不思議で静かな東京マラソン2021

 東京マラソン2021を6時間超で完走した。ゴールで受け取ったメダルには、2021年10月17日と完走日が刻印されていた。そういえば、2日前に受付ブースで渡されたバッグには、2020年3月1日のメダルが封入されていた。一度製作したメダルは捨てるわけにもいかない。わたしたちは、幻のメダルを2個いただくことになったわけである。

 

 ゴールタイムは、生まれてはじめての6時間台(6時間)。35KM地点から、両足が痙攣しそうになったのと、足裏の豆が破れそうになって、完全に歩く決断をした。計画タイムの5時間30分をはるかにオーバーした。中間点までは2時間半を切っていたから、それほど調子は悪くはなかった。

 後半の20KMを自重したのは、今週末に最終講義があるからだった。マラソンはこの先も続いていく。東京2021が最後ではないから、次回以降にダメージを残したくなかった。こういう場面では、われながら、先のことを見通して冷静に振舞うことができる。

 今回で東京マラソンは12回連続、第2回を除いて13回目の完走したことになる。通算では、48回のフルマラソンの完走だ。あと2回で50回になる。今年度の神戸マラソンと横浜マラソンでこれは実現したいと思っている。ハーフを2時間以内でゴールできる練習に戻さないといけない。

 

 ところで、今回の東京は実に静かなマラソンレースになった。わたしがスローペースで走ったこともありだろう。ずいぶんと後方からの走行になった。沿道での応援がほとんどなかったのは、そうした要因もあるだろう。エリートランナーが走るときには、沿道に人が立っていたのかもしれない。

 とはいえ、日本人のランナーは実にまじめで几帳面だと思う。エイドステーションには、末尾の番号別にテーブルが用意されていた。自分のゼッケンの末尾のテーブルで、水やスポーツドリンクを補給する。そのときに、これまではカップなどは道路わきに捨てていたが、今回は、ダストボックスに投入するよう指示があった。

 ほとんどのランナーは、わたしもそうだが、きちんと用意されたごみ箱にカップを捨てていた。例外はほとんどない。また、スタータ時点でかぶっていた、ビニールの袋やかっぱを収納用のかご車に渡していた。いつものように、道路わきに捨てす人はほとんどいなかった。わたしも防寒対策で来ていた雨合羽は、かご車に放り込んだ。

 トイレも長い順番待ちだったが、文句を言う人もほとんどいない。むしろランナーが黙ってトイレ待ちをしているので、それは異様な光景に見えた。ほんとうに誰もしゃべっていない。

 

 東京2021は、無事に終わった。世界のランニング大会は、もうふつうに戻っている。しばらく中止や延期に追い込まれていたランニング大会も、東京マラソンが開催できたことで、以前のようなノーマルが状況に戻っていくだろう。

 コロナがもたらした二つの害悪は、マスク世界になったことで人間同士が言葉を交わさなくなったこと。コミュニケーションの障害が起こったこと。そして、お互いに表情が見えない状態で、言葉を交わさざるをえなくなったことである。どちらも、感染症が社会にあり方を変えてしまった。

 東京マラソンを完走で来たことで、3年越しでの42KMの「完全な完走」が射程に入ってきた。練習の途上で、ハーフマラソンをほぼ歩かずに完走できるまでもってくることができた。つぎは、ハーフのタイムを、1時間後半に戻すことである。

 本日の午後に、4月以降に開催されるいくつかの大会にエントリーする予定でいる。長い道のりをまた、はじめから再開することになる。42KMも遠かったが、これからの道のりもまた、相当に険しいだろう。