で)秘書をやってもらってました。当時、始まったばかりの「荒川市民マラソン」の応援にきてくれたことがありました。それが、「20年ぶりの(荒川以来)」の意味です。

 

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 それにしても、一瞬の判断で、途中棄権してよかったと思いました。いまは、ハーフの距離までなら、なんとか2時間ちょっとで完走できます。しかし、体力の衰えは明らかです。フルマラソンは、今年の東京マラソンのゴールタイム(5時間50秒)を見ても、完走が危うくなっています。 

 そして、自分も、あと4~5年で10KMを走れなくなる可能性があります。最後の一周をご一緒させていただいた服部さんは、ご自身のこれまでの大会のことを、1KM8~9分の超ゆったりペースで走りながら、ずっとわたしに話しかけてくださいました。というか、ラストランのご自分に話してかけていたのだと思います。

 65歳で定年退職してから走り始めたこと。結局は、その会社で再雇用になって、75歳のいまでも働いていること。フルマラソンは、ホノルルマラソン、東京マラソン、揖斐川マラソンソン、那覇マラソンと走ってきたが、7時間のタイムアウトがきつくなってきた。それで、ここ(ホームグラウンドの庄内緑地公園10K)をラストランにすることに決めたと。

 しゃちほこマラソンの10KMは、ものすごく緩い制限時間で、関門が3時間でした。並走しながら、「制限は3時間、3時間」とずっと念仏のように。さすがに途中で息切れをしたのか、ゴール近くになってからは、黙してしまわれましたが。

 

 先に声をかけてくれたのは、服部さんの方でした。

 わたしが、東京マラソンのチャリティTシャツ(2019)を着ているのを見たからのようです。ご自分も、「あんたと同じTシャツを持っているよ」と自慢げに話されていました。2019年、2023年、あと一回、全部で3回、東京マラソンを走ったとのことでした。

 今年の東京マラソン2023では、残念ながら10KM地点で関門にひっかかり、あえなくリタイアされたそうです。奥さんもむかしは走られていたようです。いまは応援のみだそうです。

 わたしのラストランには、服部さんの奥様のように、わがかみさんが一緒に応援に来てくれるだろうと信じています。お互いが生きのびていればの話ですが。服部さんは無事にゴールして、奥様とニコニコして帰って行かれました。

 最後に、服部さんと並んでいるところを、奥様が写真に収めてくれていました。残念ながら、メールアドレスを交換しなかったので、あの写真を永遠に見ることができないことになりました。それでよかったと思います。

 それだけに、ちなみの動画は貴重な証拠写真になりました。