三菱マーク復活 家電に30年ぶり ブランド回帰他社も

 4月14日付け朝日新聞デジタル記事を掲載する。


三菱電機の家電に、三つのダイヤを組み合わせた「三菱マーク」が30年ぶりに復活した。国内では文字のロゴを使ってきたが、中高年層や海外に商品を売り込むため、根強い存在感をもつマークを復活させた。ほかの企業でも、伝統のロゴやブランドを復活させる動きが相次いでいる。
 三菱電機は1985年、企業ロゴを「MITSUBISHI」の青色のローマ字表記に変え、国内の商品に三菱マークを使うことをやめた。コンピューター事業などを強化した時期で、「重厚長大」のイメージが強かった三菱のイメージを変える狙いだった。だが昨年、企業ロゴを赤い三菱マークに戻し、製品にも順次マークを使い始めた。
 背景にあるのは、伝統のマークが持つブランド力だ。1月に国内で行った調査では、青色のローマ字より三菱マークの方が「技術力を感じる」と答えた人が多かった。宣伝部次長の丸山亨さんは「80年代は重たいイメージだったマークが、技術力の証しとして評価される時代になった」と話す。

 実は、海外向けの製品にはこれまでも三菱マークを付けていた。三菱自動車なども同じマークを使っており、自動車レースの「パリ・ダカールラリー」で優勝したパジェロ、新興国でも広く使われるトラックなど、日本を代表するブランドの一つとして定着しているためだ。
 ただ、三菱電機が海外で売る家電は、エアコンや冷蔵庫などに限られていた。日本の家電がアジアで人気になっているのを背景に、今後は空気清浄機や除湿機、炊飯器など幅広い商品を海外で売る方針で、国内外で製品を共通化して生産を効率化する狙いもある。

■他社でも復活相次ぐ
 マークやブランドの復活は他社でも相次いでいる。

 パナソニックは今年、高級音響機器ブランド「テクニクス」を国内外で復活した。10年に生産を終えていた。スピーカーなどのセットが500万円超の製品もあり、音質にこだわる人向けに販売する。
 アシックスは、80年代に展開したスニーカーブランド「アシックスタイガー」を1月に復活した。77年のアシックス誕生時のロゴもつかう。アサヒビールも、傘下のニッカウヰスキーから62年の発売当時のデザインや香味を再現した「初号スーパーニッカ復刻版」などを、限定販売した。
 日本航空も会社更生法を申請した翌年の11年、経営再建の象徴として伝統の「鶴丸」ロゴを復活させた。
 高級家電が中心の三菱電機を含め、復刻したブランドや商品は高価格帯が目立つ。ブランド戦略に詳しい法政大学大学院の小川孔輔教授は、「お金の余裕がある中高年や、趣味にお金をかける人など、昔のブランドに価値を感じる人が増えている。昔のブランドの復活は、高級志向の市場が拡大していることの象徴だろう」と分析する。(南日慶子)