朝9時から今まで(~15時半)、東京消防庁の『消防団員ハンドブック』を読んでいた。6時間をかけて、約300頁の概説書を通読した。感想を一言で言うならば、「身が引き締まる思いがする」だった。全国各地に約80万人の消防団員がいる。団員として必要な知識がすべて、このマニュアルに詰まっている。
11月1日から本田消防団員になったが、消防団の活動内容についての予備知識はほとんどなかった。ハンドブックを読むまでは、消防活動が「火災」「水災」「震災」の3つを守備範囲としていることも知らなかった。
救命救急措置など、心肺停止になった人の救急蘇生(AED)の方法を学ぶため、消防団員は講習を受けることが義務づけられている。いずれは、24時間の講習を受講することになるが、ハンドブックを読むことで概要は知ることができる。
東京消防庁の『ハンドブック(令和4年版)』を通して学んだことは、現場での消火活動や道具の使い方だけはなかった。消防団の社会的な役割や、災害時の責任が思っていた以上に重いということだった。これまで、何げなく見てきた火災現場や震災の画像が、わたしにとっても現実に変わってきている。
東京都区内でも、冬場になって火災が頻発している。とりわけ首都圏直下型や南海トラフの震災が、数年以内に来ると言われて久しい。実際に災害が起こったときに、自分が本当に現場で役に立てるのか心配だった。しかし、この年齢ではあるが、微力ながら地域の防災に協力できることに誇りを覚えるようになった。
昨夜のことである。寿司ダイニングのすすむさん(金井進一さん)から、「eラーニングのコンテンツは、”ハンドブック”に全部書いてありますよ」というアドバイスをいただいた。そうなのだ。eラーニング用の動画を長時間かけて見るのはやめにした。文字を読むのを生業としていたわけだ。結果、半日をかけて消防団の仕事の全貌を把握できた。
事前に予想していなかった知識と、ハンドブックからの発見を以下で整理しておくことにする。自戒を込めてのことだ。わたし自身の心構えで、決定的に甘かったと感じた点がふたつあった。
第一に、災害時の出動のための準備不足である。そもそも、支給された本田消防団のリュックを、うっかり失くしてしまっている。このリュックがないと、必要な「もち物」を収納して現場に運んでいけない。災害出動時に、ヘルメットや携帯ラジオ、ペットボトルや非常食などを持ち運べないのだ。論外だった。
二番目は、災害時に起こりうる状況を、ハンドブックを通読するまでは、きちんと把握できていなかったことだ。救急救命措置の実際や、救助にあたるわれわれも団員も、心的なストレスに見舞われることなど、想像していなかった現実を知ることになった。
実際の状況が、ハンドブックの中に具体的に写真と図入りで描かれていた。eラーニングでの学習よりも、文章による詳細な説明の方が、逆にリアリティを感じることができた。
なお、想定外のことが書いてあった。海外からの武力攻撃の際にも、消防団は出動することが明記されていたことだ。
そういえば、たしかにそうなのだ。海外の軍隊から攻撃を受けて戦争状態になれば、災害時と同じ状況になる。首都圏などは当然のことながら、いたるところで火の粉を被る。1945年3月10日の東京大空襲。ウクライナと同じ事態に陥るだろう。
少しばかり驚かされた。北朝鮮やロシア・中国などを想定しているのだろう。消防団は、直接の戦闘員ではないが、支援部隊ながら軍隊に近い役割も任務として課されている。そのことが明記されていた。