「ロック・フィールドのDNAブック」の出版企画(新プロジェクト)が順調にスタート

 昨年来、「㈱ロック・フィールド」(本社:神戸市)の創業50周年記念出版の話が進んでいた。2021年には、創業者の岩田弘三会長が傘寿(80歳)を迎える。1972年に港町神戸で創業した「惣菜カンパニー」が、2017年には売上高で500億円を突破した。そして、年末に提案した出版企画が承認され、社内では「RFサラダミュージアム構想」も同時にスタートしている。

   
 書籍の刊行は、50周年の前年(2020年11月)を予定している。出版社は未定だが、仮に書名を『ロック・フィールドのDNA』としてプロジェクトが進行している。岩田会長や古塚社長はもちろんのこと、会社の創業と事業の発展に関わってくださった多くの方たちに今後はインタビューを試みることになる。
 書籍の編纂にあたっては、ロック・フィールドの社長室(中野参与や小泉さんなど)や多くの関係者を巻き込むことになるだろう。関係者へのインタビューは、友人の林麻矢さん(ビル・ジョージ著『True North リーダーたちの羅針盤』の共同翻訳者)に取材への同行とインタビューの整理をお願いしている。
 
 読み物(記事)としては、発表途中段階でそのエッセンスを発表するつもりでいる。早速この後、先月行われた古塚社長のインタビューを紹介してみたい。
ロック・フィールドとは、岩田会長や中野参与とのご縁で20年以上のお付き合いがある。そんなわたしでも、初めてインタビューさせていただいた古塚社長のお話から、いままで知りえなかった新しい発見がずいぶんとたくさんあった。ちょっとした驚きでもあった。
 この出版企画プロジェクトは、最終刊行年月が決まっている。ぜひとも良いものに仕上げてたいと思っている。以下は、昨年11月に小川が同社に提案したオリジナル企画書である。企画書なので、途中で大いに変更はありうるだろう。ただし、本質は変わることがないと思う。何しろDNAを分析して記述するわけだから、突然変異?が起こっては困ることになるだろう。
 
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『ロック・フィールドのDNA:食のSPAモデルの構築とRF1ブランドの誕生史』
 出版社、出版年月(未定)
 出版企画書(V1:20181115)   提案者:小川孔輔(法政大学経営大学院教授)
  
1 本書の狙い(基本コンセプト)
 戦後日本の食文化史の中で、世界に通用する大きなイノベーションは、ほとんどが「製品イノベーション」であった。代表的な製品カテゴリーとそれを生み出した企業としては、たとえば、キッコーマンのお醤油や日清のカップヌードル、乳酸飲料のヤクルトなどを挙げることができる。これらは、独自の発想から革新的な日本人起業家が創案したもので、何らかの形で、製造方法や素材の加工技術におけるイノベーションと関連づけることができる。
 それとは対照的に、飲食サービスの分野では、マクドナルドやデニーズなど、海外で生まれたチェーンストア業態を日本風にアレンジして移植したものがほぼすべてである。現在、アジア諸国を中心に事業展開している吉野家(牛丼)や丸亀製麺(うどん)、COCO一番屋(カレー)などは、既存の商品カテゴリーを効率よくチェーン化した業態である。「プロセスイノベーション」の観点からいえば、戦前から存在していた日本食のカテゴリーに、米国由来のチェーンストアの枠組みを忠実に応用した飲食のビジネスフォーマットである。
 
 1972年に神戸で創業したロック・フィールドのユニークな点は、わずか48年という事業発展プロセスの中で、独自性のある製品群とブランド構築(製品・サービスのイノベーション)、そして製造から流通までの垂直的な事業プロセスにおける革新(プロセスイノベーション:農産物の貯蔵・収穫方法への関与、トヨタ生産方式の食品加工プロセスへの応用)を同時に達成したことである。しかも、そのビジネスシステムは、サラダという単独の製品カテゴリーで、素材調達から販売までの一貫システム(食のSPAモデル)を完成させたことに特徴がある。
 ロック・フィールドが生み出したSOZAIのビジネスモデルは、マクドナルド創始者のレイ・クロックが生み出したハンバーガー・ビジネスの発明に比肩しうるものである。稀代の起業家である岩田弘三の功績は、それまで副菜のひとつだった「サラダ」を主菜の位置に押し上げ、日本古来の惣菜(物に心を込めて作る料理)のコンセプトをヒントに、サラダという商品をまったく新しくカテゴリーに塗り変えたことである。岩田が作り上げたブランドと革新的な事業モデルは、フードビジネス史に長く記憶を留められることになるだろう。
  
 本書は、「サラダ=SOZAI」が誕生するまでのロック・フィールドの企業史と、いまも進化を続ける惣菜ビジネスの本質(DNA)を記録として残すために企画された書籍である。
   
2 本書の概要
 港町神戸で人気レストラン「フック」を経営していた岩田弘三が、欧州視察旅行でヨーロッパの食文化に触発され、総菜企業「ロック・フィールド」を創業するところから物語は始まる。帰国した岩田は、神戸大丸内にデリカテッセンのコーナーを設けて、百貨店のインショップ形式で高級総菜の販売を始める。デパ地下で大ヒットした総菜コーナーは、全国の百貨店に広がって大ヒットとなる(Ⅰ 創業期)。
「Are you fine?」
 バブルが弾けた直後の1992年に、ロック・フィールドのビジネスに大きな転機がおとずれる。それまで、ハレの日の高級デリカを扱っていたビジネスを、日常使いの惣菜をメインにしたビジネスに転換することを岩田は宣言する。売り上げのほとんどを占めていた高級デリカ(ギフト需要が主体)をやめ、周囲の反対を押し切って「RF1ブランド」を核に据えた事業に切り替えていく。路線変更の伏線は、1989年に神戸元町に出店した「神戸コロッケ」(当初は路面店展開)の成功があったが、この時期に、静岡県磐田市にサラダの一貫処理工場を建設する(Ⅱ 成長期)。
 
「Think Food!」
 2001年9月10日(9.11NYテロの前日)、英国でBSE問題が深刻化する。同年7月ごろには、千葉県白井町でBSEに罹患した牛が日本でも発見される(*筆者は、1999年に岩田社長にはじめて会ったが、一連の「食のスキャンダル」を2000年に予言していた@赤坂の全日空ホテル)。それ以前から、岩田は牛肉を中心にした食ビジネスの在り方に疑問を持つようになっていた。具体的には、北海道端野のジャガイモ農家に、収穫時に枯葉剤をまかないよう説得していた。雪印乳業の異物混入問題など、一連のスキャンダルが発覚したことで岩田の説得が北海道の産地で実ることになる(Ⅲ 動乱期)。
  
「Vegetable First」
 2012年、創業40周年を機に、企業理念として「The Mirai Salad Company」を宣言する。明確に野菜を中心に据えた健康な食生活を提唱する。2014年、古塚社長にトップの椅子を譲り、自らは会長に退くも、2016年に社長に復帰。英国のEUからの離脱と米国でトランプ政権が発足したことを受け、不透明な時代の到来を乗り切るためであった。再登板の翌年(2017年)、同社は売上高で500億円を突破。上場以来の最高益を達成したあと、古塚社長にトップの座を譲って再び会長職に退く(Ⅳ 事業再構築期)。
  
3 出版までのスケジュール
(1) 刊行予定日:2020年11月
 ・ロック・フィールド創業50周年を記念しての発刊
(2) 著者:小川孔輔(法政大学経営大学院・教授)
  ・同時に、記念出版企画委員会を組織するのがよいか?
(3) 出版社(未定)
  ・MJ連載(2018年26回)と並行して、2019年1月からインタビュー開始
(4)「RFサラダミュージアム構想」の企画と連動して取材を進める
  ・当時の写真・背景資料、関係者のインタビューに時間がかかる