愚策か、絶好のタイミングか?: 東京ディズニーリゾートの入園料が500円値上がりして7400円に

 TDRの入園料が3年連続してアップする。オリエンタルランドから、4月からの値上げが発表になった。2015年のJCSI調査では、TDRの知覚価値が大幅に低下していた。当然のことながら、CSも二年前と比べて約9点の低下である。値上げで客離れが加速されるだろうか?



 値上がり後の入園料は、7400円になる。オリエンタルランド(広報)のコメントを読んで、わたしは唖然としてしまった。自前の調査によると、「入園料を値上げしたのに客数は減らなかった。そして、来園者は次回もまた来たいと言っている」。OLCの分析はそうなっている。しかし、わたしたちの調査では全く反対の結果だった。CSもロイヤリティも下がっている。
 それはそうだろう。マクドナルドも、”自社のコア顧客”を調査対象にしていた。金持ちと離反しそうにない顧客だけを調べていたらそうなるだろう。社内調査を信じて、メディアが情報をそのまま流してしまうのはとても危険である。社員がデータを操作することもあるからだ。上司に悪い報告はしたくないものだ。
 ネットや新聞の有識者たちの意見を見ていると、TDRの値上げに対する賛否は真っ二つに分かれている。一般人は、どちらかというと「今度の値上げでもう行かなくなるかも」と言っている。しかし、コアなファンやオピニオンリーダーと言われるひとたちは、むしろ値上げにエールを送っている。
 日本経済新聞やNEWSPICKSなどは、賛成論者(冷静な値上げの経営判断だ)が主流である。もっとも、広告をたくさん出してくれる企業に対して、厳しいコメントや都合が悪い情報は流さないものだ。わたしが社主だとしたら、やはり企業の見方についてしまうだろう。わたしたちは、メディアが流す情報の出し方の背景を知るべきだと思う。

 これからは、個人的な感想である。必ずしもデータに基づいているわけではないので、主観だとして読んでいただきたい。大いに外れることもあるだからだ。
 わたしには、TDRが永遠に顧客を引き付けて、来場者が増えつづけるとは思えない。マクドナルドも同じだった。「夢の国」で差別化ができているという慢心は怖い。何年か振りで昨年の12月にTDLに行ったが、庶民が7400円を払っていく場所ではなくなったと感じた。ほかの人はそう思っていないと思う。あくまでも、わたしの価値観である。
 一部の金持ちは、「ホテル代も含めて、その程度の値上げは仕方がない。庶民は来れなくなるから、乗り物も空くようになるからちょうどよい」と言っている。しかし、人件費のカットで利益を出して、次に何をしたいのだろうか? 新しい夢を提供するために、アトラクションエリアを拡張する。そのために資金が必要だから?
 本当にそうだろうか? いまさらながら思うのだが、日本人がアメリカ文化を必要としているだろうか?米国文化のさらなるコピー(洋風のテーマパーク)はもういらないのではないか。もっと日本的なもの(和風のテーマパーク=和モダンな庭園)が欲しいと思うのは、わたしだけだろうか? 千葉の舞浜より、静岡の富士山や北海道のニセコに、インバウンドの客は来る時代が来ているのに。

 4か月先の6月になれば、香港につづいて上海でも、ディズニーランドが誕生する。そのうちに、北京にもディズニーランドができるだろう。となると、数年先になれば、ディズニーはアジアでは普通のものになる。コモディティには価値がなくなる。日本人の庶民は、確実にTDRから離れていくことになる。
 わたしが主張しているのは、値上げの問題ではない。ディズニーに付加価値がついている限りは、値上げをしてもよい。しかし、ミッキーのぬいぐるみの中にいるのは、TDRでは学生アルバイト(かなり訓練はされているだろうが)ではないだろうか。それに比べて、劇団四季や宝塚歌劇団では、きびしい鍛錬を積んだプロフェッショナルの役者が、ミッキーやミニーではなく、ライオンキングやアンサンブルのシマウマを演じている。
 劇団四季とTDRの値段が接近していることを、皆さんはご存じだろうか? 劇団四季は、7年前にS席の料金を12550円から9800円に”値下げ”した。「四季の会」の会員だと、1000円割引で鑑賞券は8800円になる。それに対して、4月からのTDRの入園料は、7400円になる。7年前の2009年では、劇団四季と比べて、TDRの入園料は約半分(5800円)だったのである。だから、お値頃感で、圧倒的な差がつき始めているわけである。

 昨夜遅くに、以上のようなメールを友人に送ったら、即座に返事が返ってきた。「上海は、もっと高くなるでしょうね」と。
 きっとそうだろう。米国と中国では、エンターテインメントの文化的な成熟に大きな格差があるからだ。申し訳ないが、かの国にはサービスという概念がない。だから、いまのディズニーのクオリティで充分に行けると思う。
 TDRがUSJにお客をとられたのと同じ理由で、中国人は舞浜には来なくなる。関西方面から、大人数の家族で移動する費用がばかにならないからだ。それと同じ理由で、爆買いのブールが去るだろう。数年後には、中国本土や台湾からの客がTDRには来なくなるだろう。
 その結果として、舞浜のパークは日本人だけになるというのがオリエンタルランドの予測かと思いきや。HPを見ているかぎりでは、同社の将来予想は、それでもなおインバウンド客を当てにしているようなのだ。新しいパークの魅力で、引き続きインバウンド客の増加を予測しているのである。