今年のお歳暮は、りんごの当たり年?

 お歳暮には、その年の「当たり商品」がある。10年ほど前は、お中元の時期に、やたらとビールが多かった年がある。今年は、不思議なくらいに、りんごがたくさん届いている。お米に続いて、りんごは東北地方の代表的な農産品である。毎年多いギフトなのだが、今年は、青森、秋田、福島、山形、長野からりんごが届いた。

 

 りんごに混じって、たまにみかんが届くこともある。それでも、わたしの実家が秋田にあって、友人・知人も東北地方に住んでいるので、特産品のりんごがやってくるのは自然な成り行きかもしれない。

 一般的な傾向として、お歳暮やお中元の時期の贈り物が、このごろは実質的になったのではないかとも思う。今年は減っているが、地方名産の牛肉やブランド豚なども少なくない。地ビールは消えてしまったが、めずらしい輸入ワインや地酒も、引き続き人気のギフトアイテムではある。

 振り返ってみると、景気がよかった30年ほど前は、ずいぶんと凝った商品をいただいものだった。食べ物にしても、変わったお菓子や、地方の特殊な産品がお土産として重宝されていた。価値観が変わって、ふつうの生活に役立つものを贈るようになったのだろう。

 

 そういえば、花業界の方からは、年末になると鉢物や鉢花が贈られてくる。シクラメンやシンビジウムは、季節感があっていただくとうれしいものだ。自分からも、親せきやふだんお世話になったかたには、鉢花を贈っている。これはけっこう喜ばれている。

 お花が届くと、みなさんから、「ありがとう」の電話のお返事が戻ってくる。ギフトは返礼の電話やメールが来るので、ひさしぶりの安否確認の意味もある。

 虚礼廃止で、一時期と比較すると、お中元やお歳暮はずいぶん減ったように思っていた。ところが、かみさんにそういうと、「そんなに減ってません。むしろ増えているくらい」とレスポンスが返事がかえってきた。

 

 ふたりとも年寄りになったので、食品の消費量が減っている。うれしいことなのだが、消費に時間がかかってしまう。その結果、生鮮品は賞味期限もあって、子供たちやご近所さんに配ってしまうことも多い。

 わが家のように料理好きな家庭向けには、しいたけや昆布、カツオぶりのような保存性がある料理素材がうれしいのだが、いただくものとしては、そんなことは絶対に言えない立場にある。

 結婚式のときに引き出物にいただくことがある「ギフトカタログ」は、自由度があってよろしいが、お歳暮やお中元には向かない。価額がわかってしまうのと、ギフト選びのセンスを問われないからだ。そのほうが割り切れてよいという意見もあるだろうが。

 

 それにしても、今年のお歳暮で、これほどまでりんごが増えたのはどうしたことだろう。アップルパイ・ママのかみさんが言っている。「暮れになったら紗楽(さら、孫)が来るから、毎日、アップルでも作りましょうかね」。

 朝からお歳暮談義をしていたところ、某百貨店でお歳暮を担当しているかみさんのコメントは、「先生(お医者さん)には、お歳暮は絶対に金券ですよ」であった。そんなものなのだ。その気持ちはよくわかる。りんごよりは金券(笑)。