ジェンダーレス・ファッションの広がり。ただし、課題は売り場構成にあり!

 昨年、ユニクロで水色のセーターを購入した。春めいた淡い色で、女性もののセーターだった。両サイドにスリットが入っているところが、チャームポイントになっている。定年後も気に入って、先々週になって寒くなったので、押し入れから取り出してきた。今年は、年末に向けて忘年会が復活している。アローズのセーターとユニクロの女子仕様のセーターを交互に着まわしている。

 

 気分が上がって楽しい。世間では、これをジェンダーレス・ファッションという呼ぶらしい。

 ユニクロが2000年ごろに華々しくデビューしてときは、男女共用のアウターを「ユニセックス」と呼んでいた。ジェンダーレスとは意味合いがちがっている。品質がしっかりして、誰でも着られるデザインのアイテムという意味で、「エイジレス」(年齢不問)というコンセプトも生まれた。

 ところが、ジェンダーレスの片方の意味合いは、男子が好んで女性ものを着ることとである。その逆に、男性ものが好んで着る一群の女性たちも存在している。わたしは、女性体型ではないと思う。それでも、若いころは、どちらかといえば、身体のつくり華奢なほうだった。

 大学のサークル(落語研究会)では、座興で演じる遊びの舞台で、しばしば女役を任された(恥)。卒業後に、クリスチャンに改宗した森君が男のヤクザで、わたしは相手役の娘になった。白粉(おしろい)など塗りたくると、まさに女子そのものだった(汗)。断っておくが、わたしには女装趣味はない!

 

 社会人になって、テニスを始めてから肩幅が大きくなった。テニスプレイヤーからマラソンランナーに転じてからは、今度は太腿が発達してきた。お尻の筋肉が、「先生のお尻、お馬さんのようにがっしりしてる」と、ゼミの女子学生たちからは、羨望のまなざしで見られるようになった。と、わたしひとりが思い込んで、悦に入っていただけかもしれないが、、、

 結婚しても、自分が着る洋服は自分で選んできた。そんなわけで、身体の筋肉が発達してきたので、女性ものの衣料品売り場からは足が遠のくことになった。例外は、ワコールなどの女性ものの下着の売り場だった。仕事で商品企画をやらざるを得なくなって、女子学生に同伴してもらい、女性ものの下着売り場をリサーチすることになった。

 そんな経験があったので、女性もののアウター(ニットやセンター類、細身のコート)などが欲しいと思うようになってはいた。

 

 それから30年後のことである。しばしば訪店するユナイテッドアローズの店舗には、男性の男性と女性の売り場に壁がない。自由に移動ができる。なので、自分のもの(男子用)を買うときは、女性ものも見ることが通例になっている。ユニクロでも、当初は男女両方の売り場が離れていたが、いまは境目が亡くなっているように思う。必ず、女性の売り場にも足を運んでいる。

 知らず知らずのうちに、意識することなく女性ものの売り場を歩いていることがある。件の水色のセーターも、ユニクロの店舗を徘徊しているうちに、偶然に迷い込んだコーナーで遭遇したアイテムである。少々恥ずかしかったが、男性売り場で試着してから購入を決めた。さすがに、フィッティング・ルームで女性用に入る勇気はなかった。

 女性ものを好んで選ぶわたしのような男性向けに、ジェンダーレス・ファッション特集が組まれたりしている。セーターやコートなどでは、同じジャンルでも女性もののほうが肌触りが良いように感じる。シルエットも優しいから、わたしには気持ちが落ち着く気がする。

 

 究極の問題は、売り場が男女で分かれていることである。わたしのような女性ファッション好きの男性は、女性ものの売り場に入りにくい。これは結構なハードルになる。何か良い方法はないものだろうか?

 こだわりのない性格である。羞恥心も、人よりは低レベルなのでわたしにとってはほぼ問題はない。しかし、同じ嗜好を持つ男性諸氏は、わたしのように堂々と女性ものの売り場に侵入する勇気はないだろう。売り場づくりで、解決方法を考えてみたいと思う。