兵庫県立こども病院から、日本の医療制度のありがたさを考える

 4歳半になる孫の紗楽(さら)が、兵庫県立こども病院に入院してから一ヶ月半が過ぎた。先週も今週も、京都女子大での講義が終わってから、孫をお見舞いに来ている。三ノ宮から北埠頭行きの電車に乗って、ポートライナーでこども病院のある南公園駅まで。この病院は最近新しくなったばかりで設備が整っている。


さらの病気は、先天的な股関節脱臼。いまは問題がないが、いずれ大人になってから歩行に支障をきたすらしい。息子達夫婦は、思案の結果、2歳の時にまず最初の手術を受けることにした。しかし、手術後の検査の結果、脱臼は治っておらず今回は2回目の手術になった。
 最初の手術はまだ2歳の時で、本人もよくわからなかった。しかし、今度は両親がよくよくさらにも説明して2回目の手術に臨んだ。嫁の奈緒さんも、息子と同じ会社で働いている。共稼ぎの大変さに加えて、下の子の諒くんが生まれた。神戸の小川家にとって、2017年の五月は試練の月になった。

 手術は成功して、今度は股関節の脱臼が矯正できた。結果は良かったのだが、この病院は完全看護である。だから、評判の良いここを選んだのだが、両親がいない夜もあって、はじめは夜泣きがひどかったらしい。かみさんが二週間、自分の仕事を休んで介護を支援したが、夜泣きだけは致し方のないことだった。

 先週になって、さらは固定していたピンが外れた。下半身を締め付けていたコルセットから自由になったので、昨夜は顔色も良くなった。まだつかまり立ちができる程度だが、歩行訓練のリハビリを始めている。病院の支援体制は完全に近い。そして、来週の水曜日には退院の予定だ。
 こども病院は、設備が新しくて充実しているだけではない。看護婦さん達の対応も素晴らしい。評判を聞きつけて兵庫県全域から患者さんがやって来ている。今朝も舞鶴から来て入院していた男の子が退院していった。一ヶ月以上、さらと同じように家族が付き添っていた。舞鶴からだと通うのも大変だったろう。それでも、ここをめがけてやってくる。

 息子達夫婦も、かみさんの支援などがあって、どうにか働きながら、さらの手術と入院の一ヶ月半を乗り切った。途中、下の子が肺炎で三日間入院した時が最大の危機だった。先週のことで、わたしがさらのところに泊まって、体調が限界に達していた息子を先に家に帰した。
 それもこれも、この病院の看護体制があってのこと。しかも、息子によると、兵庫県の場合は、未就学児童が入院するときの負担金はほとんどなし。そう考えると、住んでいる場所がどこかで、医療費負担とサービスに違いが出ることがわかる。

 日本全体で考えると、それでも、世界標準から比較すると日本人は格段に恵まれているはずだ。わたしが、昨年、白内障の手術を受けたときも、実質的に医療費負担は無いに等しかった。
 それもこれも、日本人の平均寿命が世界最高水準にあるのは、食生活や自然環境に恵まれているだけでは無いように思う。医療制度や優れた看護サービスが私たちの命を支えてくれているからだ。普段はあまり意識することはないが、身内や自分が病気になって、初めて国の医療体制に感謝することになる。

 この制度が維持できるように、私たち働ける人間は、たくさん稼いで日本経済に貢献しなくてはならない。これから生まれてくる子供達も、この国に生まれてよかったと思えるように。