対論2021「花の消費喚起」磯村信夫(大田花き)VS小川孔輔(法政大学)

 昨日(4月4日)発売の『日本農業新聞』(10面)で、大田花きの磯村信夫さんと「花の消費喚起」というテーマで対論をさせていただいた。農業新聞の柴田記者が、それぞれの事務所(わたしの場合はJFMAの麹町オフィス)を訪問して、インタビューを記事にまとめてくださった。

 

 磯村さんの主張は、①日常使いの需要醸成と②一気通貫の市場改革の2点。わたしの論点は、③コロナ下で需要の二極化が進展する、④ホームユースについては価格と鮮度の改革が必要。そのために、⑤「FLS」(Fresh, Low-cost, Speed)を実現する物流改革が求められるの三点。

 以下に、わたしのインタビュー記事をそのまま引用する。実際の記事は、少し表現が異なっている部分もある。ちなみに、先月29日に、インタビュー文中にあるように、「(株)FLS」(本社:千代田区麹町)が発足した。花の物流改革のための会社である。

 

 

 対談2021 「磯村信夫VS小川孔輔」『日本農業新聞』2021年4月4日(日曜日)
 小川孔輔(法政大学経営大学院)インタビュー(柴田さん編集) V1:20210331

 

 <見出し>物流改革し早く安く

 新型コロナ下で制限されていた人の移動や催事などが動き出し、今は消費の〝マグマ〟がうごめいている状況だ。自粛期間中に家に花を飾る人、対面で会えない分、少し気張った花贈りをする人が増えた。記念日など贈り物としての花の価値が見直され始めた。こうした機運を逃さないことが大事だ。
 今後、食べ物と同じく花も消費者にとって値ごろ感ある商品か、ニーズにはまる高単価商品かの二極化が進む。前者は100円ショップの発想で、コストダウンを徹底する必要がある。「鮮度よく、安くて、はやい」でなければ家庭需要は伸びず、取扱量がなければ生産者の手取りも上がらない。
 まずは物流の改革が必要だ。運送会社にとって花は箱が不定形でかさばり、鮮度保持に気を遣うなど運びづらい。産地からすれば運賃が高く、市場手数料もかかり、出荷のたびに経費がかさむ。この課題を解決するため、業界関係者が連携して「(株)FLS」(フレッシュ・ローコスト・スピードの意味)という組織を立ち上げ、効率よく産地から消費地までつなげる取り組みを始めた。物流は速く安く商品が届く一方で、小売りでしっかり競争してもらう仕組みで、情報と物流のプラットフォームづくりが肝要だ。
 妥当な価格のものを全国的な価格差がなく流通させることが望ましい。それは加工食品の流通に近づくことで、産地の手取りも安定し、労働時間も短縮される。コンスタントに売れる日常使いの拡大は、産地の経営改善や安定供給につながる。
 小売りの商品開発も期待される。コロナ下で値ごろな花束の定額販売や、サブスクリプションサービス(定額課金)へ参入し、顧客をつかむ企業が現れた。

 生花を日用品や雑貨、食品と合わせて提案する「異業種コラボ」も進む。加工業者が最終製品を作る技術も進化している。花へのニーズは強く、コンビニエンスストアでも売れるパッケージに仕立てれば、さらに消費拡大の余地が生まれる。