追伸:Uber体験@カリフォルニア ~ 気楽に安全なタクシーを呼べる仕組みに感嘆

 今月のはじめに、カリフォルニア州のサンフランシスコとロスアンゼルスの街中で、はじめてのウーバー(Uber)を体験した。スマホでカードの支払先(番号)を登録するだけで、近くにいる「空」の自動車をウーバーが手配してくれる。平均5~10分もあれば、身なりのキチンとしたドライバーを乗せた、こぎれいな送迎車がやってくる。

 

 全国をカバーする空車の手配プラットフォーム会社が、Uber(ウーバー)だ。実によくできた仕組みで、必要なのはスマホだけ。キャッシュレスでペーパーワークもない。手軽で煩わしくはないのだが、あまり容易に車が手配できるので、一か月後にカード会社から送られてくる請求金額が心配になる。

 いまや、サンフランシスコやロスでは、イエローキャブ(タクシー)をほとんど見かけなくなった。ロサンゼルス空港からマリナデルレイのホテルまで、試みにタクシー(旧来型)に乗ってみた。行先を告げると、近すぎるので最初は乗車拒否された。二台目のタクシーに無理やり乗り込んだが、明らかに遠回りされてしまった。料金はチップを入れて50ドル(5500円、1ドル=110円換算)。

 その二日後、ウーバーを予約して国際線のターミナルまで送迎してもらった。この時は、朝7時に予約しようとしたら近くにいた車が18ドル(約2000円)だった。時間が早すぎたので、今度は一時間後に別の車を呼んだら、28ドル(約3100円)に値上がりしていた。ラッシュアワーが始まるので、ホテルから空港までの距離は変わらない。しかし、ラッシュアワーが始まるので、その分の割増金額が上乗せされていた。

 

 さて、ホテルの前にやってきたのは、レクサスのきれいな車両。運転手はきれいな身なりをした中国人。案の定、交通渋滞が始まっていて、思った以上の時間がかかってしまった。しかも国内ターミナルに向かったので、途中で国際ターミナルに行先を変更。それでも、料金がはじめから決まっているので、28ドルの料金は変更にならない。

 ただし、ウーバーが従来のタクシー運営会社から継承しているシステムもある。それはチップの制度だ。米国ではいま、サービスに対するチップ(追加のチャージ料金)は、レストランなどでは売上の15~20%が標準と言われている。タクシーを降りるときに、乗車料金にチップを上乗せするのだ。

 ウーバーの場合は、運営会社から降車後すぐに、「ドライバーにチップをおいくら支払いますか?」のメールが送られてくる。これに、金額を入力して送信するだけである。おかげさまで、ほんの一瞬だが運転手の目をみてしまう心理的な葛藤からは免れられる。自分の財布と睨めっこして、空港のロビーでくつろぎながら、客観的な評価額(レクサスの運転手には5ドル)を入力できる。

 

 わたしたちを空港まで運んでくれた中国人の運転手に、一日にどのくらい稼げるものか聞いてみた。一年前にウーバーをはじめた彼は、一時間平均で16ドルを稼ぐらしい。専業で一日10時間働いているので、稼ぎは一日160ドル(約1万7600円)。月に20日間働くとすると、月収は3200ドル(約35万円)。30日フルに働けば、月収は50万円になる。

 とはいえ、個人事業者だから、ガソリン代と自車の償却代金をそこから差し引かなければならない。それほど悪くはないが、ウーバー本部に25%(ロイヤリティ)を事前に召し上がられている。社会保障も自分でカバーしなけばならない。そこがネックだ。

 正社員で雇用されているビジネスマンに比べれば、それほど割の良い商売とも思えなくなる。一番よい仕事の仕方は、二つ目の仕事(アルバイト)として、ウーバーのドライバーをやることだろう。隙間時間に、自分の車で自給約2000円を稼げるからだ。

 

 ちなみに、帰国後に成田空港で、ウーバーを呼んでみた。なんと、行先を「東京都葛飾区高砂8丁目」と入力したら、タクシー会社の黒塗りのハイヤーが表示された。米国のウーバーでは、送迎の車(車種とボディの色)とナンバー(乗る人が車を確認するため)の写真が送られてくる。もちろん運転手の名前が、写真付きでスマホ画面に表示される。

 日本のウーバーでは、提携しているタクシー会社が数社あるようだ。スマホの画面には、車種(クラウン)とボディ(黒色)、そして自宅までの料金が表示された。「××交通、¥21,500円」。わたしはさっさと画面を閉じて、京成電車の「アクセス特急」(995円)に乗ることにした。

 国土交通省の規制がなければ、もっと快適な移動ができるのに。重いトランクとお土産の袋を抱えて電車に乗り込んだ。残念だった。