『新潮45』の次号(11月号)で、標記のテーマでの執筆を予定している。先月からコンビニに関するたくさんの本を読み、検証のために細かく資料を分析している。ローソンについては、現場やトップにインタビューやヒアリングを継続している。
そんな中で飛び出してきたのが、日経新聞のオンライン記事だった。中尚子記者の署名記事で、「セブン&アイ、利益半減 晴れぬ「停滞の霧」」(2016/9/30 17:47配信)
以下に全文をペーストしてしまうが、本体のセブン‐イレブンの絶好調さに対して、その他の事業部門は、火の車だというわけだ。6月に緊急出版された日経新聞社編の『さらば、カリスマ』でも、最終章で、「井坂丸、羅針盤のない船出」とされたいた。いまさらながら、この荒波の中、誰が羅針盤をもって7-11を操舵するのだろうか。
そもそも、7&iHDGSとしてみると、セブンは小売りの勝ち組ではない。総合スーパーのヨーカ堂などは、21世紀に入ってから15年間も停滞を続けている。鈴木元会長が仕掛けたM&Aは、ほぼすべてが失敗だったはずだ。
約4年間続いてきた、セブン‐イレブンの既存店増収の記録が、おそらくは今月で途絶えることになる。天候不順が原因ではない。CVS部門の業績が伸びきっているからだ。店頭や開発の様子を見ると、現場には超繁忙による疲労感が漂っている。
既存店前年割れが大きな転換点になり、セブン&アイ全体が停滞に入ると思われる。その予感が、以下の記事で確認できる。
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セブン&アイ、利益半減 晴れぬ「停滞の霧」
「小売りの勝ち組」とされてきたセブン&アイ・ホールディングスがつまずいた。30日には2017年2月期の連結純利益が前期比50%減の800億円となると発表。大幅な下方修正の原因は、不振の百貨店とスーパー事業で606億円の減損損失を計上すること。巨額の減損計上をきっかけに出直せるのか――。市場は確信を持てていない。
■「これで終わるか分からない」
業績下方修正を招いた百貨店事業は、リストラの真っただ中にある。傘下のそごう・西武は今期既にそごう柏店(千葉県柏市)など4店舗の閉鎖を決定。その他の店舗でも苦戦が続いており、不振店舗に関して減損損失122億円を計上する。
セブン&アイは2005年にミレニアムリテイリング(現そごう・西武)を買収して百貨店事業を一気に拡大しようとしたが、買収に伴って計上していたのれんのうち、334億円を減損損失する。つまり、乾坤一擲の大型M&A(合併・買収)が当初のシナリオ通りの利益を上げられなかったことを意味している。
もう1つの元凶が、創業期から続くスーパー事業。イトーヨーカ堂は不良在庫を処分するため下期に値下げなどを予定しており、これが110億円粗利を押し下げる。さらに、イトーヨーカ堂の店舗についても150億円の減損を計上する。
企業会計の仕組みを考えれば、不振事業で減損を計上したり、在庫処分したりすれば翌期以降の費用が圧縮され、利益が出やすくなる。それでも、セブン&アイの場合、来期以降に「V字回復」を果たせるとは限らない。株式市場では、「店舗の収益力がすぐに回復するような施策が今のところ、見当たらない。本当に減損の計上がこれで終わるのかは分からない」(小売り担当の大手証券アナリスト)という声が出ているのだ。
■注目は「10.6」
実際、イトーヨーカ堂は昨夏にも在庫圧縮のために90億円の費用を計上したが、今期にも追加の対応を迫られた。かつて衣料品に強かったイトーヨーカ堂がファーストリテイリングが運営するユニクロなどの専門店に押されるという構図は1990年代から続いている。
イトーヨーカ堂は今年、20店の閉店も予定しているが、抜本的なてこ入れ策は見えていない。在庫の圧縮や閉店だけでは縮小均衡だけが続くことは明らかだ。
セブン&アイは10月6日に予定されている2016年3~8月期の決算発表で、てこ入れ策を打ち出す。鈴木敏文前会長から経営を引き継いだ井阪隆一社長が構造改革策を発表するとみられる。
期待通りの計画を打ち出し、計画通り実行できるのか。スーパーや百貨店の現状が半年前以上に厳しくなっている中で、再成長のストーリーを見せられるか。「10.6」まで1週間を切った。
(中尚子)