朝日新聞の社説:「コンビニ24時間 変化を直視し改革を」 を読んで

 朝日新聞が社説(2019年3日3日)で、コンビ二の24時間営業について見直しを提案していた。似たような論説は、先月あたりからさまざまな媒体で登場している。その後、提案対象になったセブンーイレブンは、直営店10店舗で夜間短縮営業の実験をはじめている。対照的なのはローソンで、従来から約40店舗で夜間の短縮営業を認めてきている。

  
 ローソンの竹増貞信社長は、「24時間営業の変更検討も視野に」(3月7日)とメディアとのインタビューで発言している。ただし、夜間営業の休止に踏み切ると、日中の売り上げがダウンすることは分かっている。始まったばかりのセブン-イレブン直営店の実験でも、売り上げが減少することが証明されると思われる。
 その場合の日販の減少率は、思っている以上に大きくなることが想定される。つまり、周辺の店舗が24時間営業を続けている限り、夜間だけでなく日中でも消費者は他店にスイッチする可能性が高いからである。この「日中スイッチ仮説」は、上位3社のコンビニの本部が、従来から主張してきたことである。
 注意すべきは、そうした結果が出た場合の解釈である。夜間営業休止のマイナス効果は、社会的な制度(夜間営業が標準スタイル)に依存して決まっている。実験店が単独で夜間営業をやめても、他店が営業を続けているかぎり、それは部分的なテストにしかならない。つまり、正しい社会実験とはいえない。
 夜間営業を休止する判断は、最終的には、コンビニ本部と加盟店との力関係によって決まると思われる。その場合は、加盟店の利益をどのように担保するのか? 本部と加盟店の信頼関係はどうなるのか? 夜間営業を休止した場合のチャージ率(コンビニの取り分)をどのように設定するのか。状況変化に合わせて、加盟店の粗利益配分を変更することになるのか?
 
 最近のアンケート調査では、「夜間営業は必要ない」と答える一般消費者が多数を占めている。とくに年齢が高い層では、このご時世では「不必要」と答える人が多いという結果になっている。しかし、正直に言ってしまえば、直営店での実験では、消費者の行動が変わるとは思えない。
 コンビニを利用する側の意識と実際の行動の乖離を、コンビニ本部や加盟店はどのように判断するのか? さらには、社会的な合意はどのように動くのか? メディアや政策当局はどのような立場に立つのか。店舗実験は考えるヒントを与えてくれるだろうが、データがすべてではないように思う。
 コンビニやサービス業で夜間に働いている側、とりわけ加盟店のオーナーの実態を、きちんと明らかにしてほしいとも思う。
----------------------
<参考> https://www.asahi.com/articles/DA3S13917563.html
(社説)コンビニ24時間 変化を直視し改革を
2019年3月3日05時00分
 コンビニエンスストアはなぜ、深夜でも早朝でも開いているのが「当たり前」なのだろう。いまの時代に必要で、続けられるしくみなのか。
 大阪府東大阪市のセブン―イレブンの加盟店オーナーが、人手が足りずに24時間営業をやめて本部と対立している。営業時間の見直しを求める声は、他のオーナーにも広がる。
 顕在化した課題に、コンビニ各社は正面から向き合うときではないか。24時間営業で成長した成功体験にとらわれず、必要な改革を柔軟に進めるべきだ。
 誕生からおよそ半世紀、コンビニは多くの人の食を支え、イートインのある店も増えた。公共料金の支払いや宅配便の受け取りもできるようになり、災害が起きればすぐに支援物資を届ける。いまや業界全体で全国に約5万6千店、社会に欠かせぬ存在になった。
 大手各社は、24時間営業を前提としている。店がいつも開いていることこそが客に便利であり、物流網などがビジネスモデルとして確立している、との理由からだ。
 ところが、この24時間営業が重荷になり始めている。高騰する人件費はオーナーの負担で、本部には及ばない。店の業務を支える本部が優越的な立場にあり、オーナーを「共存共栄のパートナー」と位置づけながら、営業時間の裁量はほとんど与えてこなかった。
 いま、客はどこまで深夜営業を求めているのか。取引先やオーナーの収入や働き方に、どんな影響があるのか。かかるコストはだれがどの程度負担すべきなのか――。
 考えるべき課題は、山積している。
 コンビニ各社も、対策をとってはきた。加盟店に人材を派遣するサポート体制を拡充したり、レジの機能を高めて省力化を進めたり、清掃の自動化に取り組んだり。セブン―イレブンは3月中旬、社会の変化や客の反応をつかむための「実験」として、直営店10店で時短営業を始める。
 だが、急速に進む人手不足に対応は追いつかない状況だ。
 残業が当たり前だった時代といまは違う。働き方改革の視点からも、1980年代から定着してきた24時間営業への世の中の見方は、変わってきている。
 ファミリーレストランは24時間営業店を縮小し、宅配業者は配達時間を見直している。
 時代の変化に合わせて成長してきたコンビニだからこそ、社会のニーズや地域の事情に応じて考えてほしい。