【柴又日誌】#42: 水と緑のある街、葛飾区

 引っ越してうれしいと思ったことの一つは、都内で最大面積の水元公園(約93ヘクタール)が近くにあることだった。自宅から距離にして約4KM。自転車で約15分、歩いて約40分。四季折々に花が咲き、江戸川の遊水池にもなっている水辺には、天然記念物のカワセミやマガモが生息している。この自然の豊かさは、移住して生活をはじめてみるまではわからなかった。

 

 腰と膝を痛めてからは、リハビリのために電動アシスト自転車に乗って近所を散歩している。インスタグラムに写真をあげるのが趣味になっている。近くの公園で、写真を撮るために休憩することが増えた。ほとんどの公園には桜が植わっている。今の季節は、近所の人たちが集って満開の桜を愛でている。

 この一か月で、ずいぶんと葛飾区内の公園を「ベロスター」(Panasonic製の電動アシスト自転車)で巡っている。リハビリのためにサイクリングをはじめてから昨日まで、自転車で走った距離は200KMを超えている。2月は81.9KM、3月は昨日まで123.7KMである。

 自転車で走っていると、以前から思っていた通りで、葛飾区内には公園がとても多いことがわかる。木々の緑と水辺の自然に恵まれているのだ。

 

 東京都は毎年、『公園調書』を発表している。葛飾区は公園が多いのではないか?わたしの皮膚感覚である。それが正しいかどうかを、公園調書で確認してみた。最新版は、令和2年3月に刊行されている。公園に関わるデータ集で、ネットから種々の情報を拾うことができる。

 調書をめくってみると、区民一人当たりの公園面積は、4.60m2/人。23区内では、江戸川区(4.96m2/人)に続いて、葛飾区は第2位である。ちなみに、最下位は豊島区(0.63m2/人)で、22位は中野区の1.30m2/人となっている。なんとなくそれは直感でわかる。

 数の上では、葛飾区内の区立公園は153か所である。23区内では、葛飾区の公園数は中位である。しかし、ひとつひとつの公園面積が大きいのが特徴だと思う。公園の数はそれほど多くはないが、その割に子供たちが遊べる面積が大きそうだ。これも皮膚感覚である。孫たち(5歳の男の子と2歳の女の子)が、母親の自転車に乗って公園巡りをしているのを見ている。普段からの観察結果である。

 これまで11回の引っ越しを経験して来た。住居の近くに大きな公園があることは、小さな子供を育てるのに、または老人が散歩をするのにとても重要だと思っている。引っ越してきてすぐに、都心や西側の区にくらべて、葛飾区は住まいの近くに公園がたくさんあるように感じた。

 

 自宅から自転車で行けるところに、大きな区立の公園が数か所ある。それに加えて、自宅の目の前には、遊具が設置されている住吉児童公園(遊園)がある。この場所に、次男家族と二世帯住宅を建設するための必須条件の一つが、近くに(歩いて2分の距離)小学校があることと、子供を遊ばせられる公園があることだった。

 この場所(高砂8丁目)は、特急電車が停まる京成高砂駅から歩いて4分のところにある。駅から近いという条件をクリアしてくれただけではない。少し足を延ばせば、自転車で10分のところに東京理科大の葛飾キャンパスがある。新しいキャンパスなので、校舎の配置がゆったりとしている。周りを取り囲んでいる芝生の庭が広い。芝生の上を裸足で歩くことができるだけなく、凧揚げができるほどの広さがある。

 わが家から理科大のキャンパスに行く途中に、自転車で5分圏内に葛飾区立の交通公園(新宿地区)がある。コロナのためにいまは走っていないが、子供さんは園内を走っている列車に乗ることができる。そこから10分もあれば、江戸川の河川敷に到達することができる。河川敷はよく整備されていて、自由に遊べる公園のようなものだ。

 野球場やサッカー場を利用しないくても、江戸川沿いの土手をウォーキングすることもできる。サイクリングをしている人も多い。その先に、都内最大の面積を誇る水元公園がある。江戸川を渡って千葉県側に渡れば、矢切の渡しがある。休日ともなれば、10人乗りの渡し舟が対岸まで人を運んでくれる。

 

 二年が経過して、ようやく葛飾の生活にも慣れてきた。思いのほか、この土地での生活が快適なのは、公園の緑と河川や沼地の水が豊かだからだろう。二台保有していた自動車を軽自動車(ダイハツ・コペン)一台にして、ホンダのCR-Vは神戸に移籍させた。それでも不便を感じないのは、移動手段が徒歩と自転車で十分だからだろう。

 少し前までは、毎日のように5~10KMを狂ったように自分の足で走っていた。いまは遠くまで、そして時には対岸の埼玉県まで、鰻(三郷市、川魚料理の根本)を食べに自転車を漕いでいる。自転車で通る水元公園は、東京都と千葉県と埼玉県に接する広大な「三角地帯」にある。

 水元公園は、都立公園ではあるが、交通のアクセスがあまりよろしくない。そのため、主たる利用者層は、葛飾区民やその周辺の区民、あるいは対岸の埼玉県三郷市や吉川の市民に限られる。しかし、そこを訪れる人は、昔から残っていた様にも見えるセコイアの植わっている大自然の中を歩いていくことになる。

 実際は、戦後に植林したものだが、セコイアの生育スピードが速いので、昔からある自然だとかんちがいするのだろう。そこでは、ゆったりとした時間が流れている。たくさんの種類の野鳥が舞う公園だ。住んでみないと、葛飾区の良さはわからないかもしれない。この街に住んでここを訪れる市民は、密かな贅沢に浸ることができる。しかし、その贅沢さの加減を、あまり他の区民には教えたくないように思っている。

 こどものころに思ったものだ。自分だけの秘密基地。しかし、ここは秘密基地にするには空間が広大すぎる場所だ。