【柴又日誌】#75:(日本一運賃が高い!)北総開発鉄道線の通学定期が、一挙に70%も値下げになる。

 東京下町(葛飾区高砂)に移住したが、築35年の旧宅はそのままで残してある。研究室の本は、山崎先生の伝手で中国の四川大学に寄付できたが、40年間で集めた書籍や家財道具などのほとんどは、千葉県白井市に置いたままにしてある。大きな倉庫のような、贅沢な使い方をしている。

 

 二階建てのクリーム色の外壁で、見た目はそれほど古びてはいない。昨日のように、庭の雑草取りをして、アジサイやオリーブの枝を剪定してやると、新築の住居に見えないこともない。小川先生のインスタでご覧いただくと、外周りがすっきりした庭はまるで別荘のようにも見える。

 北総開発鉄道線の西白井駅から徒歩8分。京成線の直通電車で、京成高砂駅から西白井駅までは15~25分。DoorToDoorで40分もあれば、14畳の広々としたリビングのソファーに転がって、うたた寝をはじめることができる。この季節は、北の窓から南の庭まで風がすーっと通り抜けていく。転寝には最高の環境だ。

 とはいえ、39坪の総二階建ての住宅を維持するのは容易ではない。固定資産税や火災保険料は、毎年それぞれ数万円ずつを収めている。町内会費も継続して納付しているが、昨日は近所の人から、「住んでもいないのに、もうしわけないです」と恐縮された。トイレや排水管など、水回りも傷んできている。修繕はこれからが大変になりそうではある。

 

 一方で、定年退職の生活が一段落しそうなので、落ち着いたところでリフォームを考えている。誰かが白井の旧宅のことを、「近くの別荘」と呼んでいた。たしかに、小さな孫たちからすれば、ビニルプールを置いて庭で水遊びができる。冬には白鳥がシベリアから飛んでくる。ガマガエルやガチョウが、調整池の方からやってきて、庭の隅っこで遊んで帰っていく。

 家の前は6メートル道路だが、ほとんど自動車などはめったに通らない。夏になると、表の庭と道路で花火ができる。シャボン玉を飛ばしても、近所から文句は出ない。そもそも隣家でも、小さな子供たちがシャボン玉を飛ばしている。夏休みの宿題のために、特産品の梨の畑に入らせてもらって、わが子供たちはクワガタやカブトムシの幼虫を採集していた。

 良い環境で子供たちを育てたつもりだった。しかし、千葉ニュータウンの唯一の課題は、通勤通学定期が日本一高いことだった。

 

 昨日、旧宅の草刈りのために北総線に乗ったところ、車内のつり革広告を見て愕然としてしまった。良い意味のサプライズだった。北総線の運賃が値下げになるとは聞いていたが、それでもせいぜい5%とか10%だろうとたかをくくっていた。ところが、なんと、「通学定期運賃の大幅値下げを実施します。」とポスターはうたっていた。

 値下げは、2022年10月からなのだが、その値下げ幅がすごい。例示されていたのは、千葉ニュータウン駅発の新鎌ヶ谷駅までの通学定期(1か月)で、現行10,760円が3,640円に。▲7,120円の値下げである。これが、わが京成高砂駅までならば、現行14,350円が4,850円と、▲9,500円の値下げである。値下げの割合は約70%である。

 ちなみに、同じ区間(千葉ニュータウン発)の普通運賃は、新鎌ヶ谷までは現行580円が480円に、京成高砂までが780円が720円の値下げになる。普通運賃と通勤定期はそれほどではないが、なんといっても通学定期の値下げはドラスチックである。

 

 これを見て思うのは、わたしたちの子供たち世代が、ほとんど千葉ニュータウンに戻ってきていないという現実である。もしもではあるが、あと10年早く京成電鉄がこの決断(通学定期の大幅値引き)をしていれば、わが子たちの一人くらいは白井に戻ってきたのではなかろうか。

 子供たちの同級生のほとんどが、ニュータウンの圏外にいまは住んでいる。自分たちが親に迷惑をかけたという思いがあるからだろう。あの頃はわたしたちも、陳情の戦略を誤ってしまった。10月に実施になるように、通学定期だけでも大幅値引きをするように訴えかけたら、早期解決の糸口を見つけることができたかもしれない。

 もっとも、当時は仕事が忙しくて、運動の蚊帳の外にいたわたしが知らなかっただけかもしれない。いずれにしても、10月が待ち遠しい。というのも、残してきた旧宅をリフォームしたら、北総線の電車に乗る機会が増えそうだからである。