最後にオランダの花市場を訪れたのは、3.11の少し前だったように思う。記憶が曖昧なくらい、長い期間、オランダの市場と生産者、加工会社を見ていなかった。視察2日目の午前中は、旧アルスメール市場を見て歩いた。
一番の驚きは、かつては5.6箇所あったオークションルームが、一部屋を覗いて真っ暗になっていたことだった。インターネット在宅セリが普及したことで、市場内の競り場が無用の長物に変わっていた。松島さんが言うには、5年前の訪問時には、オークションルームに明かりが灯っていたらしい。
物流センター機能も後退気味に見える。午後にダッチフラワーグループの花束加工場を見せてもらった。Bloomとe-flora、Greenexが同居しているビルを、輸入の花が加工されて出てくるところまで通して見せてもらった。
三社で毎週100万束が、ここから量販店や輸出業者に出荷される。年間約5億束。1束10本入りだとすると、年間50億本は、我が国の国内生産量よりも多いことになる。
Bloomは年商150億円で、オランダ最大の花束加工メーカーの一つだ。同じダッチグループのインターグリーンがあるので、二番目の加工業者?50%はケニヤとエチオピアからやってくるバラである。その花をポーランド人が花束に加工している。植民地支配の資本主義版だ。
輸出先は、オランダ国内とイギリスとドイツ。いずれも量販店だと思われる。しかし、花市場の物量の減少と競り場が消えた様子を見ると、オランダの花市場は、時代的に役割を終えようとしているのかもしれない。
市場が成り立っているのは、隣にある加工場の規模が大きいのと、地続きで運べる輸送会社がかろうじて輸出の荷物をトラック便で届ける商売が成り立っているからだろう。
しかし、この仕事がいつまで存続できるかの保障はない。アフリカや中南米から、各国の加工メーカーや輸入業者が直接仕入れてしまうから、加工用以外の花は需要が減っているはずである。
花の国オランダでさえ、南半球への産地移動とネット取引の増加に抗うことはできないだろう。不死身だった花市場がオランダから消える日が近いのかもしれない。
追記
ちなみに、Bloomのデータは、案内をしてくれた若い子が口頭で話していた説明である。クロスチェックが必要と思われる。彼は日持ち試験室で、部屋の湿度を50%、ランプのオンオフが8時間と話していたので注意が必要かも。
正しくは、日持ち試験室の湿度は60%、明かりのオンオフは12時間オン、12時間オフのはずである。