院生たちの卒論提出期限が、3日後の2月1日に迫っている。院生指導も最終年になる。今年は4人(+1人)の大学院生のお世話をしている。アイデア出しからはじまって、論文の構成や脚注の付け方まで、例年にもまして実に丁寧な指導ぶりだ。約30年間、一年も欠かさず、まじめに生徒指導に取り組んできた。
午前中に2人の論文(ほぼ完成形)のチェックを終えた。杉谷健太くんの「カイコ食用化プロジェクト」と浦上昌子さんの「宮崎県『へべす』のブランド化」の論文2本。
午後は、松尾啓子さんの「『街の書店』のこれから」と小平裕くんの「Safamii:花と緑の持つウエルネス効果を測定し個々人のQOL向上をサポートするサービス」の2本に、モンブランで「黒い赤ペン」を入れる。偶然でもなんでもないと思うが、現在、わたし自身が取り組んでいるテーマに関連するプロジェクトが多い。
農産品のプロモーション、花と緑の効用測定、昆虫食(代替蛋白源)、紙の書籍など。最後のゼミ生が取り組むテーマは、指導教授の好みを反映していておもしろい。誘導しているようにも見える。
ここ数年間では、本わさびやヴィーガン食、クラフトビールなどを、学生たちがテーマとして取り上げていた。卒業後に、自分のプロジェクトの成果を持って、実務の世界に飛び出していった学生も多数だ。その学生たちの未来に対して、退職してもわたしは責任を持つことになる。
今年の卒業生4人(+平石ゼミの小沼君)に対しても、わたしは責任を持たざるを得ない。学校を卒業しても、学生との関係が終わるわけではない。その先がまだ待っている。実務的に関係が続くだけではない。ビジネスパースンとして生きる過程で、わたしからのアドバイスが必要な卒業生もたくさんいる。
教育者・研究者として、わたしの助言を必要としている元院生も少なくない。大学院を卒業しても、精神的な支えを求められることもある。法政大学を退職しても、わたしの「元生徒指導」は続きそうだ。求められれば、使命をまっとうする気持ちではいる。
1992年の経営学研究科(夜間2年制)の大学院創設から、約120人の院生を指導してきた。残念ながら、その中の数人は卒業することができなかった。論文を書き終えることができなかったからだ。彼ら彼女らはとても無念だったはずだ。心を残して学び舎を去った数名のことをときどき思い出すことがある。
今年の5人は、おそらく無事に卒業できると思っている。いまの小川ゼミ生たちは、全員が診断士コースに属している。人生の選択で、一度休職や退職を選んできた学生たちである。卒業後の進路について、わたしはいまは何も知らされていない。
そうなのだ。学部のゼミ生たちの卒業後の進路についても、数人を除いてよくわかっていない。就職する先の会社や所属についてあまり気にならない性格なのだ。無関心といえばそれまでだが、困ったときや迷ったときに、わたしに連絡をすればよい。そう思って、学生を社会に送り届けてきた。
さて、午後の二人に論文チェックに取り掛かることにしよう。ここまでくると、あとは形式と見栄えが問題になるだけだ。学生たちは、最終コーナーを回りかけている。目の前に、すでにゴールが見えてきている。がんばれー。ファイト。