東洋経済新報社から刊行された拙著『マクドナルド 失敗の本質』は、発売開始から一か月で、1万2千部(3刷)と絶好調だ。オリジナルの原稿は280頁の長編となり、約60頁分をカットしてしまった。その一部を要約して復活したのが、『新潮45』の原稿である。
書籍では、日本マクドナルドのハンバーガー事業の低迷を、主として直近10年間(原田時代:2004年~2013年)のマネジメントの失策から説明している。それに対して、今日発売の『新潮45』では、ビジネスモデルが「賞味期限切れ」となっているのは、日本のマクドナルドだけでなく、世界的な傾向であることが示されている。
マクドナルドの世界的なビジネスの凋落は、今週発表になった『日本経済新聞WEB版』(3月16日発行、要約版は3月17日に日経本紙でも紹介)に、海外特配員たちのレポートとして紹介されている。最後に、筆者の短いコメントも掲載されているが、その根底にある現状認識は次のようなものである。
「マクドナルド」というブランドは、良きにつけ悪しきにつけ、「アメリカ合衆国」という国家のイメージ(原産国効果)と、米国の政治文化的な影響を背中に背負っている。マクドナルドは、ハンバーガーとポテトを販売している単なるフードビジネスではない。
そうではなくて、世界中に米国産の食材(小麦、ポテト、コーン、牛肉など)を流通させているコングロマリットである。その実態は、米国の農業と加工食品メーカーのために、米国産農産物をマーケティングしている国家の先兵である。
米国マクドナルド本社は、ハンバーガーと一緒に、米国的な価値観や生活文化(クイックなサービスと安定品質の食事)を普及させるための手段だった。そのことについて、戦後の日本人はほとんど無意識だった。しかし、いまになってわかることは、フードビジネスは農業問題と無縁ではないという現実である。
わたしの結論は、シンプルである。マクドナルドの事業がグローバルにも厳しくなっているのは、世界経済を牛耳る存在としての米国ブランド(ビッグアメリカ)の立場が、いま大きく揺らいでいるからである。米国の政治文化的な影響力は、21世紀に入ってから極度に低下している。それゆえ、米国の象徴ともいえる「マクドナルド」のビジネスにも陰りが見えているのである。
政治文化的な文脈から、マクドナルドの栄枯盛衰を再解釈したのが、新潮45の寄稿文である。