ノンアルで、下町の飲食店を巡る

 友人の飲食店が、3度目の緊急事態宣言で苦境に陥っている。感染者が目に見えては減っておらず、とうとうお酒が提供できなくなった。アルコールなしでは客が来ないので、休業する店が増えている。これからさらに二週間強、月末までの5週間を完全に休業する店も多い。そんな中で、ノンアルコールで8時まで営業を続けている店が出てきた。

 

 わたしの友人たちのお店は、江東区や葛飾区にある。まれに千代田区や新宿区にもあるが、わたしの自宅はそこからは遠い。とりあえずは、近場の3店舗を訪問することにした。もちろんノンアルコールでの飲食である。

 最初の訪問は今週の水曜日(5月12日)。場所は、江東区牡丹にある秋田料理の店「男鹿半島」。山菜の季節になったので、先日、「こごみやわらび、うどなどが入荷してます」と写真付きでメールが飛んできた。山菜の天ぷらの写真で、とてもおいしそうだった。宅配をしてくださるそうだが、このところ一年間、まったく行けていない。そこで、お店に直接出向くことにした。

 食事内容は、インスタグラムにアップしてある。解説付きの写真を見た友人たちは、その昔にわたしと一緒にきりたんぽ鍋をつついたことがある仲間たちだ。「おいしそう!うらやましい!」と返事が戻ってきた。山菜を肴にもちろんノンアルコール。大将や奥さんと話し込んで、1時間10分で退散した。今月の二勝目である(アルコールを抜くと一勝になる)。

 

 昨日は、大学院に「(株)レッグス」の谷丈太朗常務をお迎えした。マーケティング論の授業内講師である。谷さんは、これで三年連続の登場になる。お礼もかねて、土手のフレンチ(グルーブ・デュモンド)にご招待した。13時からのランチタイムである。谷さんは前菜で牛タンを頼んでいたが、「白ワインと会いそうですね」とアルコールが欲しそうだった。

 それはそうだろう。100分授業で喉が渇いたはずだ。しかし、このご時世である。申し訳なしとは思ったが、ごひいきのフレンチレストランと言えど、ノンアルでランチを済ましていただくしかない。わたしも前菜がサーモンでメインは鯛のムニエルだったが、ぐっとこらえてノンアルで45分間を通した。

 谷さんは次に用事があったので、そもそもワインを飲むことはできなかったはずだ。来たついでのことがある。確かにアルコールが入らないと、食事の時間は短めになる。男鹿半島のときもそうだった。考えてみれば、酒を抜くことができるのだから、それはそれでいいことかもしれない。

 

 最後は、本日の夜だった。午後4時からMPSのオンラインセミナー(母の日の総括)があった。一時間半で終わることが分かっていたので、5時半から6時ごろに、寿司ダイニングすすむさんにお寿司を食べに行くことにしていた。東京の飲食店では、アルコールを出せないまま、しかも8時閉店が続いている。その制約に嫌気がさして、高砂あたりでも休業を継続する飲食店が多い。

 すすむさんのところは、その例外である。インスタに短いコメントと豊洲の魚市場の写真が掲載されていた。すすむさんが火曜日に市場に出たときの写真である。

 本日、カウンターに座って、すすむさんから聞いた言葉である。「飲食はそれでも休業補償がもらえる。だけど、仲卸の方や生産者には何の保証金も出ない。わたしたちが(魚を)買うことでやっと商売がなりたつ」(すすむさん)。

 というわけで、大方が休業を継続する中で、寿司ダイニングは店を開ける決断をした。「儲けがどうこういうより、市場や生産者の方に申し訳ないと思った」(すすむさんの言葉)。

 

 わたしは、いつものカウンター席に座った。サントリーのオールフリー(瓶)を頼んで、つまみに頼んだ「平貝と白魚とタコの三点盛」を肴に、3本を瞬く間に飲み干した。あとは、生鯖、中トロ、卵、アナゴ、すじこ巻、ヤマゴボウ巻きを食して、あがりを頼んだ。

 お代は、〆て5,100円也。「アルコールが出せないと客単価が稼げないでしょうね」(小川)。その通りになった。でも、すすむさんは、昼のランチと夜の商売を月末まで続けるつもりらしい。今夜は、わたしが6時に顔を出した時点で1組。わたしと一緒に座っていたのが2組3人。

 たしかに、女の子のアルバイトを一人使って、元が取れるかどうか?採算ラインぎりぎりの集客だろう。それでも、市場人と漁師さんのために、営業は続けるつもりらしい。そんなお店は、下町にはまだまだありそうだ。

 ついでに、わたしは、お酒抜きに夕食を続けて、健康になれるかもしれない。ノンアルの飲食も悪くはない。酒好きのわたしだから、毎日だと続けることはむずかしいだろうが。