ヨーロッパツアー2019:#1 対馬さんの講義

 欧州ツアー初日、オランダ在住の対馬淳一さんからオランダの花産業事情についてレクチャーを受けました。対馬さんは、千葉大の園芸学部を卒業。海外協力隊でシリア滞在後、タキイ種苗のオランダ駐在。現在はフリーで翻訳、通訳、案内業を当地でしています。

 

 オランダは面積が約4万2千km2で、九州の約4分の3。人口は1708万人、2017年のGDPが7254億€。一人当たりGDPは約550万円で、日本より100万円ほど高い豊かな国です。
 農産物輸出国オランダを支えているのが農産物、とりわけ花き園芸。輸出品目としての花き類は、機械、天然ガスに続く第3位の輸出品目です。
 2018年度の切り花輸出額は60億€、鉢物は23億€。球根樹木を入れた花き類の輸出金額は92億€です。これは、日本円で約1.1兆円になります。輸出先国のトップはドイツで25%。英国、フランスがそれに続きます。

 ところが、オランダの花生産者は、15年前と比べて数が約半分に減少しています。花の産地がアフリカと中南米に移動したことで、バラの生産者は770軒から120軒に激減しています。とはいえ、アフリカの農場を支配しているのはオランダ人です。実は花き類トータルの栽培面積は変わっておらず、一農家当たりの規模が拡大していることがわかります。
 栽培品目はこの間に大きく変わっています。一般的な傾向としては、切り花から鉢物へ。切り花の中では、トルコキキョウが増えているほかは、キクとバラは激減。そして、鉢物の中で伸びているのは、寄せ植えです。
 ガーデンセンターのイントラタウンやスーパーでは、寄せ植えの状態で売られている苗もの類が売り場で圧倒的に目立つていました。この傾向は、オランダでも若い人が園芸をやらなくなったことと関係しているだと思います。
 スーパーでも、カットパック野菜が目立っていました。共稼ぎで働く若い人たちは、簡易な食生活や住居の簡単な飾り方を必要としています。これは世界的な傾向です。

 本日も、代表的な量販店、スーパーのアルバートとユンボ、イントラタウンを視察しましたが、花の値段の安さに驚きます。10本束のバラが2.5€。一本換算では30円。チューリップもほぼ同じ値段です。
 短い茎のバラの値段が安いのは、輸入品だからです。現地の輸出価格FOBは約10円です。同じく、栽培技術が改善されたことで、チューリップの国内生産価格が劇的に落ちました。春先は10本で2€ということもあるようです。
 対馬さんの解説によると、チューリップが粘土質の土壌でネットを使って栽培されるようになり、輪のサイズが大きくなったそうです。ネット栽培の発明でチューリップの収穫が楽になり、これまたコストダウン。
 ドイツでも同じ店頭風景を見ましたから、メジャーな切り花については、ここ10年でさらに価格破壊が進んだことがわかります。しかし、どのスーパーでも品質は向上しており、7日間の日持ち保証は継続されています。
 残念ながら、環境認証のMPSは、ほとんどの切り花には表示がされていませんでした。一部の鉢物にMPSの表示がありました。また、野菜苗などはBIO、オーガニックの表示が付いています。

 午前中は、10年ぶりに、元フローラホランド市場の顧客担当部門マネジャーだったユルンくんに会いました。20年前に、太田花きとオークネットで研修していた日本通です。今はFSIのチェアマンをしています。オランダ政府が主導する、フラワー・サステナブル・イニシャティブの代表です。この話は、別のブログ記事で紹介します。MPSジャパンの松島社長には、少しショッキングな事実が明らかにされました。