日経BP社から、本日(3月22日)、鎌田由美子著『「よそもの」が日本を変える』が発売になりました。以前に、『エキュート物語』を出版していますが、ご本人に言わせると、「最初の本はインタビューで構成したもの」だったそうです。事実上、鎌田さんの処女作になります。
鎌田由美子さんとは、17年前の2004年に、日本ショッピングセンター協会の講演会でお会いしました。わたしが司会者で、鎌田さんが講演者でした。その翌年の3月に、エキナカの言葉を生み出した「エキュート大宮」が開業します。
そして、エキュート立川、エキュート品川と続くエキナカ旋風を巻き起こします。東京駅のグランスタや地下鉄のエチカなど、エキナカのモールが隆盛を極めます。その火付け役が鎌田さんでした。
エキナカの事業担当の後で、鎌田さんは、本体の事業創造室で、青森のシードル工場(A-FACTORY)や地方産品を駅コンコースで販売する「のもの」の立ち上げます。在職25年、惜しまれてJR東を退職。松本晃会長(当時)のカルビーに執行役員として転職されました。
その後は、自身で「ONE・GLOCAL」を創業。地方産品の発掘と関連事業の開発に携わります。同時に、去年までは、イギリスの美術系の大学院で学ばれています。帰国して最初の仕事が書籍の刊行でした。
先ほど、鎌田さんの書籍は読了しました。皆さんも、ぜひご一読ください。いろんな読み方ができて、面白いです。ローカルの事業を活性化するには、「よそもの」(異質で異能な人材)が必要であり、それはなぜなのかをご自分の経験から説得的に述べています。成功のヒントは、日本の「田舎」にある素材をうまく発掘することと、よそものの知恵を活用することだという主張です。
その発掘の仕方を、鎌田さんの経験から説明しています。内容的には、ご本人の「わたしの履歴書」になっています。書評は、いずれきちんと書かせていただきます。
本書をぜひとも読んでいただきたい方は、これから地方で農業と食ビジネス(食品加工業)、および観光開発に関与する方たちです。地元で事業を創造してしていく方と、外から移住(移動)してローカルのビジネスに加担する人たちです。
ここ数年は、わたしも農業と食品加工業を取材して歩いています。本書で取り上げられている事業主体や人物はかなり重なっています。ご本人たちを知っているので、鎌田さんの持論が(困難も!)痛いほどわかります。そんな風に、少しだけ批判的に読んでみてください。
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*日経BPの内容紹介記事を添付します。
「ONLY、OR」から「AND、WITH」の時代へ
コロナ禍で日常生活や働き方が激変し、心のどこかで「これまで通りの生き方で本当にいいのか」と悩んでいる人も多いのではないだろうか。ニューノーマルは見たことのない世界ではなく、「デジタル化」「多様性」「環境意識」といった後回しにしてきた問題が目の前に突き付けられただけ--。JR東日本でエキナカや地域活性化を成功させてきた著者が、「『What if?』という自問自答が必要」「仕事と生き方は融合していく」「サステナブルが日常に」など、個人や企業の「これからの生き方」を提示する。
アフターコロナの世界では古くからあるものづくりや文化に恵まれた「地域」に大きな可能性があり、そのカギとなるのが「よそもの」だという。テレワークの普及や副業解禁で都心のビジネスパーソンが「よそもの」として地域のものづくりやビジネスに参画し、マーケティングやマネジメントの知見を持ち込むことでシン・チホウ(新・地方)が生まれるというのだ。本書では著者が地域の1次産業の可能性に目覚めたきっかけとなった青森のシードル工房「A-FACTORY」をはじめ、鹿児島の超高級リゾート「天空の森」、「小さくて強い農業」を提唱する茨城の「久松農園」、英国南西部ウエールズにある古書を観光資源にした町「ヘイ・オン・ワイ」などの事例を紹介している。
「私自身も『よそもの』として生きてきた」という著者の体験談も読み応え十分。民営化直後の文系女性1期生としてJR東日本に入社し、鉄道事業を経験せずにエキナカや地域活性化プロジェクトを立ち上げるなど、新規事業のオンパレード。49歳で上級執行役員としてカルビーにヘッドハンティングされるも、「好き」という気持ちが先に立って失敗した経験も。極めつけは50代半ばでの起業と、英国美術系大学院への留学。デジタルネイティブ世代に交じり、あらゆることがオンライン化された手続きや「生き物の動きをロボットで表現する」授業などに四苦八苦した。これらの経験を通じ、現代は二者択一の「ONLY、OR」ではなく、やりたいことをいくつも選べる「AND、WITH」の時代だから、勇気を持って一歩踏み出すことを提案する。
≪目次≫
【まえがき】 「よそもの」がシン・チホウを生む
【1章】ニューノーマルの世界は10倍速で訪れた近未来の姿にすぎない
【2章】仕事と生き方は融合
【3章】サステナブルが日常に
【4章】消費者の意識が変わった
【5章】地域のものづくりにチャンスあり
【6章】 「よそもの」が観光も変える
【7章】 「よそもの」を楽しむ
【あとがき】