【分析レポート】 東京ディズニーリゾートへ行ってきました! 彼女たちの感想は、、、

 「販売促進研究所」(静岡市:杉山社長)に依頼して実施した「東京ディズニーリゾート体験」の結果である。2014年に消費者モニター(N=38人)に依頼したものである。サンプル数が少ないため、「読売オンライン」(2016年1月)には掲載されないことになった。



 しかし、興味深いので、削除されてしまったオリジナル原稿の部分を、そのままの形で公表する。もちろん、サンプル数が少なすぎて、統計的な有意性に問題はある。が、だいたいの傾向はその通りではないだろうか?
 ちなみに、ブログ記事の完成版「夢の国で起こっていること:東京ディズニーリゾート(TDR)に異変が(仮)」は、『読売オンライン』への掲載が大幅に遅れている。おそらく、掲載は正月明けになると思われる。筆者の衝撃的な未来予測に、編集部が早期の発表に二の足を踏んで、慎重に原稿をチェックしている結果である。

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 「2015年度 日本版顧客満足度調査」(JCSI)で、なんと、TDRが総合10位から転落!

 <TDRの顧客満足度に異常が>
 日本の小売サービス32業種・上位企業約400社を対象にしている日本最大規模の消費者調査(日本版顧客満足度調査)で、CS上位企業のランキングに大きな変化が起こった。2009年以来、劇団四季とトップを争ってきたTDR(東京ディズニーリゾート)が、トップ10位のリストから外れてしまったのである(図表1)。
 7月の調査で、TDRの顧客満足度(CSI)は77.9点。前年度(82.7点)との比較では、4.8点の大幅なダウンである。全サービス業でトップだった2013年度(86.8点)からでは、なんと8.9点の下落である。エンタテインメント部門の中での順位も、今年度は宝塚歌劇団に抜かれて、はじめて第3位に転落した。また、テーマパーク業界の競合2社(USJとハウステンボス)との満足度の差も急接近している。
 “夢の国”で何が起こってしまっているのか? 東京ディズニーリゾーが提供しているサービスの実態と満足度が低下した原因について考えてみたい。

 (これ以下の記述は、来週公表予定の「読売オンライン」の記事で、、、  )

図表1 顧客満足の上位企業・ブランド
 <2014年順位>         <2015年>(暫定順位)
   企業・ブランド名   CSI      企業・ブランド名  CSI
1 劇団四季        84.6   1 劇団四季     87.5
2 東京ディズニーリゾート 82.7   2 宝塚歌劇団    84.5
3 宝塚歌劇団       82.1   3 コープ共済    81.9
4 コープ共済       81.9   3 ヨドバシ.com    81.9
5 都道府県民共済     81.0   5 帝国ホテル      80.9
6 amazon.co.jp      80.7   6 都道府県民共済  80.7
6 オルビス        80.7     7  住信SBIネット銀行 79.8
6  ヨドバシ.com      80.7     8  リッチモンドホテル 78.6
6  帝国ホテル        80.7     9  クックパッド         78.5
10 スーパーホテル     79.8  10 オルビス      78.4
                                                 11 東京ディズニーリゾート 77.9
*第5回調査(2016年1月実施予定)までの暫定順位

  (中略)

 <“夢の国”で進行していること>
 前述のTDRについての記述は、ちょうど一年前のものである。この現象を裏打ちできる来園者へのアンケート(ネット調査)を独自で実施している。静岡県の消費者モニター調査(2014年10月23日~30日実施、N=38)で、「過去5か月間(2014年4月~9月)に、TDR(東京ディズニーランドか東京ディズニーシー)に来訪したことがある人」の実際の行動と満足度(CS)を調べている。
 なお、このアンケート調査は、「販売促進研究所」(静岡市、杉山社長)の消費者モニター80名に送付したもので、回収率は約45%(N=38)と非常に高かった(図表12)。静岡在住でかつ情報感度の高い利用者たちではあるが、約3分の2がTDRを1年以内にリピートしている。二年以内にすると、約9割の利用者がTDRに再来訪していることは驚きである。この事実からだけでも、東京ディズニーリゾートの人気の高さが想像できるというものである。
 静岡のパネル調査では、全体の満足度(CS)だけでなく、前回の施設利用時と比べて、TDR内の乗り物やレストランの待ち時間がどのように変化しているのかも同時に調査している。また、施設を利用した後で自由記述を集計してある。定性的にもCSが落ちていることが判明した(図表13)。のちに詳しく紹介するが、JCSIで詳細に調べているサービス品質データ(SQI)と一致していることが確かめられている。

図表12 消費者パネル特性(N=38)

1 男女比  男性  女性  
      3   35  
2 年齢構成 20代 30代 40代 
      2  22  14 
3 利用施設 ディズニーランド  ディズニーシー  両方 
       27        10       1 
4 滞在時間 ~9時間 10~12時間 13時間~ 平均滞在時間
        8    14     16   13時間20分
5 前回訪問  初めて  1年前  2年前  それ以上
        8    20     6    4

 ここで、消費者モニター調査の結果を見てみることにしよう(図表13)。
 前回利用から約1~2年の時間を隔てて、全体の施設利用満足度は、9.1点から8.7点に0.4ポイント落ちている。この結果は、JCSI調査(2012年~2014年)で、顧客満足度(CSI)が、2013年(86.8点)と2012年(85.5点)から、2014年(82.7点)に約4%ダウンしていることと正確に符合している。
 具体的な指標として、TDRの中で利用できた乗り物の数を記憶にしたがって、自記入字でカウントしてもらった。前回訪問時に乗れた乗り物の数(平均10個)が、今回(2014年)には、平均7.1個に減少していた。乗りたくても乗れなかった乗り物は、1.2個から1.7個に増えている。乗り物の平均待ち時間は微増(52分から54分へ)。乗り物ほどではないが、レストランの待ち時間も若干長くなっている(15.7分から17.4分へ)。図表13には示されていないが、レストラン利用者の割合が減少している。

図表13 全体の満足度と施設利用の比較

         今回(N=38) 前回(N=30)
1 全体の満足度      8.7    9.1
2 乗れた乗り物数     7.1    10
3 乗れなかった乗り物数  1.7    1.2
4 乗り物の待ち時間    54分   52分
5 レストランの待ち時間  17.4分  15.7分

<自由記述の回答から、利用者の不満と要望>
 ほぼ全員(「特になし」の2人を除いて)が自由記述欄に、利用施設とサービスに関して何らかの意見を書き込んでいる。回答があった36件を「コンテンツ分析」(書き込まれている自由意見の内容をキーワードで分類)してみると、以下のような傾向があることがわかる。

(1)「料金」(の値上り)に対する不満(18件)
 利用客の50%が、利用料金(とくに子供料金)の高さを指摘している。家族での利用が多いことから、3~4人での来場者がほとんで、コストパフォーマンスが良くないことが指摘されている。
【典型例#1】: 正直パスポートの値上がりはきつい。一回行くのに10万は絶対使うので一年に何度も行けない。何日か前に予約したら割り引きになるとかあれば嬉しい。

(2)乗り物やトイレ、園全体の「混雑」に関する要望(8件)
トイレと乗り物の待ち行列に対する不満を約25%のひとが表明している。全体の満足度が高い分だけ、長い行列待ちに関してはあきらめ気味でもある。
【典型例#2】:施設に入場すると何度行ってもワクワクします。ですが全体的にコストパフォーマンスは良くないと思います。並ぶ時間が短かければまた行きたいのですが、夏は体力的にきついです。

(3)レストランの「食事」についての不満(8件)
飲食の持ち込みが禁止されているので、園内で食べ物を購入しなければならない。その分、サービスと食事の内容に関しては、多くの利用者から不満が書きこまれている。
【典型例#3】:幼児メニューがもう少し欲しい。仕方ない事だと思うが、レストランの料理の美味しさのレベルに価格が合っていない。高い。

(4)「スタッフ」(キャスト)の対応と「雰囲気」が変わったことの指摘(10件)
サービスに対するポジティブな指摘が5件、ネガティブな指摘が2件、両方を指摘しているのが2件。
【典型例#4】:①スタッフさんはとても親切で明るくて気持ちがいい。②落としものをしてしまい、サービスセンターに問い合わせしたところ、後日自宅まで送料無料で届けて下さいました。
【典型例#5】:①以前の方が雰囲気が良かった気がします。②ディズニーシーのキャストの対応が悪く悲しかったです。
【典型例#6】①なんでも高いですが、やっぱり夢があるしスタッフの仕事振りは流石です。

(5)自由記述のまとめ
 自由回答の分析から言えることは、TDRの利用者は、来園前から“夢の国”に大きな期待を抱いて来場していることである。直近の二度の値上げは、全体的な満足度を台無しにしてしまうほどのことではないが、さらに混雑度が高まりスタッフの対応が悪くなることがあれば、再来訪に影響がでることが予想できる。

 (後略)