はじめてのハリーポッター、はじめてのユニバーサルスタジオ・ジャパン、はじめての絶叫マシーン

 先週の土曜日(5月28日)のこと。案内役の小川順子さんとは、ユニバーサルスタジオの正面で待ち合わせることになった。大阪駅から環状線で西九条まで。そこでユニバーサルシティ行きに乗り換えるらしい。こんなに早い時間に京都から電車で出るとは、想定外の展開である。

 「一番人気の新アトラクション フライングダイナソーに乗るなら、8時待ち合わせになります!」
 絶叫マシーン好きの順子さんに半ば脅迫されて、新アトラクションのフライングダイナソーに乗せられることになった。わたしは、高所恐怖症な上に、ちょっとした揺れでも酔っ払ってしまう。これまでも、房総のいさき釣りで船酔いをして、船の縁から富士山が逆さに見えたことがあった。
 そもそもこの関西ツアーは、三ヶ月前に『新潮45』から頼まれた原稿(「東京ディズニーリゾートを蝕む異変」2016年6月号)を書くために企画したものだった。TDRとの比較で、USJの現地を見ておきたいと思ったからである。
 大阪在住の女性のなかで、調査のお手伝いを頼めるのは、小川順子さんしかいない。彼女は会社経営(「翌日配達お花屋さん」)をしていて、わりにスケジュールが自由になるからだ。しかも、事前の会話から、USJのヘビーリピーターらしかった。アトラクションに詳しくないと、パークでは無駄な時間を過ごすことになる。ここは、プロフェッショナルにアテンドしてもらうが勝ちだ。

 事前の準備も、彼女は抜かりがなかった。USJの入園料は、大人7400円。しかし、アトラクションの待ち時間を考えると、有料のファストパス(REXPRESS)を買ったほうが無難だ。ローソンのロッピー君で、ひとり6100円を支払って、「EXPRESS4スリル」を二人分買ってもらった。4つのアトラクションに優先して乗れるチケットである。
 
 優先権がある<アトラクション>は、
 ○16:40~17:00 フライング・ダイナソー
 ○ハリウッド・ドリーム
 ☆ジュラシック・パーク・ザ・ライドorジョーズ
 ○バックドラフト

 フライングダイナソーには時間指定(16:40~)がしてある。その理由は、現地に行ってみて納得できた。
 ふつうのフリーでの待ち時間が180分~210分だったからだ。それが、ひとり6100円を支払うと、ほぼ待ち時間がなしで乗れる優先権が与えられる。2時間を1500円(≒6100円÷4)で買い取るわけだ。遊園地に遊びに来ているのに、自分が楽しむ時間に加えて、その倍の”時間節約料金”を支払う仕組みだ。 
 さすがに関西人。お金を持っている人からは、とことん巻き上げる。そして、ない人からも徹底的に巻き上げる。USJの料金体系は、実にエグクできている。「開業当初は”年(間)パス”が、入園料の2倍だったのが、いまでは2.5倍に値上がりしています」(順子さん)。
 年間パスを持っていると、何度でもUSJにやって来る。開業10年目くらいからだが、USJの人気が高くなった。混雑度を緩和するために、値上げしたのだろう。TDRと異なるのは、アトラクションの一部が有料になっていることだ。年間パスポートの客からも料金を取るために設定された仕組みだ。これにEXPRESSの分を加えると、一人の来場者から倍のお金を巻き上げることができる。

 天候は晴れ。土曜日だから、客待ちがすごい。8時にゲート前の列に並ぶと、予想より早く門が開いた。一時間前倒しの開場である。ラッキー。これで、閉園時間までの12時間、思う存分にUSJが楽しめる。
 入場した人のほとんどが、ハリーポッターのエリアに向かって走っている。人気のエリアには、入場制限がかかるのだそうだ。「ピーク・イン・パーク」(@TDRの入園制限)が、USJではエリアごとに設定されているのだ。わたしたちも、まずはハリーポッターのエリアに向かった。これも、彼女の指示通りの行動である。
 2週間前から、くどいくらいにアドバイスされていた。「先生、ハリーポッターのDVD、最低1本は見てきてくださいね。ストーリーがわからないと、楽しめないですよ!」
 その意味は、最初のアトラクションに乗って納得できた。第一話「賢者の石」で、ハリーが空を飛ぶゲームがそのまま3Dで体験できるからだ。しかし、あまりに映像がリアルすぎて、ゴンドラから降りると気持ちが悪くなってしまった。まずは1敗である。

 詳しく書くと長くなるので、この先の途中は省略する。
 午後から小雨が降って、ユニバーサルREーBOOOOORNのパーティ(パレード)が中止になった。この不運を除くと、EXPRESS4のおかげで、わたしたちは、待ち時間が長い4つの乗り物を完全制覇できた。とりわけ、絶叫マシンでわたしが死にそうになったのは、ハリウッド・ドリームだった。
 あまりの恐怖に、わたしはマシンが降下して大きく回転する途中は、ずっと目をつむっていた。とてもではないが、2度と乗りたくはない。約束なので、”目をつむって”一瞬だけ我慢したのだった。それに比べると、フライング・ダイナソーは、イージーだった。もしかすると、USJ滞在の1日で、絶叫マシンに慣れてしまったからなのかもしれない。
 だからといって、富士急ハイランドや長島温泉(@中京地区にあるらしい)の絶叫マシンに乗るかと問われれば、やはり「すいません」とお断りするだろう。「もう、これで十分です」と。
 
 なお、園内の商品販売に関しても、USJのほうがTDRより商売上手である。各アトラクションに併設されているショップで販売されている商品は、コンテンツとうまく連動している。映画の物語に登場した食べ物や雑貨が、上手に商品化されている。とはいえ、その値付けがまたすごい。
 ハリーポッターの魔法の杖は、正価が4900円。ハリーの杖をもっていないと入場できないエリアがあるから、こんなに高額に設定できるらしい。サンザシとかオークとか、細かく材料の名前が書いてはあるが、どうみてもただの木片である。細工のための工賃を入れても、原価は5%程度(250円)だろう。またまた、大阪商人はぼろもうけである。
 そして、わたしが好きなスヌーピーのショップでは、驚くべき体験をした。開園15周年記念で、スヌーピーとUSJがコラボ商品を企画して販売していた。キーホルダーやマグカップ、コースターなどのグッズが販売されていた。しかし、どの商品でも、スヌーピーの顔が、とてもスヌーピーに見えない。デザインがとても雑で、かわいいわんこの顔がただの犬にしか見えない。
 たくさんお土産を買って帰ろうと思ったものの、あまりの落胆。がっかりの結果は、小さなキーホルダー(@600円)をひとつだけ抱えて、スヌーピーショップを出た。
 しかし、USJは、雰囲気だけからいえば、なんでもありだ。TDRの「夢の国」とは大違い。やはり上品さと雰囲気だけは、TDRに軍配が上がる。洋画のコンテンツの編集型遊園地なのだが、邦画のアニメあり、任天堂やコナミのゲームなど、なんでもありの世界。このどがちゃがの空気を吸ってみて、「ディズニー、もっと頑張れよ!」と言いたくなった。

 夕方8時のパレードを楽しんで、土曜日の前日パーティーは、お開きとなった。順子さん、まるまる1日、絶叫マシンとUSJの取材にお付き合いいただき、ありがとうございました。今度また上京の節は、わが下町をご案内させていただきます。うなぎの藤田屋や土手の伊勢屋でのお食事を楽しみにしています。