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(その26)「ふるさと納税の制度的欠陥」『北羽新報』(2018年9月25日号) 

NEW!ふるさと納税の仕組みが見直されそうです。以前から指摘してきたように、減税の制度を利用して、自分が生まれた市町村の財政を支援するという本来の役割を果たしていません。とうとう政府も重い腰を上げたようです。今回は、地元紙でふるさと納税制度の基本的な欠陥について論じてみました。

「ふるさと納税の制度的欠陥」『北羽新報』2018年9月25日号
 文・小川孔輔(法政大学経営大学院・教授)
 先週の『日本経済新聞社 朝刊』(9月15日号)に「総務省、ふるさと納税見直し」というタイトルの記事が大きく掲載されていました。そこには、野田聖子総務大臣の「ふるさと納税はショッピングではない」というコメントが写真付きで紹介されています。
 閣議後の記者会見で発表された大臣のコメントでは、制度的の見直しについて具体的に触れられていました。「制度の趣旨をゆがめているような団体については、ふるさと納税の対象外にすることもできるよう見直しを検討する」(野田総務相)。寄付が納税免除の対象から外れる条件は、「返礼割合が3割を超す場合」というふうに内容がきわめて具体的でした。政府側の本気度がそこから伝わってきます。総務省としては、2019年度の税制改正で実現を目指すつもりのようです。
 総務省が企図している制度改革には、基本的に賛成です。個人的にも、従前から過度な返礼品を用意して寄付金を集める自治体の姿勢には批判的でした。ふるさと納税の目的は、高額な返礼品でお金を集める錬金術だったわけではないはずです。経済的に疲弊している生まれ故郷を支援したり、今年のように地震や豪雨で被災した自治体を資金面で助けることが狙いでした。本紙で連載をはじめた初回が、「ふるさと納税の不思議、サービス納税で改革を(2016年8月27日号)でした。ふるさと納税を物納ではなく、サービス分野に広げてはどうかという提案でした。
 ふるさと納税がはじまったのは2008年でした。制度発足から10年で、寄付金に相当する納税額は、3653億円に達しているそうです(2017年度実績)。実数はわかりませんが、総務省が「返礼の3割」を税控除の下限に設定しているところをみると、納税額の4割程度、つまり約1500億円(筆者の推測)が返礼品のバラマキで消えていることになります。
 本来は、地元の公共施設の建設や学校・橋梁などの補修工事、あるいは過疎化で苦しむ自治体の赤字財源を補填するためのものです。その資金が、一部とはいえ返礼品で失われていることになります。たしかに返礼品が地元産品であれば、販売の増加に寄与して地元経済が潤うという議論もあります。都市の住民たちが返礼品を繰り返して購入してくれたら、地域ブランドの認知度も向上するにちがいありません。
 しかし、実態はどうかといえば、ふるさと納税は、「減税制度を使った有利な買い物」であることはまぎれもない事実です。わたしの周りにも、“ふるさと納税マニア”がたくさんいます。そうした人たちは、「来年はどこの自治体に税金を納めて、どんな美味しいモノを送ってもらおうか」という年一回のイベントを楽しみしています。自分の故郷のことを思うと、すごく残念な思いで、その“バーゲンセール”をわたしは眺めています。
 ところで、新聞記事には詳しい記載がなかったのですが、いまの制度の最大の欠点は、ふるさと納税をした人が住んでいる自治体から、税金が流出してしまうことです。それも“被害者”のほとんどは、大都市圏の自治体になります。
 考えてみるとわかると思いますが、義務教育やごみの回収作業、スポーツ施設の運営などのサービスを居住者に提供している費用分が、間接的に返礼品として地方に流出していることになります。だからといって、ふるさと納税をしたひとの生活に必要なサービスを、都市部の自治体がカットするはできません。
 ここに大きな不平等が生まれています。返礼品を完全になくしてしまえば、ふるさと納税の制度が成り立たなくなるでしょう。発足当時は、納税額はわずか100億円程度だったからです。筆者なら、総務省に次のようなアドバイスするでしょう。ふるさと納税をしたひとが返礼品を受け取らない場合、住居地での所得・住民税率を軽減してあげ。その仕組みを、現在の制度に組み込むことです。
 いまのふるさと納税は、モノに偏った仕組みです。人間は物欲だけで生きているわけではありません。ごく一部になるかもしれませんが、心ある納税者は、故郷への愛着と経済合理性という観点から、ふるさと納税の制度的な良さを見直すかもしれません。
| Kosuke Ogawa | 06:52 | - | - | pookmark |

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