先週末、ローソン(竹増貞信社長)は、今年度の店舗純増数をゼロに抑制すると発表した。先週末の発表時(4月11日)に、ローソン株は大幅に下落した(▼14.5%)。株式市場は過剰に反応しているようだが、新規出店数と退店数をバランスさせるローソンの方策は理に適っている。そのように考える理由を述べてみたい。
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チェーン全体の売り上げの増加と効率化を図る大量出店は、24時間営業と並ぶコンビニのビジネスモデルの根幹。1970年代から続いてきた。だが、人手不足に伴うバイトの人件費高騰を背景に現場を担う店主たちが疲弊。「空白地帯」も減るなか、各社の戦略変更が鮮明になってきた。
ローソンは2003年度以来、増やし続けてきた。前の18年度の増加数は667店だった。竹増貞信社長は11日の記者会見で「無理に数字を追いかけない」と述べた。
セブンは19年度の増加数を150と見込む。前の年度の4分の1ほどだ。
2位のファミリーマートは19年度に126店増やす計画だ。前の年度までの2年間は、経営統合したサークルKの店を含む不採算店を閉めるなど特殊要因で減らしていた。これを除くと18年ぶりの低水準となる。
国内のコンビニは中堅も含めて計5万5千店余り。郵便局の2倍以上だ。セブン、ファミマ、ローソンの大手3社で9割ほどを占める。(神沢和敬)
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ネットでも、ロスチャージ(廃棄負担分)や店主の深夜労働について、きびしい意見が書き込まれている。しかし、ローソンのやり方は、長期的にはオーナーやアルバイト社員のためになると考える。社会的な観点からも正しい対応である。
店主の店舗間移転は、その解決法の一つである。既存店の対前年比の数値をみると、ローソンの既存店売り上げは、来店者数の減少で長らく低迷(前年割れ)が続いている。不採算店を閉めて、店舗効率が良い新店にオーナーを移動してあげれば、既存店の対前年比売り上げは増加する。
これは、マクドナルドが不振からV字回復した「閉店戦略」をほうふつとさせる。2013年ごろに約4000店舗あったマクドナルドの店舗のうち、サラ・カサノバ社長は、不採算の約1000店舗を4年かけて閉鎖する決定をくだした。そして、3000店舗弱に絞り込んだ結果、採算のよい立地だけが残った。そして、赤字続きで弱っていた加盟店の収益が大幅に改善した。
このロジックはローソンにも当てはまるだろう。ローソンの店舗数は、現在約1万4500店。2019年度は、当社発表の計画によると、出店700店で退店700店である。全体の約5%を入れ替える。
さらに重要なことは、出店数を抑制することで、周辺エリアでの共食い(客の奪い合い)が避けられることである。このことは、店主から心理的な脅威を取り去ることに資するだろう。加盟店のオーナーの大きな不満は、将来に対する売り上げの確保(保障)だからである。
戦略的な店舗配置転換とカニバリゼーションの抑制は、店舗間競争で苦しんでいるオーナーを支援する。したがって、ローソンの既存店強化策と店舗支援は、ブランド間での競争に負けない限りでは、いずれ実を結ぶ可能性がある。
メディアと株式市場は、ローソンの店舗戦略の転換をネガティブに解釈しているが、筆者はむしろポジティブにとらえている。いまの時点で、店舗数を増やすことは得策ではない。既存のオーナーに報いるべきであると考える。