「消費税率の3%アップに対して、専門店は総額表示で実質値上げ、量販店は価格据え置きすることをお勧めします!」『JFMAニュース』2014年3月号

 この記事は、週明けの3月24日にブログにアップすることになる。来週から消費税率が上がって8%になる。その時点での花業界(世間一般)の対応を「大胆発言」と題して予言してみた。予想が外れたら、「わたしは坊主になります!」と宣言している。責任を問われる発言ではあるが、さて、



「大胆発言:消費税率の3%アップに対して、専門店は総額表示で実質値上げ、量販店は価格据え置きすることをお勧めします!」『JFMAニュース』2014年3月号 JFMA会長 小川孔輔

 昨年(2013年)の4月24日に、消費税増税に関する特別立法に関して参考人として国会に呼ばれた。衆議院産業委員会において、学識研究者として意見を述べた。「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案」は、順調に審議を終え、法案は条件付きで可決された。
 その後1年が経過して、来月から消費税が8%に上がる。これは、いずれ諸外国のように、消費税率が10~15%に上昇する一里塚である。それでは、4月から花小売業は、3%分の増税に対してどのように対応すべきだろうか? 花の売価に対して、2つのことを決めなければならない。
 (1)原価上昇分を価格に転嫁すべきかどうか?あるいは、値段をアップできるかどうか?(2)価格表示の仕方を従来からの「総額表示」(内税方式)とすべきか、それとも「税別表示」(本体価格+税)とすべきか?
 結論を先に言うと、消費税率8%までは、花小売専門店は「総額表示」で実質値上げ(内税方式を維持)を、量販店は「総額表示」で価格据え置きすることを推奨する。個別の事情もあるだろうが。一般論として主張することは危険だが、以下のような理由から、専門店と量販店では異なる対応になると予想する。

 そもそもモノやサービスの値段はどのように決まるのだろうか?3つの要因によって、合理的に価格は決められる。①顧客の価格(値上げ・値下げ)への反応、②必要とされる利益率(原価率・粗利の構造)、③競争相手の値段のつけ方。この3つである。
 まずは、増税による「3%の上昇分」を消費者に転嫁できるかどうかである。あなたが専門店ならば、仕入れのコスト(原価)は間違いなく上昇する。②従来と同じ利益率(たとえば、粗利率40%)がほしいとなると、売価は上げざるを得ない。そのとき、消費者が値段の上昇を受け入れてくれるかだが、専門店に関してはおそらく3%程度の値上げは通るだろう。
 なぜなら、1月あたりから、不動産や宝石、ブランドバッグなどの高額品の売上が対前年比3割程度も伸びている。花は消耗品だから駆け込み需要はないが、贅沢品やギフト需要に関して、消費者は増税後の心構えができている証拠である。だから、目立たない3%程度の上昇ならば、長期的に消費者は慣れてしまう。それが証拠に、自動販売機で売られるソフトドリンク類は、120円から130円に値上げされることが決まっている。

 量販店はどうだろうか?専門店とは少し事情が違っている。法律の上では、今しばらくは、外税と内税のどちらでも選べるのだが、業界団体の「(新)日本スーパーマーケット協会」は、従来の「総額表示」から「外税方式」(本体価格ベースの表示)に変えることを決定している。総額表示の場合は、税金分で価格が上昇したことを、消費者に合理的に説明できない。スーパーで取り扱うアイテムは、全般的に、①消費者からの値上げへの反応が大きいことが分かっている。他方で、PB商品の開発などで、大手スーパーの仕入れの交渉力は従来にまして高まっている。
 「3%」は、標準的なスーパーでの売上高経常利益率に相当するが、今回に限っては、調達力と販売力で価格の据え置きをカバーできるだろう。だから、ほとんどの大手量販店に関しては、「総額表示」で価格は据え置くことになるだろう。それは、③同業者内での競争がし烈だからでもある
 
(*注釈* この部分に関しては、JFMAの記事を書いたあと、本日までに発表されている流通・飲食業各社の対応を見ると、本論で予想した通りの結果には必ずしもなっていない。小売業では、業界団体として「本体価格」(外税方式)のほうが優勢である。ただし、食品以外のチェーンストアの対応も統一されていない。なお、飲食業は「総額表示」が標準になっている。なぜそのように対応に差が出るのかについては、4月以降になってから論を改めて紹介したい。)

 なお、消費税率が10%に上昇したときは、スーパーマーケットの業界としても「総額表示」を見直すことになるだろう。国会でも説明したが、米国は外税方式を採用している。税負担を明らかにする方向は、納税意識を高めるためでもある。欧州は内税方式をいまだに採用しているが、グローバルには「分離方式」に傾いている。
 さて、4月からは、わたしの予想通りに事態が進行するかどうか。一か月先が楽しみである。予想が外れたら、わたしは『丸坊主』になります!