パリ郊外で年2回開かれるライフスタイル&デザイン展。昨日は、朝の8時から動き始めた。実質的なツアーの初日。展示会場でデザインの動向を視察した。テロ事件などがあり、ここの視察は三年ぶりになる。今年のテーマは、ショールーム。消費者が自らアイデアや情報を発信する時代。そうした認識からなのだろう。
従来からのテーマ設定とは大きく異なるコンセプトになった。わたしは、会場の展示を見ながら、逆の見方をした。消費者発想は、デザイナーの発信力が衰えている証拠ではないのか。
世界的に、欧米のデザインが世界を席巻したのは、18世紀の市民革命と産業革命が起点になっている。中産階級の勃興があり、芸術面では、絵画の様式とモチーフがヨーロッパ発だったことからきている。ゴッホに始まりモネなど印象派へと続く作家たちの流れ。
音楽も同様だ。クラシック音楽は、バロック様式から現代のポップスまで、西側文明の優位は300年間に渡って脈々と続いてきた。商業建築や街区のプランまで、産業革命によるサイエンス&エンジニアリングは庶民の生活に豊かさをもたらしたことが背景にあった。
ところが、アートの世界もヨーロッパのテイストだけでは、どこかで行き詰まっている。メゾンエオブジェを歩いていて、その感覚が拭えない。瞠目するアイデアが目の前から消えた。触発されるアイデアが会場のどこにも見られなくなった。
展示会場には、ブースの空きが目立つ。通路が広くなったように見えるのは、会場の脇を予約しても出展を取りやめたブースの多さからきている。明らかに、このデザイン展には飽和感がある。
事実、カテゴリー分けされた各ブースには、三年前にいた会社が規模を小さくするか、出展を取りやめている。販売するものに、新機軸が見られない。あるいは、花瓶の会社だったSERAXなどは、テイストを完全に変えてきている。デザインにおける脱欧州、入亜である。とくに和テイストが目立つ。
それは、午後の青山フラワーマーケット@パリ店の訪問でも確認できた。青フラパリ店は、富裕層が集まる7区にある。地価が高いこともあり、店舗のサイズはとても小ぶり。10坪もないくらい。
しかし、伯野店長が確立した日本の青フラの変化形@パリは、パリっ子たちの支持を得ていた。日本から送られてきたという宮崎のスイートピーと山形の啓翁桜はすでに完売。
その後に、伯野さんが創意工夫したフレンチスタイルのミニブーケが並んでいた。コンセプトは、大人のkawaii。いまパリでは旬のコンセプトだ。
詳しい説明は、松島さんなど他旅行のメンバーがブログにあげているだろう。一言で言えば、日本的な細やかな工夫が、パリにはなかったブーケを際立たせている。
寿司や漫画と同様に、和のテイストはいまや欧州では無敵である。ミニマルなデザインと淡い色彩、ミニブーケに代表される小花と葉っぱの可愛い組み合わせ。
「この辺の人は、3つ4つ、まとめて買っていきます」(伯野店長)。ミニブーケは一つ5€、約750円。日本より高めだ。原価率も日本より高いが、「高いって言われたことないよな」と伯野さんがアルバイトの日本人女性に話しかける。
色付きのサンドで加工した多肉植物やミニ観葉も、飛ぶように売れている。こちらは、ひと鉢が15€、約2250円。青山フラワーマーケットはわずか1店舗ながら、三年目で黒字転換している。
日本の花屋が欧州で成功しているのは、ユニクロのパリ店が受け入れられているのとは、ちょっと違う理由かもしれない。
ユニクロは技術と品質、青フラは可愛らしいデザインと和のテイスト。ただし、欧州風にアレンジした和モダンだ。だから、もしかすると、青山フラワーマーケットのパリ店に置かれている商品は、日本に逆輸出できる可能性がある。ブーケも鉢物も、日本のものより大人っぽい。
ところで、井上社長の話では、今度はロンドンの百貨店に、青山フラワーマーケットを出店させるという。パリでの定着が、次の段階へのステップになった。メゾンエオブジェの衰退とは、対照的な事件だった。
このツアーには、日本の若い花屋さんも一緒に参加している。彼らにとっても、勇気をもらえる訪問だっただろう。ツアー2日目にして、大きな成果が得られた。