【お待たせしました!5月には刊行】小野・小川編著+森川著(2021)『サービスエクセレンス』生産性出版

 書籍の構想から約10年、企画開始から3年の歳月が流れている。仲間内では「JCSI本」と呼ばれている本の正式な書名は、『サービスエクセレンス』。無事に5月には刊行できそうになっている。わたしの担当分は、「はじがき」と「序章」である。ほとんど(1章~9章)のページは、青学の小野さんが執筆している。

 

 わたしの役回りは、全体の編集作業が主である。さきほどまで、序章の「第4節」(~第8章まで)を書いていた。この部分は、書籍が誕生する背景と、書籍全体の要約である。本の内容を整理して要約するだけで、約10ページ分になる。なお、森川さん担当分(10章、11章)の原稿は、わたしがリライトするお手伝いをさせていただいた。

 小野さんの執筆分については、第二部の構成を練る際に、概念の説明やドラフトをわかりやすく伝えるための書き方について、アドバイスをさせていただている。編集者的な仕事である。また、第一部と第二部の要約をすることで、小野さんの担当部分をわたしなりに再解釈することができた。

 その狙いは、本書を読むときに、読者に「序章で討ち死に」させないためである。本書のように、ボリュームが400頁近くになってしまうと、しばしば読者は、序章の20ページを読み終わらないうちに表紙を閉じてしまう。せめて、第一部を読み切って欲しいと思ったからである。

 そのように願うとともに、序章を読めば、全体として何が書かれているかを速攻で知ることができる。その仕掛けをしたつもりである。

 

 ここで、わたしの担当部分(序章)の「第4節のはじめの部分」を、チラ見していただくことにしたい。編集担当の村上直子さんには、この程度ならば怒られないで済みそうだ。ぜひ購入して、「CSIとSQIによるサービスエクセレンスの実現」(BY JCSI)にチャレンジしていただきたい。

 

 

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小野・小川編著(2021)『サービスエクセレンス:日本版顧客満足度調査(JCSI)、ガイドブック』(生産性出版)

序章「本書の狙いと概観」(小川担当)+4節   (V7:20210305)

  

(前略)

   

4 本書の構成と概要

 <当初の企画案と改訂>
 本書は、JCSIの「ガイドブック」としての活用を念頭において、全体を3部構成としている。企画当初の構成案では、第1部を「定期健康診断」、第2を「問診力(精密検査)」、第3部を「推進力(治療)」とする枠組みを構想していた。
 JCSIでは、各社の顧客満足度などを年1回調査している。顧客分析の中心となるCSI(顧客満足度指数)やSQI(サービス品質指数)は、企業が提供しているサービスの「健康度指標」である。第1部を「定期健康診断」としたのは、年一回の健康診断で、視力や聴力、血糖値などの変化を見て、自らの健康を定期的にチェックするのと似ていると考えたからである。第2部の「問診力」では、健康診断のデータが正常値から外れた場合、精密検査で詳しく状態を診断するフェーズに進むことになる。そして、第3部「推進力」では、診断された病状に対して、治療や手術で健康を回復させるプロセスを頭に置いてのことだった。

 しかし、実際の執筆が進んでいく段階で、診断と治療のアナロジーはいったん捨てることにした。執筆された原稿の内容が、健康診断の比喩とややそぐわなくなってきたからである。
 著者たちで相談した結果、つぎのような3部構成とすることにした。第1部「CSIのコンセプトと方法論」、第2部「顧客満足-利益連鎖の診断」、第3部「CX戦略への組織的推進」。もちろん、当初の枠組みを放棄したわけではない。健康診断のアイデアは随所に残してある。たとえば、第2部で登場する「CSI診断」「SQI診断」などのコンセプトは、健康診断(CSI)や精密検査(SQI)としてデータの使い方を彷彿とさせるものではある。
 以下では、本書の内容を3部に分けて要約することにしたい。

 

<第1部:概要>
 第1部「CSIのコンセプトと方法論」では、JCSI(日本版顧客満足度指数)の基本的な考え方と方法論を紹介する。
 第1章「顧客視点のサービスエクセレンス」では、CSIのコンセプトが、従来のブランド調査やCS調査とはどのように異なっているかを説明する(第1節)。CSIは、ブランドイメージでも、格付けでもない。CSIの際立った特徴は、企業が顧客の理解と共感を得られる卓越したサービスが提供できているかどうかを、定量的に測定・診断できる指標だという点である。そのために、顧客マネジメントの課題を、<レベル1:不満と苦情への対応>から<レベル5:多様な顧客体験とエンゲージメント>まで5つに類型化する(第2節)。

 顧客中心主義の達成度(CSI)は、企業にとって重要な2つの経営指標に反映される。2つの指標とは、市場シェアと企業業績(売上高、利益、客数など)である。われわれの発見は、概して「CSIと市場シェアは逆相関する」というものであった。CSIとシェアが逆相関するという関係がなぜ観察されるのかは、「市場のジンクス」という概念で説明することができる(第3節)。もう一つの発見は、「CSIと業績の動きが時系列的に連動している」という分析結果だった(第4節)。その証拠となる3つの事例(マクドナルドのV字回復、エアライン業界の経営破綻、テーマパークの混雑度と業績の関係性)を章の最後で取り上げる。

  

 第2章「JCSIとは何か」では、JCSIの枠組みと活用上の留意点を解説する。JCSIには、3つの大きな特徴がある。基本コンセプトとして、①累積的な顧客満足を測定していること、②「共通な顧客満足度指標」で業界横断的に比較できること、③顧客満足の原因と結果を分析することができる「因果モデル」を想定していることである(第1節)。
続いて、調査の方法論が述べられる(第2節)。JCSIは、サービス産業の約30業種・業態の企業・ブランド(約400社)を対象とした日本最大の消費者調査である。年5回のネット調査で、サンプルは調査会社のモニターパネルを用いて2段階(スクリーニング調査と本調査)で抽出される。回答者に対する質問は、主要6指標(顧客期待~ロイヤルティ)とSQI(サービス品質指標)などに関連した多くの項目に及ぶ。
 顧客満足度などの主要6指標(顧客期待、知覚価値、顧客満足、推奨意向、ロイヤルティ)は、調査項目を統計的に処理して100点満点に変換される。章の最後に、JCSIの活用に向けての課題が議論される(第3節)。

 (後略)