昨日の午後、六本木ヒルズ南館1F(ヒルズキッチン)にある福島屋さんを見てきました。午前中に、日本マーケティング協会で会議があったので、そのついでに寄らせていただきました。福島徹社長には前日から電話して、「明日行きますよ!」と言ってありました。
午後13時すぎで、ランチを買いにやって来るお客さんが引く時間帯。にも関わらず、4台のレジ前には、数人の待ち行列ができている。一時間当たりの客数は、この時間帯(平均的な時間帯)で200人(=60×4×0.8)と見た。営業時間が平日8時~20時、土日10時~21時。一日11~12時間の営業だ。
「おかげさまで、昼の時間帯の後もポツポツ。土日も人が途切れませんね」(福島社長)
一日の来店客は、200人×10時間=2000人。客単価はどれくらいだろうか?ふつうのSMならば、この立地だと1500~2000円だろうが、お昼の時間帯でもあり、そこまでは行っていないように見える。
惣菜の比率が高いと、客単価は低くなる。ただし、想定以上に来店客は増えるだろう。ヒルズという立地から考えても、ビル内の位置関係からも、ここは「オーガニックデリカ」の店になるのかもしれない。
デリカを購入して「おいしい!」と思った自然食材を、同じフロアのスーパーのコーナーで買って帰る。「内食をしてもらいたいんだよね」(福島社長)の狙い通りになりそうだ。産地や品種を吟味してある直送野菜だから、ここの商品は、きわめつけ新鮮でおいしいのだ。
いま都心に大量出店している「ミニスーパー」(イオンの「まいばすけっと」や「マルエツプチ」)や野菜や惣菜を厚く品ぞろえした「生鮮コンビニ」の逆を行く戦略だ。そちらは、早晩価格競争でたいへんになるだろう。こちらの路線のほうが、明らかに競争力がありそうだ。
さて、いつものフィールドワークのように、勝手に売り上げを推計してしまおう。
一日300万円の売上だとすると、年商で10億円。400万円あれば、13億円を超えるだろう。バックルームのスペースが大きい店だが、惣菜比率が高いのだから、バックルームを広げたのは正解だろう。バックルームを含んで、店舗面積は250坪くらい?
このくらいの売上があれば、テナントリース料が高くても、採算的には十分成り立つだろう。品ぞろえは、羽村の店のものからはずいぶん絞り込んである。
とくに酒類などのグローサリーは、もしかすると、いま「ワインセラー」がある場所に移動した方がよいかもしれない。ヤオコーの東大和店のようなレイアウトにするとか。いまカフェのある場所は、わたしが経営者ならば、デリカ(お弁当やパンなど)のテイクアウトに使いたいと思う。先を読みすぎているだろうか?
ヒルズだからなのだろう、POPもあまりうるさくならないようにしてある。そんなに”おすまし”をしなくて、福島屋さんらしく、特徴を出してよいようにはわたしは思う。田舎町のスーパーの賑わいは、都会のど真ん中に持ってきてもおもしろいのでは?
通路を挟んで、ワインセラーを併設したカフェが向かい側にある。このふたつとも「FUKUSHIMAYA」の経営だ。カフェもワインも、品ぞろえはちょっと懲りすぎかもしれない。いずれ微調整をしていくことになるだろう。
店名には、「福島屋」と漢字ではなく、ローマ字でシックな黒のプレートを使っている。南館地下1Fの「ヒルズキッチン」の通りが、こじゃれた洋風の店がたくさん並んでいるからだろう。
この通りで店を開いているレストランの店頭には、野菜や肉が展示されている。ランチとしては値段がちょっと高め。デモ販売型の飲食店が多いから、福島屋さんもその路線で店づくりをしている。
福島屋の店内を、何周かふらふら歩いてみた。店員さんの顔の表情が明るい。そして、「客待ち顔」ではなく、作業のために体を動かしている。商品が売れているから、陳列をなおしたり補充作業で実際に忙しいのだ。
売り子さんは正直なものだ。つまり、当初に予定していたよりも、商売が良いということをそれは暗に示している。福島社長もそのようなことを言っていた。予定よりも、2~3割は商売がよいらしい。
わたしは、羽村の本店で買って気に入った「(地元メーカーの)丸大豆しょうゆ」(360ミリ×2本、500ミリ×1本)をリピートで購買した。それに、北海道産の昆布をひとつ。出汁を取るためだが、これがおいしいのだ。
わたしのバスケットに、福島社長が、ご自慢の「バーニャカウダー」と「生七味」の瓶詰とワインを1本、放り込んでくれた。「お土産ですよ」(福島さん)の紙袋の底には、ポンカンとお菓子も入っているのが見える。
とりあえず、1月に開店した「福島屋六本木ヒルズ店」は、順調にスタートを切ったようだ。ここが成功となると、次々と出店の依頼が舞い込むだろう。
そのときどうするのだろうか? 商品の手当ては大丈夫だとしても、人材教育と物流が課題になるだろう。