学生読書感想文優秀者8名を2回に分けて掲載する。
まずは3年生の3名です。
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「MUJIに学ぶ海外進出」丸山 梨花子
私は今まで無印良品がこんなにも世界中で成功を遂げ、人々から利用されていることをあまり知らなかった。真相を確かめるべく、本書を読む前に、私の留学時代の友人7人(マレーシア、韓国、中国、台湾、インドネシア人)にMUJIについていくつかの質問をしてみた。すると、驚くべきことに全員がMUJIの存在を知っており、実際に商品を買ったことがあったのだ。中には、見かけたら必ず立ち寄るという友人もいた。
この結果に初めは少し驚いたが、本書を読み進めていくうちにMUJIが世界でも通用している理由が分かり納得した。MUJIは失敗と経験からたくさんの教訓を学び、勝ちパターンを築き上げたのだ。そしてこの教訓の中から海外進出を目指す上で、特に学ぶべきであると感じた3つを挙げたい。
1つ目は「仕組みをつくること」、2つ目は「ぶれないコンセプトとオリジナリティの獲得」、最後に「国や地域の特徴を理解すること」である。これらを元にMUJIから学ぶ海外進出のヒントを見ていきたい。
まず、1つ目の「仕組みをつくること」についてである。MUJIは11年間の赤字時代の経験や失敗を活かして様々な仕組みを作り出した。
一番良い例は出店マニュアルであろう。過去の出店データを基に、出店基準表を作りそれにチェックしながら点数の高い場所を中心に出店していくというものである。これにより、誰でも高精度で出店場所を見極められるようになった。他にも、家賃比率の設定や業務基準表であるMUJIGYRAMが挙げられる。
私が感心したのは、これらの仕組みは常に見直され更新されていることである。出店マニュアルは予想より売り上げが高くても不成功と見なし、MUJIGURAMはスタッフの提案を基に新しい項目を増やすことでさらに正確性を上げるのだ。
このように過去の経験から徹底的に学びそれを共有することは、不透明な海外という場で強力な道しるべになるに違いない。
次に2つ目の「ぶれないコンセプトとオリジナリティの獲得」である。無印良品の特徴を考えた時、真っ先に思い浮かぶのはシンプルであるということだ。しかし、商品も店内もシンプルでいて何とも言えない特徴と統一感があり愛着がわいてしまう。
その原因はぶれない商品コンセプトにあった。全ての無印商品の根源にあるのは「社会へのアンチテーゼ」、「商いを通じた社会貢献」だそうだ。ここの核の部分は何があっても絶対に壊さない。この一貫した核の部分が商品、店内、スタッフ、広告活動全てに浸透しているからこそ、無印らしさが生まれるのだという。商品のシンプルさもただシンプルというだけでなく、素材の良さや質を追求した哲学に基づいた上でのシンプルであり、かつ機能的でもある。
そして、無印良品のオリジナリティは商品を通してライフスタイルを提案している点である。確かに、無印良品といえば文房具から食品、衣類や化粧品まであり生活に必要なものは全て揃う。暮らしに関わるすべてのものから、商品に込めたメッセージを通して生き方まで提案しているのだ。こういった無印良品のコンセプト・生き方の提案は日本人に限らず、世界中全ての人の心に刺さるものがあるはずだ。
MUJIが海外でも愛される魅力は、しっかりとした商品コンセプト・美しく機能的なデザイン・日本ブランドの安心感、この3つが完璧にそろっているからだと私は思う。世界で戦うには、やはり商品やサービスのどこかに確立されたオリジナリティが無いと戦っていくのは厳しいといえる。
最後に「国や地域の特徴を理解すること」についてである。
私の留学時代の友人(アジア5か国)の中でMUJIに対する印象はかなりばらつきがあった。商品については、お菓子のイメージが強い人もいれば服中心のお店という人もいた。また価格に対しても、そんなに高くないという人とやっぱり日本のブランドだから高いという二派に分かれた。アジアの中でも、文化や経済状況の違いがあり、当然ニーズも異なってくる。
MUJIでは国や地域別に出店スピードを変えたり、置く商品の比重を調節したりと、それぞれに合った戦略がとられている。海外のものには保守的なヨーロッパはじっくりと、SNS等で口コミが広がりやすく購買も激しいアジアには少し早めに出店するといった具合である。
各国や地域で、文化や国柄・人柄は大きく異なる。筆者が述べているように『世界にグローバルマーケットは無い』のである。それぞれの特徴をうまく掴み、戦略をたてなければいけない。
このようにMUJIから学ぶ海外進出のヒントをみてきた。私はマレーシアに語学留学した時、実際にクアラルンプールのMUJIを訪れたことがある。Pavilionという国内最大のショッピングモールに入っていたのだが、国を超えたくさんのお客さんが商品を見ている光景が何とも印象的であった。
海外進出が当たり前になった今だが、MUJIのように成功している企業から得られるものは大きなヒントになるに違いない。これから日本の企業が、日本の文化と共にもっと世界に広がっていくと思うと、日本人としてとても誇らしい。
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「『無印良品が世界でも勝てる理由』を読んで」栗原 一
『無印良品が、世界でも勝てる理由』を読んで、良品計画が世界に通用しているメカニズムを知ることができました。そのメカニズムには、読書しながら共感する部分がとても多かったです。改めて、無印のもつコンセプトが無意識のうちに多くの人に共感されている理由がわかりました。なにより、私は無印ファンなので、さらに共感の度合いが高まったように思います。そのうえで、今回は二つの切り口から感想を述べたいと思います。
ひとつ目は、無印良品のとる戦略やスタンスは、マーケティングのみならず、生活のいろいろなところに当てはめて考えても、とても参考になる、ということです。
二つ目は、私が無印ファンである理由を、無印のブランドコンセプトの側からひも解いてみたいと思います。
ひとつ目について述べたいと思います。この本は、企業はいずれ海外に進出すべきであり、海外で成功できる企業は国内でも生き残れる、と説いています。そして、良品計画が成功するためにとってきた戦略や考え方を、事例をもとに説明しています。特に海外における人事や様々なリスクにおいては、具体的にわかりやすく述べられていて、企業が海外に進出する際の指南書であると思います。しかし、学生である私が海外に出店する、といったような機会はないです。そこで、これから社会に出ていく自分と、無印の海外進出とを重ね合わせて考えてみると、参考になる部分が多くありました。
例えば、無印は「禅の精神」をコンセプトにしています。無駄を一切排除した質素で機能的な商品を通して、ライフスタイルを提案しています。わびさびの精神、いわゆる、日本らしさを武器にして成功してきました。無印のもつ唯一無二のこのスタイルこそが、無印の快進撃の原動力に他なりません。つまり、自分の強みを理解し、自分のスタンスは崩さず信念を貫いていけ、ということです。また、海外では「郷に入っては郷に従え」が重要です。その国のやり方で、状況にあったオペレーションが必要不可欠になります。つまり、新しい場所に早いうちに順応し、様々なイレギュラーに柔軟に対応していかなくてはいけないことを示しています。
このように、これから社会に出ていく自分と重ね合わせても、重要なことは共通していると思います。無印が失敗を繰り返して、そこからパターンを見つけて基準を作り、仕組みを整えていったように、そのような時期を経て自分の勝ちパターンを見出すことは大切です。
次は二つ目です。無印良品は大々的な宣伝を行わず、ブランドの持つ独自性と、商品の機能性や普遍性を武器にファンを獲得、魅了し、その数を今も増やし続けています。私も先に述べた通りファンです。
実は最近、筆箱を無くしてしまいました。そこで、新しい筆記用具を無印で揃えてもいいかな、と思い、昨日近くの無印良品店に行きました。この本を読んだうえで店舗に行ったからか、いつもよりも、無印が掲げるコンセプトを全身で感じ取りました。
お店の雰囲気や商品陳列、内装など多くの要素から「禅の精神」を感じました。私が無印で筆記用具を揃えたのは、無印“が”いいからではなく、無印“で”いいからなのです。まさしく、商品と同時に、無印が提案するライフスタイルを買っています。
企業側から見れば、無印が求めている顧客ターゲットそのものでしょう。しかし私はまだヘビーユーザーではありません。店舗を訪れるのは月に一度くらいです。このような顧客を、更にコアなファンにすることができれば利益が伸びるのではないかと思います。
私が今まで無印で購入したものは、文房具や食品などです。しかし、将来家を買うときに無印の家具はチェックしたいと思っているし、昨日ちらっと見たデニムパンツも4000円くらいだったので、一本欲しいなと思います。私の家の近くの店舗は面積が広く商品は多岐にわたるので、見ていて飽きないのです。
生活に役立ちそうなものやシルエットが好きなもの、魅力的な機能をもつ商品を手に取ります。このとき、無意識的に自分のライフスタイルをイメージしているのでしょう。次はこれが欲しいな、と考えながら店を回る楽しさは買い物の醍醐味のひとつであり、無印の場合はそれによる満足感が大きいのだと思います。
つまるところ、無印の術中に私ははまっているのかもしれません。
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「『無印良品が世界でも勝てる理由』を読んで」中洞 葵
この本を読むまで、私は正直、無印良品がこんなに世界進出をしているとは思っていなかった。個人的に抱く無印良品に対するイメージは「質が良くてプチ高級品」というものであったのだが、実は無印良品には奥深い概念があった。それが多くの国に受け入れられ愛されていったが、それぞれの国での愛される理由には違いがあるのではないかと思う。
まずヨーロッパを見てみる。
中でもフランスはMUJIの持つ「日本色」、つまり禅や茶道などのような日本の美意識や精神性の高さ、といった哲学や思想を世界で一番理解し共感している国の一つだという。フランスで大切にされている、「気に入った品を長く丁寧に使う」という考えにマッチするということで、世界で初めて「ファウンド・ムジ」を扱ったりもした。また、パリを始めとしたヨーロッパの都市はファッション最先端で、より斬新でユニークなものを求める。私自身、女性ファッション誌などでパリコレの写真を見たとき、その奇抜さに驚いたことがある。それがリーマンショック後に、「シンプルなものが良い」と思う人が増え、原点回帰したのだという。
また、スローフード発祥の地であるイタリアでは、ファストフードに対するアンチテーゼの概念が、無印の持つ「ファストフードのような商品は作らない」という考え方に共通している。
同じ欧米でもアメリカは大きく違って、無印の持つ概念というより、デザイナーの名前を明かさなかったり大きな宣伝をしない、そんなビジネス性に注目している。また価格と品質でいい品かどうかを決める国民性により、メイド・イン・ジャパンという点で信頼されている。
こうして国ごとに考え方や概念が違う中でなぜ無印は愛されるのか。
それは無印良品の商品が、シンプルであるがゆえに各々が自由に使い道を考えられる、自在性を持つことにあるといえる。この本にも出てきたピルケースは、私もヘアゴムやネックレスを入れるなどして活用している。海外でも低価格・高品質なことで人気のあるダイソーの商品は、同じような形でも無駄に絵柄があったりカラフルだったりして、あまり多用途には使いにくい部分もある。その点無印の商品はシンプルかつ使いやすい。自分で使いたいように工夫する余地があるという「無印良品らしさ」が、どの国でも受け入れられる理由ではないかと思う。また、そのシンプルさによって、幅広い客層に受け入れられるのも、成功の秘訣なのかもしれない。
国ごとにニーズが違うという例で、それぞれの国の売れる商品・売れない商品を第4章でまとめていた。私は無印良品のバリエーション豊かで味も美味しいレトルトのカレーが大好きで世間一般でも人気の商品なのに、それがアジアではほとんど売れないことを知ってとても驚いた。向こうではそもそもレトルト食品を食べる食文化がないことが理由であったが、こうした文化やニーズの違いを理解しその国に受け入れられる経営戦略を立てていかなければならない。ただ自分たちの持つ考えややり方を押し付けてみても海外ですべて通用するかといったらそうでもない。
だからこそその国の常識を見つけ出し、それに合ったオペレーションに変えていく力が求められる。それができる人材を見出す能力も企業には求められるのである。
そして一番衝撃を受けたのは、「グローバル社員はいない」という言葉である。俗にいうグローバル社員とは、実はコミュニケーション能力に長けた人材を指すのだという。
コミュニケーション能力に言語は関係ない、いかに自分の考えを伝えることができるか、また、人に伝えられるだけの確固とした考えを持っているか、が重要になってくる。
私も来年は就活が始まるということで色々話を聞いたり就活本を読んでみたりしているが、一貫して言えるのは「個性がある人間」が求められるということであった。マニュアルに縛られず自分の考えをしっかり持つことが一番だと聞いた。
無印良品は、無印良品らしさを持って日本でも海外でも成功してきた。私も無印良品のようにわたしらしさを持って、海外にも通用する人材になれたらと思った。
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