本書は、今月(11月)の学部ゼミ生の課題図書である。普段はわたしが選書して、1ヵ月後に学生たちが感想文を提出する。新しい試みで、今回は感想文を書きたいと思う本を学生に選んでもらった。その結果が、伊藤さんの「短く話す(プレゼンする)」ための極意を紹介した本書になった。
本書がベストセラーで売れているのは、タイトルの「1分で話せ」がキャッチーだったからだろう。また、のちに述べるが、シンプルな本づくりが成功の要因なのだろう。
昨日、学生たちが感想文を提出してくれた。ところが、わたしは課題図書を読んでいない。採点のため、本日、急遽読み始めることになった。10時ちょうどに最初のページをめくって、11時11分に読み終えた。「1分で話せ」というタイトルだけあって、「1時間以内に読ませる本」になっていた。
簡潔で論点が整理されているのと、わざと「文字をスカスカに書いてある」からだと思う。ただし、学生にはあまり真似してほしくないことが1点。1文ごとに改行を入れてあることで、文章はたしかに読みやすくなる。そして、頁あたりの文字数が少ないので、飛ばし読みがしやすい。その結果、わたしのような速読者は56分で一冊を読み切ってしまった(メールと電話とトイレで、ロスタイムが15分)。
本を読ませるテクニックとして、学ぶべきところが多くあった。とはいっても、書いてあることのほとんどは、ビジネスの世界で生きているひとにとっては、すでに知っていることばかりだろう。取り立てて新しい発見はなかった。二年間で24刷り、30万部も売れている。しかし、それだけ売れている理由がよくわからなかった。
筆者が言いたいことをまとめると、「プレゼンテーションとは、相手に向かって話すことではなく、いかに伝えるかを効率よく考えることだ」ということになる。その通りだと思う。そして、ロジックも大切だが、五感(とりわけ、目と耳)に訴えかけて相手を動かすためにプレゼンは存在しているという主張も正しい。
わたしから提案は、内容がライトすぎるので、もう少しリアリティのある挿話を挟んでほしかったこと。そうすれば、もう少し品の良い書籍になったかもしれない。それは不要ないのかもしれないが、全体的に文章に香りがしないのが欠点だろう。
奥付けをみて気がついたのだが、筆者は評者の後輩だった。本ブログでの紹介文を書き始めて45分が経過している。なので、書評は1時間以内で終わることにする。
<追記>
伊藤さんの本には、上手なプレゼンのエッセンスが書かれている。評者が書けるとしたら、「外さないインタビューの極意」を本にまとめることができるように思う。しばしばインタビューに同行してもらっている林麻矢さんへ、「売れる対談本」などが書けませんでしょうか。