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近頃の若者のメンタリティ: 先々、この国は大丈夫なのだろうか?
 ゼミ長の林君が突然、研究室にやってきた。ずいぶんと意気消沈している様子だった。報告は、「先生、残念なことが、、」ではじまった。事情を聞けば、入ゼミが決まっている13人のうち、男子2人が入ゼミを辞退してきたとのこと。前代未聞のことではある。しかし、わたしは「辞退者は引き留めないよう」にアドバイスした。

 

 そのような子供は、入ゼミしても長続きはしないからだ。去るものは追わず、来るものは拒まず。しかし、日本国は、大丈夫なのだろうか?

 2年生の13人(男子7人、女子6人)は、12月に試験が終わって入ゼミが決まっていた。いつものように、プレゼミで洋書テキストの学習会が始まり、年末には新入生歓迎会を開いた。思い起こせば、何となくの兆候はあったかもしれない。歓迎会のときに、すでに数人が欠席していたことがシグナルだった。

 これまでに一人くらいの欠席はあったが、大量の新入生が歓迎会に来なかったことはない。そして、1月の第1〜2週目に、ローソンの店頭でフィールドワークを実施した。通行量と入店率調査である。寒かったので、新入生の何人かは、もしかして風邪をひいたかもしれない。

 そうなのだ。現役の3、4年のゼミ生も、最近の子は実によく風邪を引いて休んでくれる。わたしは、大学教員としてはめずらしく、35年間連続で休講なしである。そのわたしには信じられないことだが、28人いるゼミ生のうち、平均して2割(約5人)は毎回、体調不良で休んでしまう。

 いまの大学生は「ゆとり世代」と言われているが、これだけ休んでしまう理由は、フィジカルな理由だけではないと思われる。

 

 ひと昔の学生は、たしかに授業を休んでいた。それは、授業が面白くなかったり、別に外でしたいことがあったからだった。いまの若者の事情はちょっとちがっているようだ。通常の授業で、出席率は高いと聞いているからだ。そういえば、社会人大学院でも、同じことが起こっているような気がする。以下は、推測である。

   

1 身体能力の低下

 風邪を引きやすいのには、二つの理由が考えられる。運動と食事である。

 明らかに偏食の子が増えている。野菜(トマトやナス)や魚(小骨が問題)が食べられない子供たちが目立っている。うちの次男のように、たしかに昔からミニトマトが食べられない子どもはいた。しかし、その人数と不可食アイテムのレパートリーが増えている気がする。

 たとえば、ゼミ合宿では3泊四日でみなで同じ食事を摂るが、ほんとうに食べ物を残す学生が増えている。食事は活力を生み出すが、みな少食で食べられないメニューが多い。

 二番目は運動である。今年の現役生は、近年では比較的体力があるほうだと思う。男子は一般的に運動能力が高い。しかし、ここ数年の学生たちを見ていると、持久力が低下しいる。持続して何かに取り組む能力に、どこか劣るのである。重たいものを持ったり長い時間走ったり、筋力の低下が原因かもしれない。ふだんの生活習慣から来ているように思う。

  

2 メンタルの弱さ

 世間一般の風潮として、働き方改革の推進で、残業や深夜労働などブラックな働き方が批判されている。たしかに、ひどいこともあるのだろうが、質の高い仕事をしたり、未来のための投資的な学習行為には、ある強度の仕事が必要である。いつも例に出すのは、チューリップの球根の例である。

 チューリップは、秋植えの球根である。冬の期間、氷点下で最低1ヵ月、冷気にあたらないと春になっても芽が出ない。これを生物学の用語で「休眠打破」と言う。つまり、辛い(冷たい)期間を長く経験しないと、人間も芽(成果)が出せないのだ。植物も人間も同じことで、そうした研鑽(鍛錬)を積ませないと人間は大きく成長しない。

 この点を、世間ははき違えているように思う。子供に敢えてつらい思いをさせることが、親の責務である。わたしたち教師もそのような責任があるのだが、そうして行為は世間からは、パワハラやアカハラだとお叱りを受ける。大学の教員がそう思っているくらいだから、中高の先生はたいへんだと思う。中等教育の現場は、規律(ルール)が成立していないのではないのか。

 体調がちょっとでもおかしいと「休んでいい」と教えられるのだろう。社会的な暗黙のルール変更で、無理はしないように。たぶんそうなのだろう。だから、こんなにゼミを休む学生が増えている。その現象が理解できる。

  

3 結論:3つの改善案

 国際的にみて、日本人はメンタルとフィジカルの両方で、競争力が低下している。これを打破するには、3つのことを実現しなければならない。

 

 /事の改善(農業・料理体験)

 食べ物の好き嫌いが起こるのは、食べ物のありがたみや美味しさを実体験する機会が不足しているからだ。もっとも簡単な解決法は「食育」である。子供のころから食材の収穫体験をさせることだ。農業体験と料理験と買い物がカギになる。アリス・ウォータース(シェ・パニーズ)の「9つの料理原則」を思い出していただきたい。

 1.地元で継続可能的につくられた食材を食べましょう

 2.旬のものを食べましょう
 3.ファーマーズマーケットで買い物をしましょう
 4.庭に食べられるものを植えましょう
 5.ものを大切にし、たい肥をつくり、そしてリサイクルに努めましょう
 6.シンプルに料理しましょう
 7.みんなで一緒に料理しましょう
 8.みんなで一緒に食べましょう
 9.食べ物は尊いということを忘れずに

  

 ▲瓮鵐織襪龍化

 子供たちは、精神的に弱くなってしまっている。メンタルが弱いのは、社会的な関係性がぜい弱だからである。換言すると、世間が狭いからだと思う。良い人間関係を育むのは、大勢の多様なサークルの中で育つことである。少子化の影響で、大切に育てられるのはよいのだが、そもそも兄弟やいとこの数が少ない。

 幼少期の生活環境も、ともすると閉鎖的になりがちである。わたしたちが子供のころ、あるいは、わたしの子供たちが小さかったころ、子供を育てるのは親だけではなかった。近所のおばさんや親せきのおじさんに、子供たちは面倒をみてもらっていた。やんちゃをやると、隣のおじさんや親せきのおばさんにコテンパンに叱られたものだ。ただし、愛情をもって彼らは接してくれていた。

 精神を強靭にするには、戦う経験の機会を与えてやらなければならない。このチャンスが、いまの若者には欠けている気がする。大家族や大集団で育てる機会を提供すべきではないか。わたしは、見知らぬ人との合宿やコンパや旅行が、そうした資質を伸ばすのだと感じている。

  

 成功体験を積ませる

 わたしたちはいい時代に育ったと思う。日本経済は上り調子だったし、バブル時代の体験では、ずいぶんとぜいたくをさせてもらった。いまの若者がかわいそうなのは、そうした体験をしていないことだ。

 よく言われることだが、美味しいものを食べないと舌はよくならない。味覚を鍛えるためには、子供のうちから美味しいものを食べさせなければならない。同じことで、良い体験が優れた行動の引き金になる。だから、日本社会は、良い貴重な経験を積ませることに対して支出にできるよう、社会的な制度を変えるきではないだろうか。

 高等教育を無償化するのはいいが、それだけでは十分ではない。体験学習にこそ投資すべきである。しかし、そのためにも、授業を簡単に休んでしまうメンタリティを変えて、身体能力を鍛えねばならない。話がぐるぐる回り始めた。

 

 

| Kosuke Ogawa | 10:44 | - | - | pookmark |

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