連食障害(れんしょく しょうがい)

 農業の世界では、「連作障害」という現象が見られる。同一作物を同一の圃場で作り続けると、植物(穀類や野菜)が生育不良になったり、収量が減少する障害のことを指す。同じ作物を作り続けると、土壌の成分バランスが崩れるからだ。また、その作物を好む菌類や病害虫が、発生しやすくなる。

 

 ところが、麦や豆、ジャガイモなどうで見られるこの連作障害が、稲作では起きないことが知られている。稲作は、圃場で作り続けても収量が落ちない唯一の作物である。この現象は、春先から作付け後の田んぼに水を張ることで、土壌の中の栄養分が酸化還元されるからだと説明されている。農学者ではないので詳しい原理はわからないが、連作障害につきものの菌類や病害虫の発生が抑制されるからでもある。

 連作障害に似た現象が、食事(摂食)にもみられる。わたしはお寿司屋やお魚が好きで、ふだんからよく食べている。連日、食べ続けても飽きがこない。ところが、ステーキやとんかつ、チキン類は、連続して食べると飽きてしまう。野菜は当然のことだが、魚類も、毎日食べても何の問題もない。

 この現象を、わたしは「連食障害」(非連食障害)と呼んでいる。魚類について連食障害がないのは、もしかすると、寿司マニアのわたしだけではないかもしれない。経験的には、稲作で連作障害が起こらない理屈と類比して考えることができそうだ。以下では、この現象を推論してみたい。

 *わたしは農学者ではない。素人なので、この推論は間違っている可能性もある。

 

 近年、とりわけ牛肉や豚肉など、老人の健康にとってプラスと言われている。アミノ酸やたんぱく質、微量要素の鉄分などを豊富に含んでいるからだと言われている。日本人の寿命が延びたことの一因は、動物性たんぱく質の摂取と関係があるのはまちがいない。しかし、それとは逆に、肉食中心の食生活は、欧米人のように日本人も過体重(肥満)の原因になっている。

 連日、肉だけを食べ続けることに、わたしは抵抗がある。それに対して、魚類と豆類と野菜が中心の和食の場合は、連食障害が起こらない。それは、魚類と肉類の根本的なちがいから来ているように思う。先日、外部の講演で、牛肉の健康への効果を研究している学者(女子栄養大学教授)のかたと討論したことがある。

 そのときに、肉と魚では、老人の健康に対する効果はほぼ同じだとおっしゃっていた。両者の栄養学的な違いがどこにあるのかについて、明確な説明はなかった。もしかすると、魚類は海の中のプランクや藻類、小魚を食べて育つからだと考えられる。稲作の場合がそうだったように、海中で育つ魚類は酸化しない?からではないのか。

 推論が正しいとすると、海水と土壌中の酸素とのちがいに、その根拠がある可能性がある。などと妄想してしまった。