最終講義で、大学院の卒業生たちから、たくさんの花束をいただきました。

 101教室で、午後13時10分から、最終講義(イノベーター育成セミナーⅡ)を行いました。ゲストスピーカーは、友人の土屋裕雅さん(カインズ会長)にお願いしました。1990年代の初めから大学院で教え始めたので、30年間で1000人強の社会人学生を教えてきたことになります。

 

 1992年に、経営学研究科の夜間大学院(経営学部の2年制ビジネススクール)を設立しました。そして、22年後の2004年には、専門職大学院の制度発足に合わせて、日本ではじめて、本格的な1年制のビジネススクールを開設しました。初年度は、募集定員(60人)の半分も埋まらず、大苦戦のスタートとなりました。

 急遽、3年目(2006年)から「MBA特別プログラム」(中小企業診断士コース)を一年制コースに併設しました。同時に2年制のコースもスタートさせました。ところが、60人の定員が埋まるようなったのは、「GMBAコース」(外国人向けに英語で教えるMBAプログラム)が発足してからでした。10年ほどは、学内では肩身の狭い思いで過ごしました。

 中小企業診断士の2次試験免除プログラム(大学院内では「M得」と略称)は、近年は30人を超す学生が入学する人気コースに育っています。いまでは、イノベーションマネジメント研究科の屋台骨を支えています。このプログラムは、実はわたしが「2重籍」(経営学部と専門職大学院のダブル所属)のころに、ある日、一晩で考えてついたアイデアでした。

 

 当時、生産性本部や人材派遣のパソナが、半年で診断士の資格が取れる「2次試験免除プログラム」(養成課程)を運営していました。その診断士養成プログラムに加えて、MBA(経営管理修士)も取得できることを売りにしたのが、法政大学のイノベーションマネジメント研究科のM特プログラムだったわけです。

 1年間で2つの資格が取れるならば、会社を休職したり、いったん会社を辞めて大学院に入学して来る学生がいるのではないかと考えてのことでした。このプログラムへは、地方銀行や信用金庫など、企業派遣で上京してくる学生も少なからずいます。生産性本部やパソナなどの養成課程を選ぶ学生と、法政のイノマネに入学してくる学生では、復職後を考える意識にやや差があるようです。

 このアイデアを思いつかなければ、イノベーションマネジメント研究科は、これまで存続できていなかったと思います。困ったときには、なんとか思いつくものです。もうひとつの成功要因は、経営学研究科(修士課程)で院生だった並木雄二さん(当時は郵政改革の仕事をしていて、本人も中小企業診断士)を客員教授として招聘した人事でした。並木教授が中心になり、プログラムを立派に育ててくれました。

 

 大学院創設後の約10年間は、現研究科長の藤村博之教授などとともに、創設者のひとりとしてわたしも大変に苦しい思いをしました。いまは定員60人が埋まってますが、法政大学の本体が数年前から赤字に転落しています。大学院には、この先はさらに経営努力が求められています。そのタイミングで、この大学院を去ることになります。

 昨日の最終講義では、60人ほどの学生に向かって話をしました。100分の講義途中で、走馬灯のように苦しかった30年間を思い出していました。1992年に経営学部に社会人向けの大学院を創設したとき、専攻主任(ビジネススクール校長)だったわたしは、前厄の41歳でした。

 いまだから言えますが、学部でもっとも若い教授(わたし)に対して、やっかみもあったのでしょう。「若造が先走って、市場性があるかどうかわからないビジネススクール事業に乗り出そうとしている」など、お手並み拝見と静観している教師陣もいました。経験したことがないプレッシャーで、胃壁に穴が空きました。はじめて胃潰瘍の診断が出て、生まれてはじめて胃カメラを飲みました。

 それもいい経験ではありました。ただし、その後は少し調子に乗って、本来的には学者としてやってはいけない大博打に出たことも事実でした。総長選挙で清成先生を総長に担いだり、たくさんの学部や大学院の創設に関わったことは、いまは昔の出来事です。政治活動(キングメーカーの仕事)は、それはそれで楽しかったですね。

 

 さて、昨日の講義が終わった後、元院生から大きな3つの花束をいただきました。それぞれ卒業年度が異なる元院生グループから、30年間の仕事を終えた、わたしへのプレゼントでした。ふだん花の業界にいますので、花を贈ったり、逆に贈られたりすることも少なくありません。

 でも、昨日の卒業生から贈られた豪華なブーケは、それはまた格別でした。さきほど、インスタグラムに3タイプの花束をアップしました。卒業生のみなさん。心のこもったブーケをありがとう。最後のセミ生4人の論文指導がまだ残っています。2月2日の論文提出まで、あと4週間ほど。

 これが終わると、わたしも教員として「卒業」になります。長い間、お付き合いいただき、ありがとうございました。みなさんからいただいた花束は、わたしにとって勲章です。

 

*小川のインスタグラム(最終講義の最後、持ち帰った花束)

https://www.instagram.com/wanwanwansuke/p/CYftclcF914/?utm_medium=copy_link