梅雨どきの雨は、花屋にとって鬼門である。傘で片手がふさがってしまうので、もう一方の手に鞄(バッグ)でもっていようものなら、花屋に立ち寄る客がいなくなってしまう。聞いたところによると、「晴れの日に比べて、雨の日は売上が半分に落ちてしまう」。ところが、karendoの場合、アンブレラブーケを発売してから、雨の日でも客数が落ち込まなくなった。
「花恋人」(本社:奈良県橿原市)の野田社長と今朝がた、短い会話をlineで交わしていた。わたしからの質問は、その後のアンブレラブーケの売れ行きのことだった。フレッシュなブーケ(生花)を、花柄の傘に添えて送ったところ、家族(妻と義娘)から思いのほかに喜ばれたからだった。
野田さんによると、「(アンブレラブーケの)認知が広がってきて、店頭で『この傘にこのお花を入れてアンブレラブーケでお願いいします』という注文が増えてきました」。また、スタッフが、天候を強く意識するようになった結果、「来週雨が多そうなので、アンブレラブーケの発注をふやそうかな?」という意識が生まれてきているとのこと。
通常は、雨の日は来店客が減ってしまうので、花屋の商売は守りに入ってしまうものである。ところが、karendoに関しては、「可愛い傘が置いてある店」(花屋であることは後づけで知る?)という認知が広がっているらしく、店員の意識も「雨の日は来店客が増える日」に変化している。
雨の日に従業員のモチベーションがアップする現象は、従来の花屋の常識を壊してしまうかもしれない。「雨の日に売上があがるのか?は、データで裏付けられているわけではありませんが、駅立地ではかなり売上が上がる感じがします」(野田さん)。
わずかひとつのカテゴリー(アンブレラ)を取り扱うことで、来店客のニーズが変わってしまう。それに付随して、売れる花束や商品が変わる可能性に気づけば、さらなる商品開発の方向性が見えてくるのかもしれない。
たとえば、雨の日のブーケには、青系統のアジサイが似合うとか。バラも色の淡いパステルピンク系のものが勧めやすいとか。傘以外に雨を楽しめるアイテム、たとえば、朝顔の苗や風鈴を店頭に並べるおいておくとか、、、、
そのむかし、「ウェザーマーケティング」(お天気マーケティング)という概念を提唱した人がいた。「ウェザーニューズ社」(本社:千葉県幕張)の創業者、石橋博良社長(故人)がそのひとである。後楽園球場(東京ドームになる前の屋根なしスタジアム)」の弁当の発注量を予測することから始まった会社である。
この考え方は、花屋でも応用ができる気がする。フラワーショップにとって、ビジネスに不利と思われていた雨が、新しい市場機会を提供している。もはや雨は鬼門ではない。常識は破壊されつつある。