わたしは、エゴサーチ(自分検索)をほとんどしない。だから、春合宿中にゼミ生から、「先生の名前、ウイキに出てますよ」と言われてちょっと驚いた。ウイキペディア(2017年10月9日)をチェックしてみた。ウイキに書かれている情報は、ネット上の記事を集めて適当にアレンジしたものらしい。
記述はほぼ正しいが、大事な英文の論文(Marketing Science)や、初期のころ発表した共著の書籍や論文などが見当たらない。書誌情報が電子化される以前に、どこかで発表した共同論文などである。そのころの翻訳や書籍などは、リストから抜け落ちていて当然だろう。もはやその存在は、本人にしかわからないのだから。
文部科学省(科研費)に提出する場合を除くと、わたし自身が著書や論文をリスト化したことがない。ウイキペディアの書誌リストには、わたし(著者)自身がもはや複写を所持していない論文なども入っていた。国会図書館には、いまでも現物があるのだろうか?
素朴な疑問。このウイキペディアの書誌リストは、いったい誰が編集しているのだろう。その動機はどこにあるのだろうか?
なお、わたしは、「花屋」の研究者にカテゴライズされていた。書誌情報のデータを精査すれば、これは正しい判断・認識であろう。AIやビッグデータの正しさを、部分的に裏付ける検証でもある。
時間と努力の投入量は、たしかに書籍や論文(成果)に反映するものだから。しかし、そのように書かれてしまうと、読者は研究の背景などを知りたくならないだろうか。余計なお世話だろうが、脚注を付けて説明してあげたくなる。
同じような英文の個人情報(紳士録)が、”Who’s Who”に掲載されている。ネット出版社(情報元)から、「あなたのことが、英文紳士録に掲載されています!」とメールが頻繁に送られてくる。どうでもよいことなのだが、「人名録」はお金になるらしい。
名簿ビジネスとして、かつては同窓会のデータベース作成などが繁盛していた。フェイスブックなどのつながりから、交友関係は特定できるだろう。そのリスト化から、人脈や人間の性格まで、客観的に分析できるのは明白だ。実に怖い社会になったものだ。
その派生的な事件が最近になって起こった。わたしには衝撃だった。来るべき時がやはり来たのだ、と。
米国の査証(VISA)の申請が、SNSの情報を添付するように変わるらしい。10年前に予想していた通りで、SNSが普及すれば、個人情報は露出される。ネット社会では個人のプライバシーなどは丸裸になる。わたしがフェイスブックをやらない理由でもあった。
それでも、誰かがわたしの写真やコミュニケーション(交流)の記録をフェイスブックにアップすれば、個人情報のプロテクトは無効にされる。今回のように、ウイキペディアが勝手にわたしの業績リストを作ってしまうなら。そうそう、周囲からの情報提供で、その蓄積がわたしのプライバシーを暴くことになる。
わたしたちは、もはや牧歌的な世界には戻れない。有名人だけでなく、ふつうの人間も、ネット情報で「悪事」を露見される。指弾されてつるし上げられることがふつうに起こる可能性がある。恐怖世界の出現だ。
わたしたちの居所は、もはやばればれ。監視カメラは不要である。えらい「露出社会」になったものだ。もはやプライバシーは丸見えになっている。為政者は、それを見逃さない。犯罪者も追跡可能だが、市井の人も草葉の陰に隠れることができない。放っておいてほしいのだが、もはや情報的に自分の存在を世間から遮断することは不可能だ。陰にこっそり隠れて生きることはできない。
とはいえ、「パーミッション」を拒絶できない誘惑もある。わたしのウイキペディアのように、勝手に作ってくれた書籍と論文のリストは、結構な程度で役に立つ。便利さに逆らうことは、かなり勇気がいるのだ。
実際的に、世の中に流布している個人情報を消し去るのは困難でもある。流れに身を任せるしかないのだろうか?
以下は、誰かが勝手に作ってくれた、ウイキペディアの中のわたしだ。情報圧縮されたひとりの学者さんの姿。ネットの側の世間から、わたし個人として見られている姿が、、、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/10/09 23:34 UTC 版)
秋田県能代市生まれ[1]。1974年東京大学経済学部卒業。78年同大学院博士課程中退。1982年~1984年米国カリフォルニア大学バークレー校客員研究員。1976年法政大学経営学部研究助手、77年専任講師、79年助教授、86年教授[2]。イノベーション・マネジメント研究科教授[3]。マーケティングが専門で、特に花屋を研究している。
目次
1 著書 1.1 共編著・監修
1.2 翻訳
2 論文
3 脚注
著書
•『世界のフラワービジネス』にっかん書房 1991
•『花ビジネスで成功する法』草土出版 1993
•『ブランド戦略の実際』日本経済新聞社 日経文庫 1994
•『当世ブランド物語 ユニークなブランドを創った十四の物語』誠文堂新光社 1999
•『マーケティング情報革命 オンライン・マーケティングがビジネスを変える』有斐閣 1999
•『ガーデニング流通 ホームセンターの動向と植物の生産・供給』グリーン情報 2000
•『よくわかるブランド戦略 入門マネジメント&ストラテジー』日本実業出版社 2001
•『誰にも聞けなかった値段のひみつ』日本経済新聞社 2002
•『花を売る技術 5つのポイント』誠文堂新光社 2005
•『マーケティング入門 マネジメント・テキスト』日本経済新聞出版社 2009
•『お客に言えない!利益の法則 身近なモノの値段から儲けの仕組みがわかります!』青春出版社 2011
•『しまむらとヤオコー 小さな町が生んだ2大小売チェーン』小学館 2011
•『フラワーマーケティング入門 花が売れるしくみのつくりかた』誠文堂新光社 2013
•『CSは女子力で決まる!』生産性出版 2014
•『マクドナルド失敗の本質 賞味期限切れのビジネスモデル』東洋経済新報社 2015
共編著・監修
•『POSとマーケティング戦略』法政大学産業情報センター共編 有斐閣 1993
•『花のしごと基礎講座 フラワービジネスを学ぶ』細野真喜子, 法政大学産業情報センター共編 農村文化社 1996
•『メーカーベンダーのマーケティング戦略 製造・卸売一体化の効率経営』大山健太郎共著 ダイヤモンド社 1996
•『ブランド・リレーションシップ』法政大学産業情報センター共編 同文舘出版 2003
•『クイック・ハンドブック 花屋さんマーケィング読本 check & step up』監修 日本フローラルマーケティング協会編 草土出版 2005
•『有機農産物の流通とマーケティング』酒井理共編著者代表 農山漁村文化協会 2007
•『メディアの循環「伝えるメカニズム」』岩崎達也共編著 生産性出版 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター叢書 2017
翻訳
•バーバラ・E.カーン, レイ・マッカリスター『グローサリー・レボリューション 米国パッケージ商品業界の経験』中村博共監訳 同文舘出版 2000
•ロバート・ブラットバーグ,ゲイリー・ゲッツ,ジャクリーン・トーマス『顧客資産のマネジメント カスタマー・エクイティの構築』小野譲司共監訳 ダイヤモンド社 2002
•R.P.フィスク, S.J.グローブ, J.ジョン『サービス・マーケティング入門』戸谷圭子共監訳 法政大学出版局 2005
•ジャン・クロード・ウズニエ, ジュリー・アン・リー『異文化適応のマーケティング』本間大一共監訳 ピアソン桐原 2011
•V・カストゥーリ・ランガン『流通チャネルの転換戦略 チャネル・スチュワードシップの基本と導入』監訳 小川浩孝訳 ダイヤモンド社 2013
•ビル・ジョージ『True Northリーダーたちの羅針盤 「自分らしさをつらぬき」成果を上げる』監訳 林麻矢訳 生産性出版 2017
論文
•<小川孔輔(*ここに論文が数十本、掲載されている)
脚注
[前の解説]
「小川孔輔」の続きの解説一覧
•1 小川孔輔とは
•2 小川孔輔の概要