友人の守口剛さん(商学部教授)が来年度、研究休暇をとることになった。サバティカルの間、マーケティング論の代講を依頼された。「小川先生は、他大学で講義はやらない原則と伺ってます。99%無理とは思いますが」と依頼のメールにはあった。
その通りである。39年間の教員生活で、他大学では一度も教えたことがない。知り合いの教授連中に依頼されたことが何度もあるが、「法政大学からお金をいただいている手前、他大学では教えないことにしています!」と生意気にもお断りをしてきた。
いま考えてみると、諸先輩はわたしの将来を考えての深謀遠慮などもあったのだろう。実に若者にありがちな、大いなる失礼があったのかもしれない。まあ、それは昔のこととして、今回だけは少しだけ心が動いた。なぜなら、来年定年を迎えるので、一度くらいは他大学の学生に教えてみるのも悪くはないと思ったからだった。
それでもハードルは高い。毎週火曜日は、原則として花の団体(JFMA)のために使っている。セミナーや理事会、研修や講座、取材などは火曜日にまとめている。水曜日(学部ゼミ)と木曜日(大学院講義)は、法政大学のための日である。金曜日は、後期に夜間の授業(マーケティング実行論)があり、土曜日は定例の研究会を開いている。
もちろん、日曜日は隔週でレースを走っている。地方に遠征すると、せっかくだから、日曜日に温泉に泊まってくるから、月曜日はあけておきたい。そうでないと、気持ちのリフレッシュができない。
そんなわけで、守口さんには、「週一回(金曜日)でまとめて180分(2コマつづき)なら、可能性がないわけではないです」と返答していた。本を読む暇のないくらい、こんなに忙しいのだから、それでも受諾へのハードルは高い。
一週間が経って、昨日返事があった。「マーケティング論は基礎科目なので、商学部の時間割がやりくりできない」とのこと。東大時代などは、基礎科目を90分×2=180分で運営していた。法政の経営学部でも、そのシステムを採用していたような気がする。
自校で教えながら、学外での活動も継続しながら、他大学に週二回出校するのはきびしい。残念ながら、早稲田大学とは縁がないようだ。実はその代わりの楽しみがある。
再来年(2017年)、京都で教える予定があるからだ。その頃(2017年春)になれば、わたしすでに定年の身。もはや専任教員ではないから、堂々と他大学で、しかも女子大で教えることはタブーではなくなる。