にっぽんの伝統野菜を守る

 先月の31日に、丸の内の中央郵便局(KITTE)で開催された「にっぽん伝統野菜フェスタ」に行ってきた。農水省の後援でグルナビが運営している伝統野菜を守る会である。会場では、大竹さん(会長)にお会いすることできなかったが、事務長さんに名刺を渡すことはできた。



 この小さな展示会に出店していたのは、つぎの約20品目(産地)である。先月訪問した山形県(酒田市と鶴岡市)の野菜も出品されていた。鶴岡のアルケッチャーノ@亀やさんで食べた野菜の品種もあった。

 出展リスト:
 山形県鶴岡市(だだちゃ豆)、山形県酒田市(平田赤ねぎ)、八百五商店(福井県・吉川なす)、野菜のカネマツ(長野県・松代青大きうり)、天龍農林業公社(長野県・ていざなす)、江戸東京野菜コンシェルジュ協会(東京都・東京うど)、内藤とうがらしプロジェクト(東京・内藤とうがらし)、埼玉県深谷市(白なす)、warmerwarmer(愛知県・十六ささげ)、百姓隊(宮崎県・佐土原なす)

 表中にある「砂土原なす」などは、東京赤坂で宮崎の産品を提供している和食の店で食べたことがある。大きなナスだった。江戸の野菜のいくつかは、以前に東京都のプロジェクト(とれたて野菜プロジェクト)で取り組んだ品種である。あれから10年が経過して、ようやく世間から江戸野菜が注目を浴びるようになってきたらしい。最近知ったのだが、江戸野菜普及のための協会(江戸東京野菜コンシェルジュ協会)がそのために発足している。
 全国各地で地元産の在来種を保護して集めようとする運動の高まりを感じる。この動きは、農水省が推進しようとしている「環境保全型農業」の普及と期を一にしている。新しい農業の担い手(新規就農者)が栽培する品種は、大手種苗会社が取り扱う”マス化された”品種である必要はない。
 新規就農した農業未経験の小さな農家が、独自に付加価値をつけて売るためには、特徴のある少量多品目の野菜を扱った方が有利である。
 普通の品目・品種を上手に栽培するには、また有機農業的な栽培方法で野菜を上手く作れるまでには5年はかかると言われている。その期間をビジネス的に上手くしのいで、次のステージに移行するには、多品種で少量生産が向いている。
 また、販売先を見つけるにも、差別化された栽培方法か他にない品種を扱うべきである。そのための手法として推奨できるのが、まだ地元に残っている在来種の発掘である。地元のイタリアンレストランや都市部の創作料理店などへの出荷なら、相手先が見つかりそうだ。そうしたネットワークも紹介してもらえるだろう。
 作り手だけでなく、品種を提供する側にもメリットがある。小規模な種苗会社がグローバルに戦わなくとも生き残れる道が、在来種の発掘と販路の開拓によって開かれる。マーケティング戦略でもっとも推奨できるのが、「不戦勝」(戦わなくて勝つこと)である。誰が考えてもそれは明らかである。

 地元野菜の発掘には、長期的なメリットもある。それは、たとえば、地場の野菜と結びついた新しいメニューの開拓である。そして、地元の伝承料理の復活である。野菜ソムリエ的な仕事が目立つようになってきた。
 子供のころによく食べたが、いまは消えてしまった料理がある。そうした食習慣がなくなってしまった料理には、地場の野菜やおさかなが使われていなかっただろうか?なぜか?山形に行くと珍しい山菜や野菜を見かける。それを復活させればいいのだ。あるいは、奥田シェフ(@酒田)のように、イタリア料理の素材として新しくメニューを開発したらよいだろう。
 美味しい野菜は、もしかすると余計な調理などは不要なのかもしれない。古い野菜の種の発掘は、あたらしい味覚のバラエティを提供するかもしれない。和食というカテゴリーを超えた食の文化は、在来種の発掘から始まる可能性がある。農水省もその辺のこと(にっぽんの伝統野菜を守ること)に気が付いているようだ。