リハビリを兼ねて、新宿伊勢丹地下1F「氷室豚」の売り場へ

 『食品商業』の記事執筆のため、昨日は新宿伊勢丹まで出かけた。足と腰の調子はいまいちだが、氷室豚のコーナーに来店するお客さんを観察するためである。夜19時までの時短営業で、食品売り場のショップはどこも商売がそうだ。午後2時半時点で、フロアにいるお客さんはまばらだった。それでも、氷室豚のコーナーには、20分ほど観察している間に5組ほど来客があった。

 

 前日に、栗原大専務((株)クリマ)さんに伊勢丹の店内状況を電話で伺っていた。昨日、店長さんは不在だったが、女性の販売員さんに立ったままヒアリングをさせていただいた。さすがに緊急事態宣言が発令されてから、売り上げは落ちているとのこと。平日の来店客は60人ほどで、週末は100人を超える数字になっているらしい。

 わたしが観察している時間帯(14時~)に、接客の様子をみせていただいた。半分は常連さんのようだった。コーナー展開をしてから3年ほど経過している。それなりに固定客はついていると見える。豚肉の氷温熟成期間が「14日」のものと「30日」と、二種類ならんでいる。常連さんとおぼしき中年女性は、迷うことなく30日のほうを手に取ってレジにもっていった。

 フリーのお客さんが半分のようだ。伊勢丹の地下食品売り場にある精肉コーナー(肉売り場だけで5店舗ほど入店)にやってくるお客さんは身なりがよい。肉やハムなどを目的買いで来ているから、購買動機ははっきりしている。それでも、やはり接客がポイントになる。氷室豚は、説明しないと商品の良さがわからない「説明説得型」の商品である。

 

 氷室豚は、2018年に日本ではじめて、機能性食品として認定された「豚肉」である。氷温(氷点下0-4℃)で、豚肉を熟成させると、旨味の成分であるグルタミン酸が2倍に増え、コレステロール値を下げる効果があるとされるリノール酸やオレイン酸が増す。

 また、口どけの良さを示す脂肪の融点が39.7度から35.1度に下降するため、脂の甘さがより感じられる。この効果は、わたしが実際に氷室豚を食して実感している点でもある。さらにいえば、昨日も伊勢丹で購入したバラ肉でしゃぶしゃぶを食べたが、豚肉からほとんどあくがでない上に、独特の臭みがほとんどない。

 ちなみに、氷室豚に機能性表示が許されているのは、機能性関与成分としての「イミダゾールペプチド」の主成分(カルシノシン・アセリン)である。この成分には、①疲労軽減と②記憶力の低下を防ぐ効果があることが報告されている。

 

 氷室豚の説明が長くなってしまった。店頭観察の結果は、伊勢丹ドア(伊勢丹が運営する食品ブランド)のコーナーで、氷室豚が定着していることが確認できた。商品ラインナップも、豚の精肉から、加工品(ハンバーグ、ハム、西京漬け、冷凍とんかつなど)に広がっている。

 それでも、店頭の売れ筋は、100グラム650円の豚ロースと、わたしが購入したしゃぶしゃぶではあった。品ぞろえも豊富で、100グラム単位の個包装で販売されている。この点が、デパ地下を利用する富裕層や、健康に関与が高い若い女性の間で固定客が増えてる理由のようだった。