パタゴニアが、環境負荷低減を目指して、食の分野に進出

 パタゴニア日本の近藤勝宏さんを、6月1日のFMセミナーの講師としてお招きする。ご存知のように、パタゴニアは、イヴォン・シュイナードが創業したアウトドア衣料品の企業だ。100%コットンのウエアで環境負荷低減に貢献している。日本でも根強いファンを持っている。

 

 そのパタゴニアが、2012年に食のブランドを立ち上げた。ブランド名は、”Patagonia Provisions”(パタゴニア プロビジョンズ)。創業者のシュイナードが、アウトドア活動で安心して食べられるものがないことと、常温保存可能な材料が見つからなかったことがプロビジョンズをはじめたきっかけだそうだ。

 プロビジョンズは、衣料品会社の単なる事業多角化ではない。もっと崇高な目的がある。すなわち、近代的な農法や漁法で失われた「食物連鎖の断絶」を回復するためである。パタゴニアの社是は、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、その解決に向けて実行することであった。フードビジネスは、衣料品事業よりもすそ野が広く、産業の規模が大きい。

 ユニークな製品づくりとその販売活動を通して、健全なフードチェーンの回復に貢献することを目指すという。アウトドア衣料品で達成した社会実験の実績を食の分野でも実現することになる。事業の立ち上げから4年で、4つの製品(事業)が生まれている。サーモン、スープ、フルーツバー、ビールというラインナップだ。

 なお、日本進出は、昨年の2016年からで、近藤さんが責任者になってプロビジョンズ日本が立ち上がった。ご自分で手を挙げられたそうだ。いまのところは、米国などからの輸入品でビジネスがスタートしている。基本は持続可能な生産、ナチュラル&オーガニックである。

 

 近藤さんが、6月のセミナーで話してくれるだろう、プロビジョンズの具体的な取り組みを紹介する。 資料は、「日本版Provisions Journal#01」から記事の引用+近藤さんとの打ち合わせから。

 

1 サーモン

 古くからある持続可能な漁法(=リーフネット漁法)で収穫された天然の鮭。ピンク・サーモンとソッカイ・サーモンは、北海で漁獲されるが、天然の鮭を混穫しないことがポイント。まだ食に適さない小さなサーモンは、そのままリリースする。取れたてのサーモンを冷凍して、パウチで密閉して販売している。

 

2 スープ

 すべて健康な土壌で有機栽培された野菜や穀物、スパイスから作られた乾燥パウダースープ。お湯で溶いて食しても腹持ちがよい。スープは3種類。グリーン・レンティル・スープ、ブラック・ビーン・スープ、ツァンパ・スープ。

 

3 フルーツバー

 アーモンドがミックスされたフルーツバー。バオバブパウダーで固めてある。無糖なのは、アップルジュースを使用しているから。もっとも自然でローテクなエナジーバー。スープもフルーツバーも、考えてみるとアウトドア携帯食からアイデアが。

 

4 ビール

 「ランド・インスティチュート」が開発した多年草小麦を原料に醸造したビール。ブランド名は、Long Root Ale。その名の通りで、多年草の小麦は、地中に長い根を張る。根が5メートルの深さまで伸びていくので、空気中の二酸化炭素を地中に固定する力が強い。地球温暖化を阻止することに貢献する麦だ。不耕起なので、化学肥料や農薬は不要。オーガニックになる。

 

 近藤さんとの打ち合わせで、興味深かったことを二点。

 

1 小さな社会志向企業の役割

 パタゴニアの売上は、約500億円。小さな会社だが、100%コットンの衣料ビジネスで成功したことが、大手企業のウォルマートやナイキが、100%コットンを扱うきっかけを作った。ニッチなビジネスでも充分に利益が上がられるモデルを示したことで、社会一般でも持続可能なビジネスに取り組むきっかけを与えた。

 

2 パタゴニアの取り組みは5つのR

 持続可能な世界を作るためになる5つの指標

 ①Reduce、減らす

 ②Repair、直す

 ③Reuse、再利用する

 ④Recycle、リサイクルする

 ⑤Reimagine、4Rを想像する

 

 最後は、なかなか哲学的な表現でした。