白鳥の飛来記録(1993年~2017年)@清水口調整池

 いまから25年前の1993年12月20日、二羽のオオハクチョウが調整池に飛来した。その7年前(1987年)に、わたしたち家族5人は、調整池がある千葉ニュータウンの新興住宅街(白井市清水口)に引越してきた。閑静な住宅地とはいえ、周囲1.2KMの池を囲むように住宅が密集・林立している。

 

 そんな環境の調整池に、まさか白鳥が降り立つとは。ちょっとした驚きだった。ニュータウンへの移住を決めたはよいが、当時の住居表示は「印旛郡白井町」。のちに市制が敷かれて「白井市」に変わるが、白井町に移ってきた年の年賀状には、やや自嘲気味に、「町民・郡民宣言」と書いて印刷した。その年賀はがきを駅前のポストに投函したものだった。

 新住民にとって、目の前の調整池に悠然と浮かんでいる白鳥の姿をみることは、思ってみなかった出来事だった。吉兆と感じたのはわたしだけではなかっただろう。当時を思い起こすと、突然の白鳥の飛来を、新しい生活への「希望」と感じた新住民も多かったにちがいない。

 新天地に移ってきた町民と同じで、白鳥たちも家族連れだった。彼らは必ず2羽、3羽、4羽と、はじめから群をなして池に飛んできた。飛来するタイミングは、ほぼ11月半ばから12月初旬にかけてだった(文末の「飛翔記録」を参照のこと)。

 

 年によっては、飛来が遅いこともあった。デートの約束に遅れた彼女を待つがごとく、ずいぶんとやきもきしたものだった。そののうちに、ご近所さんが集まって、「白鳥の会」が結成された。ボランティアのひとたちが、古米などを集めて毎朝、白鳥に餌付けするようになった。

 休日になると、東京都内や隣の印西市から、うわさを聞いて白鳥を見るためにたくさんの人が池の周りに集まるようになった。ドライブがてらなのか、家族連れや老人会のメンバーなどが、自家用車で押しかけて来た。

 フェンスに掲示板が設置されたのも、そのころである。掲示板には、「飛来日」と「旅立ち日」、その年の「飛来数」が記録されるようになった。最初は手書きで、のちに印刷でパウチされている。

 

 10年間、飛来数は一桁で推移していた。ところが、11年目からは、シベリアから飛んでくる家族が3家族に増えたらしい。翌年には、オオハクチョウ集団にコハクチョウが加わった。20羽を超えるようなったのが2009年。2015年からは、白鳥も30羽を超えている。

 こんなに混雑して、餌は大丈夫なのだろうか。心配をしても始まらないが、近頃はマガモの数が増えている。マガモも渡り鳥だが、白鳥の会の人たちが毎朝給餌している餌を横取りするのにたけている。

 白鳥の数もうなぎ上りに増えているが、皮肉なことに勢力を伸ばしているのは、マガモのほうだ。カモの大増殖の要因は、食糧事情が大幅に改善されたからだろう。ところが、そんなことにはお構いなしに、白鳥のほうは悠々と泳いでいる。

 この25年間で様変わりした清水口調整池の生態を、白鳥の会の人たちが市民に伝えるために、最近では「白鳥の写真展」が開催されている。フェンスにもその案内が紹介されていた。

 

 最後に、これまで飛来した白鳥の記録しておきたい(「白鳥の会」の掲示板から)。

 ここから3人の子供たちがこの町から巣立っていった。入学・卒業、社会人として自立するまで、その旅立ちをこの町と一緒にみてきた。白鳥の飛来と旅立ちは、子供たちの誕生と成長、そして独立や結婚と重なっている。センチメンタルにはなるが、その思い出と連なる記録をここに残しておくことにする。

 

 <白鳥の飛来記録一覧>

 *2018年3月9日現在(清水口調整池の掲示板から引用、編集)

     飛来年  飛来数  飛来日  旅立ち日

 第1回(1993年) 6羽 12月20日 (94年)3月1日

 第2回(1994年) 7羽 12月13日 (95年)1月30日    

 第3回(1995年) 2羽 12月 7日  (96年)4月13日

 第4回(1996年) 5羽   11月14日 (97年)3月10日

 第5回(1997年) 3羽   11月11日 (98年)2月22日

 第6回(1998年) 6羽   11月 8日  (99年)3月 2日

 第7回(1999年) 9羽   11月19日 (00年)3月13日

 第8回(2000年) 6羽   12月 1日  (01年)3月27日

 第9回(2001年) 5羽   12月 2日  (02年)3月12日

 第10回(2002年)  4羽   11月17日 (03年)3月29日

 第11回(2003年) 12羽  11月14日 (04年)3月13日

 第12回(2004年) 10羽  11月10日 (05年)4月 3日

 第13回(2005年) 11羽  11月17日 (06年)3月 6日

 第14回(2006年)  8羽   11月15日 (07年)3月22日

 第15回(2007年) 13羽  11月 8日  (08年)4月 6日

 第16回(2008年) 13羽  11月10日 (09年)4月 3日

 第17回(2009年) 22羽  12月 3日  (10年)3月22日

 第18回(2010年) 21羽  11月18日 (11年)3月11日

 第19回(2011年) 18羽  10月27日 (12年)3月29日

 第20回(2012年) 11羽  11月15日 (13年)4月 1日

 第21回(2013年) 18羽  10月31日 (14年)3月25日

 第22回(2014年) 25羽  10月31日 (15年)3月22日

 第23回(2015年) 31羽  10月29日 (16年)3月22日

 第24回(2016年) 23羽  10月24日 (17年)4月 2日

 第25回(2017年) 35羽  11月12日 (18年)?月?日